似た意味を持つ「空洞」(読み方:くうどう)と「空隙」(読み方:くうげき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「空洞」と「空隙」という言葉は、どちらも「何もない空間」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
空洞と空隙の違い
空洞と空隙の意味の違い
空洞と空隙の違いを分かりやすく言うと、空洞とは内部に何もないことを表し、空隙とは物と物とのすきまを表すという違いです。
空洞と空隙の使い方の違い
一つ目の空洞を使った分かりやすい例としては、「チューブは中が空洞になっている」「JIS規格に適合した空洞ブロックです」「空洞共振器を用いて誘電率を測定する」「産業の空洞化を食い止める」「肺に空洞影がみとめられた」などがあります。
二つ目の空隙を使った分かりやすい例としては、「空隙歯列になる原因は何ですか」「粒子間の空隙率の求め方がわかりません」「微小な空隙での化学反応を調べる」「非常に空隙率が高い岩塊が発見された」などがあります。
空洞と空隙の使い分け方
空洞と空隙という言葉は、どちらも何もないスペースを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
空洞とは、内部が空っぽになっている状態のことで、洞穴などを意味します。転じて、形式だけで内容のないことのたとえとして、「産業の空洞化」などと使用されています。また、医学用語として、炎症や壊死によって生じる臓器の空間を意味する言葉です。
空隙とは、物と物との間のすきまを意味します。日常会話で用いられることはほとんどありませんが、土木や化学あるいは歯科などの専門用語で使用されています。「空隙歯列」とは、歯と歯の間に2mmほどの間隔が空いてしまう状態を意味し、一般的には「すきっ歯」と呼ばれています。
つまり、空洞とは内部に何もないことを意味し、空隙とは物と物とのすきまを表します。二つの言葉は似ていますが、意味が異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
空洞と空隙の英語表記の違い
空洞を英語にすると「cave」「hollow」「vomica」となり、例えば上記の「中が空洞になっている」を英語にすると「be hollow inside」となります。
一方、空隙を英語にすると「void」「gap」「lacuna」となり、例えば上記の「多孔質材料の空隙率を測定する」を英語にすると「percentage of void」となります。
空洞の意味
空洞とは
空洞とは、洞穴、また、内部がうつろになっていることを意味しています。
その他にも、「形式だけで内容のないことのたとえ」「肺や腎臓などの内部に壊死 (えし) が起こり、それが排出または吸収されたあとにできる空間」の意味も持っています。
空洞の読み方
空洞の読み方は「くうどう」です。誤って「くうとう」「そらほら」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「空洞症」「中が空洞」
「空洞症」「中が空洞」<などが、空洞を使った一般的な言い回しです。
空洞の使い方
「空洞ブロックをホームセンターで買いました」「副鼻腔は鼻腔の周囲に点在する空洞です」「ほとんどのトマトが空洞果になってしまった」「グレベニコフ教授が空洞構造効果を発見した」の文中で使われている空洞は、「洞穴、内部がうつろになっていること」の意味で使われています。
一方、「金融空洞化の問題について論じる」「産業の空洞化とはどのような現象ですか」の文中で使われている空洞は「内容のないことのたとえ」の意味で、「脊髄空洞症とはどんな病気ですか」の文中で使われている空洞は「肺や腎臓にできる空間」の意味で使われています。
空洞とは上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要があります。空洞の「空」は訓読みで「そら」「から」「うつろ」と読み、何もないことを表し、「洞」は訓読みで「ほら」「うつろ」と読み、筒形に抜け通る穴を表す漢字です。
「空洞化」の意味
空洞を用いた日本語には「空洞化」があります。空洞化とは、周辺部を残して中心部が欠落することですが、転じて、実質を失い外形だけが残ることの意味で用いられることが多い言葉です。産業の空洞化」「金融空洞化」などと使用します。
「空洞果」の意味
「空洞化」と同じ読みをする言葉に「空洞果」があります。空洞果とは、野菜や果物の内部に空洞や空間ができている状態を意味します。トマトの場合、果実が肥大する時期に株の養分が不足すると空洞が発生しやすいと言われています。
空洞の対義語
空洞の対義語・反対語としては、容器がいっぱいになることを意味する「満杯」、一定の空間あるものがいっぱいにみちることを意味する「充満」などがあります。
空洞の類語
空洞の類語・類義語としては、崖や岩などにできた洞穴を意味する「洞窟」、中に何もなくて広々していることを意味する「がらんどう」、中に何も入っていないことを意味する「空っぽ」、実質的な内容や価値がないことを意味する「空虚」、体内で空になっている所を意味する「腔」などがあります。
空隙の意味
空隙とは
空隙とは、すきま、間隙を意味しています。
空隙の読み方
空隙の読み方は「くうげき」です。誤って「くうすき」「そらすき」などと読まないようにしましょう。
空隙の使い方
空隙を使った分かりやすい例としては、「50%の空隙率をもつ排水材です」「誘導電動機の空隙を大きくする」「実測値を空隙圧着パラメータと比較する」「積算空隙量と圧縮強度の関係をグラフにする」などがあります。
その他にも、「粉体の空隙率の計算方法を教えてください」「空隙率の測定方法にはいくつかの種類があります」「英語の教材が入った箱の空隙を埋める」「空隙歯列弓の治療で歯医者に通っています」などがあります。
空隙の「空」は、からっぽであること、中身や根拠がないことを表します。物のすきまを表す「隙」と結びつき、空隙とは、物と物との間のわずかにあいている所を意味します。日常会話で使用される頻度は低い言葉ですが、土木用語や化学の分野で使用されています。
「空隙率」
空隙を用いた言葉には「空隙率」(読み方:くうげきりつ)があります。空隙率とは、「間隙率」(読み方:かんげきりつ)とも言い、岩石や土などに含まれる隙間の度合いを意味します。全容積に対する空間の容積の割合をもって示します。
空隙の対義語
空隙の対義語・反対語としては、すきまがないことを意味する「密」などがあります。
空隙の類語
空隙の類語・類義語としては、二つのものに挟まれた部分や範囲を意味する「あいだ」、物と物との間のわずかにあいている所を意味する「ひま」、物と物との間や間隙を意味する「すき」、物と物との間の狭い所を意味する「狭間」などがあります。
空洞の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物の中に穴が開いてうつろになっていること、形式ばかりで内容のないことのたとえ、臓器の一部に生じた空間を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「産業空洞化」とは、国内企業の生産拠点が海外に移転することにより、国内産業が衰退していく現象を意味します。日本では80年代半ばから議論され出しました。
空隙の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物と物とのすきま、間隙を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある間隙と空隙の違いは、間隙は話し言葉として使用されることがありますが、空隙は文章語または土木などの専門用語として用いられている点です。
空洞と空隙という言葉は、どちらも「何もない空間」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、内部に何もないことを表現したい時は「空洞」を、物と物とのすきまを表現したい時は「空隙」を使うようにしましょう。