【余韻】と【名残】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「余韻」(読み方:よいん)と「名残」(読み方:なごり)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「余韻」と「名残」という言葉は、どちらも物事のあとに残るものを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




余韻と名残の違い

余韻と名残の意味の違い

余韻と名残の違いを分かりやすく言うと、余韻とは風情や味わいを意味し、名残とは気配や影響を意味するという違いです。

余韻と名残の使い方の違い

一つ目の余韻を使った分かりやすい例としては、「映画の余韻に浸る」「余韻が残るイベントだった」「余韻の長い音を出す」「コンサートホールで音色の余韻を楽しむ」などがあります。

二つ目の名残を使った分かりやすい例としては、「歴史の名残を感じる文化遺産」「昨夜の雨の名残で地面がぬかるんでいる」「親友との別れが名残惜しい」「名残は尽きないけど帰らないと」などがあります。

余韻と名残という言葉は、日常生活で聞いたり使ったりする馴染みのある言葉なはずです。どちらも物事のあとに残るものを意味しますが、余韻は事の後に残る風情や味わいを意味し、名残は事柄が過ぎ去ったあとに気配や影響が残っていることを意味します。

余韻は風情や味わいを表し、うっとりと心地よい詩的なニュアンスがあります。上記の「映画の余韻に浸る」は、映画の後に残るしみじみとした情緒を味わっているさまを意味します。一方の名残は気配や影響を表し、詩的なニュアンスがありません。この点も二つの言葉の違いになります。

余韻と名残の英語表記の違い

余韻を英語にすると「afterglow」「suggestiveness」「lingering sound」となり、例えば上記の「余韻に浸る」を英語にすると「bask in the afterglow」となります。

一方、名残を英語にすると「remnant」「reluctant to part」となり、例えば上記の「歴史の名残」を英語にすると「remnants of history」となります。

余韻の意味

余韻とは

余韻とは、事が終わったあとに残る風情や味わいを意味しています。

その他にも、音の鳴り終わった後にかすかに残る響きの意味も持っています。

表現方法は「余韻に浸る」「余韻を残す」「余韻を楽しむ」

「余韻に浸る」「余韻を残す」「余韻を楽しむ」「余韻がすごい」などが、余韻を使った一般的な表現方法です。

余韻の使い方

「ドラマの最終回の余韻に浸る」「彼は余韻を残す魅力的な人だ」「お酒を飲みながら今日の余韻に浸っている」などの文中で使われている余韻は、「事が終わったあとも残る風情や味わい」の意味で使われています。

一方、「演奏会の余韻に浸る」「叩くと余韻のある美しい音色を出す打楽器」「いつまでも耳に余韻が残る」「ししおどしの余韻が庭に響く」などの文中で使われている余韻は、「かすかに残る音の響き」の意味で使われています。

余韻の語源

余韻という言葉は、美しい音のひびきを意味する「韻」と、あとに残ることを意味する「余」が組み合わさり、かすかに残る音の響きを意味します。転じて、あとに事の後に残る味わいや趣きを意味するようになりました。

「余韻嫋嫋」の意味

余韻という言葉を用いた日本語には「余韻嫋嫋」(読み方:よいんじょうじょう)があり、心地よい音や懐かしい音などが、ずっと残って消えないさまを意味します。詩歌などの間接的な表現にある趣きなどを表す言葉です。

余韻の類語

余韻の類語・類義語としては、風流や風雅の味わいを意味する「風情」、音源が振動をやめたあとも音が引き続き聞こえる現象を意味する「残響」などがあります。

余韻の余の字を使った別の言葉としては、盛りの時期を過ぎた残りの生涯を意味する「余生」、ある仕事をしてなお余っている力を意味する「余力」、残りや余りを意味する「残余」などがあります。

名残の意味

名残とは

名残とは、ある事柄が過ぎ去ったあとに、なおその気配や影響が残っていることを意味しています。

その他にも、人と別れるときに思い切れない気持ちが残ることの意味も持っています。

表現方法は「名残を感じる」「名残が残る」「名残を惜しむ」

「名残を感じる」「名残が残る」「名残を惜しむ」「名残をとどめる」などが、名残を使った一般的な表現方法です。

名残の使い方

「昭和の名残を感じさせる定食屋さん」「感染症流行の名残で出不精になった」「旧東海道に名残の一本松がある」などの文中で使われている名残は、「ある事柄が過ぎ去ったあとに気配や影響が残っていること」の意味で使われています。

