似た意味を持つ「帝王」(読み方:ていおう)と「皇帝」(読み方:こうてい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「帝王」と「皇帝」という言葉は、どちらも「帝国の王」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
帝王と皇帝の違い
帝王と皇帝の意味の違い
帝王と皇帝の違いを分かりやすく言うと、帝王とは帝国の王だけでなく特定の分野の権力者も表し、皇帝とは帝国の王のみを表すという違いです。
帝王と皇帝の使い方の違い
一つ目の帝王を使った分かりやすい例としては、「帝王にたくさんの貢ぎ物を納める」「御曹司として幼いころから帝王学を学ぶ」「2025年の帝王省は波乱の展開となりました」「手術中は麻酔が効いているので帝王切開の痛みは感じません」などがあります。
二つ目の皇帝を使った分かりやすい例としては、「オットー1世は神聖ローマ帝国の皇帝でした」「皇帝が新しい女性を迎え入れた」「皇帝ダリアは庭植えすることをお勧めします」「皇帝ペンギンが見られる水族館は限られています」などがあります。
帝王と皇帝の使い分け方
帝王と皇帝という言葉は、どちらも広大な領土と多くの民族を支配する帝国の王を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
帝王とは、君主国の元首を意味し、後述する「皇帝」とほぼ同義の言葉です。ただし、歴史上の人物に使用されることは少なく、主に小説やアニメなどのフィクション作品で使用されています。また、「帝王学」のような使い方で、ある分野で大きな権力や支配力を持つ人という比喩的な意味を持ちます。
皇帝とは、天子または国王の尊称であり、秦の始皇帝が初めて称したものです。また、君主国の君主の称号であり、欧州ではローマ皇帝位の継承者の称で、王より上位とされています。カール大帝の西ローマ皇帝、オットー1世以来の神聖ローマ皇帝などが有名です。
つまり、帝王は帝国の王の意味だけでなく、その分野の支配者という比喩的な意味も持ちますが、皇帝は帝国の王という意味しかありません。二つの言葉を比べると、皇帝よりも帝王の方が広い意味を持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
帝王と皇帝の英語表記の違い
帝王も皇帝も英語にすると「emperor」「king」となり、例えば上記の「帝王に貢ぎ物を納める」を英語にすると「pay tribute to the Emperor」となります。
帝王の意味
帝王とは
帝王とは、君主国の元首、天子、皇帝を意味しています。
その他にも、「ある分野・社会で、非常に大きな権力や支配力をもつ人」の意味も持っています。
帝王の使い方
「インカ帝国の帝王はミイラとして生き続けています」「イギリスの君主が実質的な帝王として君臨していました」などの文中で使われている帝王は、「君主国の元首、天子、皇帝」の意味で使われています。
一方、「現代ホスト界の帝王はカリスマ的存在です」「歌舞伎町の帝王が会社経営の極意を明かした」「帝王学とはどういう考え方ですか」などの文中で使われている帝王は、「ある社会で非常に大きな権力や支配力をもつ人」の意味で使われています。
帝王とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。帝王の「帝」は訓読みで「みかど」と読み、天下を治める最高の支配者を表し、「王」は天子や君主を表す漢字です。
表現方法は「帝王学」
帝王を用いた日本語には「帝王学」があります。帝王学とは、帝王の地位につく者が帝王としてふさわしい素養や見識などを身につけるために行なう修養を意味します。広義には、経営者などリーダーとなる人が学ぶべき思考や行動を習得する教育を指します。
帝王の対義語
帝王の対義語・反対語としては、官位のない普通の人民や庶民を意味する「平民」などがあります。
帝王の類語
帝王の類語・類義語としては、君主や実力の優れた者を意味する「王」、中国古代の伝説上の帝王を意味する「人皇」、支配する人や統治する人を意味する「支配者」、王や王のような存在を意味する「キング」などがあります。
皇帝の意味
皇帝とは
皇帝とは、おもに中国で、天子または国王の尊称を意味しています。
その他にも、「欧州・中東・中南米などの君主国で、君主の称号の一つ、エンペラー(イギリス・インド)、カイゼル(ドイツ・オーストリア)、ツァーリ(ロシア)、シャー(ペルシアなど)の訳語」の意味も持っています。
皇帝の使い方
「なぜ中国には皇帝と王様がいるのですか」「皇帝として様々な国々の上に君臨する」「皇帝は天命を受けて天下を統治します」などの文中で使われている皇帝は、「中国で、天子または国王の尊称」の意味で使われています。
一方、「皇帝陛下のお世話係になりました」「皇帝はローマ帝国を起源とする継承者です」「ロムルス・アウグストゥスは西ローマ帝国最後の皇帝です」などの文中で使われている皇帝は、「君主国で、君主の称号の一つ」の意味で使われています。
皇帝とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を判断する必要があります。皇帝の「皇」は訓読みで「きみ」「すめらぎ」と読み、天の偉大な神や造物主を表します。
表現方法は「軍人皇帝」
皇帝を用いた日本語には「軍人皇帝」があります。軍人皇帝とは、古代ローマ帝国の内乱時代、235年から285年にかけて、各地の軍隊によって擁立された皇帝たちの総称です。50年間に26人が帝位につき、そのほとんどが暗殺されました。
皇帝の対義語
皇帝の対義語・反対語としては、天皇や皇帝の正妻を意味する「皇后」などがあります。
皇帝の類語
皇帝の類語・類義語としては、王と称される国家の元首を意味する「国王」、勢力や功績のある王に対する敬称を意味する「大王」、王を敬愛して呼ぶ言葉を意味する「王様」、世襲により国家を治める最高位の人を意味する「君主」などがあります。
帝王の例文
この言葉がよく使われる場面としては、君主国の元首、天子、皇帝、ある世界の中で最もすぐれ絶対的な力で支配するものを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「帝王切開」とは、妊娠子宮を切開して成熟胎児を娩出させる手術法を意味します。ローマ帝国の帝王カエサルが腹壁切開により生まれたという故事から来た名称と言われています。
皇帝の例文
この言葉がよく使われる場面としては、天子または国王の尊称、天皇、君主国の君主の称号を表現したい時などが挙げられます。
例文5の「皇帝ペンギン」は、「エンペラーペンギン」とも呼ばれ、南極大陸に分布するペンギン科の鳥です。発見当初、最も大きなペンギンとされていたため「皇帝」の称号が与えられました。
帝王と皇帝という言葉は、どちらも「帝国の王」を表します。さらに帝王という言葉は比喩的に用いられ、ある分野でも最もすぐれて絶対的な力で支配する者の意味もあることを覚えておきましょう。