一方、「名残は尽きませんがお開きにします」「旧友との別れが名残惜しい」「名残を惜しむ暇もなく旅立った」などの文中で使われている名残は、「人と別れるときに思い切れない気持ちが残ること」の意味で使われています。

名残の語源

名残の語源は、「波残り(なみのこり)」であると言われています。波が打ち寄せたあとに残る海水や海藻を意味する波残りが短縮し変化して出来た言葉です。波の後に残る物の意から、ある事柄の影響や気配が残っていることを表すようになりました。

平安時代以降には、人との別れの時に思いきれない気持ちの意味も持つようになりました。名残を用いた言い回しはいくつかあり、「名残惜しい」は、別れるのがつらい気持ちを表します。「名残尽きない」は、別れることが思い切れない気持ちを表します。

名残の類語

名残の類語・類義語としては、ある事柄が周囲のものに影響を及ぼすことを意味する「余波」、記憶によって心に思い浮かべる顔や姿を意味する「面影」などがあります。

名残の残の字を使った別の言葉としては、もの足りなく感じることを意味する「残念」、なくならないで残っていることを意味する「残存」、残りとどまることを意味する「残留」などがあります。

余韻の例文

1.思い出の写真を見ながら、楽しかった余韻に浸る時間が好きだ。
2.昨夜ずっと行きたかったライブに行って、朝になっても余韻がすごい。
3.合コンにいくと、一人くらいはミステリアスな雰囲気で余韻を残す女性がいるものだ。
4.文章に余韻を持たせるためには、あえて簡潔な文にして想像力を掻き立てるのが良いらしい。
5.どの楽器も余韻があるものだが、パイプオルガンの余韻が一番心に響く。
6.公演は嵐のようなスタンディングオベーションが沸き上がり、熱狂的な余韻も冷めやらぬ中、幕を閉じた。
7.毎年この時期の夏祭りの余韻は、そこはかとなく夏の終わりの寂しさを感じさせる。
8.その紳士の声は非常にダンディで、彼が立ち去った後も部屋の中にしばらく余韻が残った。
9.友人に紹介してもらった漫画は一週間ほど余韻を引きずるぐらいインパクトの強いものだった。
10.最近有名ピアニストの演奏会に行ったばかりだが、印象的な旋律の余韻は今も耳に残っている。

この言葉がよく使われる場面としては、事のあとに残る風情や、かすかに残る音の響きを表現したい時などが挙げられます。

例文1から例文4で使われている余韻は、事が終わったあとに残る風情や味わいを意味します。例文4にある「余韻を残す」とは、魅力を感じてその魅力が心に残って消えないさまを表します。例文5で使われている余韻は、音の鳴り終わった後にかすかに残る響きを意味します。

名残の例文

1.肌寒くなってきたビアガーデンで、夏の名残を惜しむ。
2.送別会では時間になっても誰も席から立とうとせずに、名残が尽きない様子でした。
3.春が来てから降る雪は名残の雪と呼ばれ、湿った重たい雪が多いそうです。
4.旬の終わった名残野菜を美味しく調理するのが、腕の見せ所である。
5.引っ越し前夜になって、住み慣れた町や友人たちに対して名残惜しい気持ちがこみ上げてきた。
6.この辺一帯は当時の建物が多数残っており、今でも江戸時代の名残が感じられる。
7.もう誰も住んでいない生家は、家族皆で楽しく過ごしていた頃の名残を留めている最後の場所だ。
8.旅行先は現在でも江戸時代の名残を感じさせる古民家がたくさん存在し、宿場町の風情たっぷりであった。
9.町は今でもあちこちに震災の名残が感じられ、復興にはまだまだ時間がかかりそうな雰囲気を感じた。
10.今晩泊まる宿は古き良き時代の名残が残るノスタルジーな魅力満載で、大変人気があって予約するのにとても苦労した。

この言葉がよく使われる場面としては、気配や影響が残ることや、人との別れを惜しむ気持ちを表現したい時などが挙げられます。

例文1から例文4で使われている名残は、ある事柄が過ぎ去った後に気配や影響が残っていることを意味します。例文5で使われている名残は、人と別れるときに思い切れない気持ちが残ることを意味します。

例文3の「名残の雪」とは、春になっても残っている雪のことで、冬の気配が残っていることを表します。例文4の「名残野菜」とは、旬を過ぎた野菜のことで、その野菜が旬だった季節の気配を感じる野菜であることを表します。

余韻と名残いう言葉は、どちらも物事のあとに残るものを表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合は、風情や味わいが残っていることを表したい時には「余韻」、気配や影響が残っていることを表したい時には「名残」を使うようにしましょう。

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