似た意味を持つ「質素」(読み方:しっそ)と「貧乏」(読み方:びんぼう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「質素」と「貧乏」という言葉は、金銭などを多くは使わないという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
質素と貧乏の違い
質素と貧乏の意味の違い
質素と貧乏の違いを分かりやすく言うと、質素はマイナスイメージを持たない場合に使い、貧乏はマイナスイメージを持つ場合に使うという違いです。
質素と貧乏の使い方の違い
一つ目の質素を使った分かりやすい例としては、「彼は質素に暮らしている」「質素な食事は素材の味を引き立てる」「質素な職場での仕事はやりやすい」などがあります。
二つ目の貧乏を使った分かりやすい例としては、「職を失い貧乏になる」「貧乏人は豪華な催事に縁がない」「貧乏ではあるが不幸だと感じ続けているわけではない」などがあります。
質素という言葉は無駄を省き控えめな様子を表しますが、必ずしも収入や物資が不足しているとは限りません。一方、貧乏という言葉は生活状態が経済的に苦しい様子を表します。これが質素と貧乏の明確な違いです。
質素と貧乏の英語表記の違い
質素を英語にすると「simple」「frugal」「homely」となり、例えば上記の「質素に暮らす」を英語にすると「live in frugality」となります。一方、貧乏を英語にすると「poor」「poverty」「penury」となり、例えば上記の「貧乏になる」を英語にすると「fall into poverty」となります。
質素の意味
質素とは
質素とは、飾り気がなく、生活などが贅沢ではない様子を意味しています。
表現方法は「質素な人」「質素に暮らす」「質素な食事」
「質素な人」「質素に暮らす」「質素な食事」「質素な生活」などが、質素を使った一般的な表現方法です。
質素の使い方
質素を使った分かりやすい例としては、「質素な贈り物が彼らしいと感じた」「精進料理は仏教の教えにより質素につくられる」「質素な街ではあるがそれが居心地の良さにつながる」「普段質素な服を好む彼女がいつもと違う服を着ている」などがあります。
質素を使った言葉として「質素倹約」や「勤倹質素」などがあります。
四字熟語「質素倹約」の意味
前者の「質素倹約」は、ものを節約して生活することを意味します。倹約につつましく無駄遣いしないこと意味するため、質素と倹約は似たような言葉が組み合わせられた四字熟語と言えます。
四字熟語「勤倹質素」の意味
後者の「勤倹質素」は、仕事に励んでぜいたくをしないことを意味します。勤倹には仕事に努め励み無駄な出費を少なくするという意味があるため、上で挙げた倹約および質素倹約と似たような意味を持っていると言えます。
他にも、中身が充実して飾り気がなく、心身ともに強い様子を意味する四字熟語「質実剛健」に使われている「質」は、上で挙げた質素の意味を持っています。
質素の対義語
質素の対義語・反対語としては、金銭や物などを惜しまない様子を意味する「贅沢」、はなやかで美しいことを意味する「華美」があります。
質素の類語
質素の類語・類義語としては、念入りに仕上げられていない様子を意味する「素朴」、装飾または飾りのない様子を意味する「簡素」、華麗ではなく気取りがない様子を意味する「地味」などがあります。
質素の素の字を使った別の言葉としては、白色の衣服を意味する「素衣」(読み方:そい)、練習などよって身に着けた技能や知識を意味する「素養」、内容理解は後回しにして文字だけを声に出して読むことを意味する「素読」(読み方:そどく)などがあります。
貧乏の意味
貧乏とは
貧乏とは、財産や収入が少なくて生活が苦しい様子を意味しています。
貧乏の使い方
貧乏を使った分かりやすい例としては、「貧乏な主人公を題材とした作品はいくつかある」「まるで貧乏神でもとりついているようだ」「昔から貧乏くじを引いてしまう」「株で大損をしてしまい今後は貧乏生活になりそうだ」などがあります。
貧乏という言葉には、人にとりついて貧乏にさせるという神を意味する「貧乏神」、損な役回りを意味する「貧乏くじ」のような複合語が多く、金銭の不足ではなく物事一般が不足している状態を表すことがあります。
他にも貧乏を使った言葉として「朝謡は貧乏の相」「貧乏暇なし」「大漁貧乏」などがあります。
「朝謡は貧乏の相」の意味
一つ目の「朝謡は貧乏の相」(読み方:あさうたいはびんぼうのそう)とは、朝から仕事もしないで歌をうたっているようではいずれ貧乏になるのは目に見えているという戒めのことわざです。
「貧乏暇なし」の意味
二つ目の「貧乏暇なし」とは、貧乏で生活に追われて少しも時間の余裕がないことを意味する言葉です。『江戸いろはかるた』の一つで「貧乏暇なし魚売り」と続けていうこともあります。
「大漁貧乏」の意味
三つ目の「大漁貧乏」とは、大漁のため魚の価格が下がってしまい、かえって漁師らの収入が減ることを意味する言葉です。転じて、一般に供給が需要を大幅に上回ってしまうことで商品価格が低くなることを表すようになりました。
貧乏の対義語
貧乏の対義語・反対語としては、金銭や資産を多く保有している様子を意味する「富裕」「裕福」があります。
貧乏の類語
貧乏の類語・類義語としては、金銭または所有物がほとんどない様子を意味する「しがない」、物質的な所有物が僅かしかないもしくは全くない様子を意味する「貧窮」(読み方:ひんきゅう)などがあります。
貧乏の貧の字を使った別の言葉としては、貧乏の苦しみを意味する「貧苦」(読み方:ひんく)、きわめて貧しく何も持っていないことを意味する「赤貧」(読み方:せきひん)、みすぼらしい様子を意味する「貧弱」などがあります。
質素の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ぜいたくではない状態を意味する時などが挙げられます。
質素は地味という言葉とも置き換えられるため、例文4の「質素な身なり」のように生活以外にも使うことができます。しかし「質素な態度」という使い方はしないため、この場合は「つましい態度」という言い方をすることに気を付けましょう。
貧乏の例文
この言葉がよく使われる場面としては、金銭などが不足している状態を意味する時などが挙げられます。
例文3の「器用貧乏」とは、何事も一応はうまくできるため一つのことを極められず中途半端になって成功しないことを意味する言葉です。
例文4の「貧乏ゆすり」は座っているときなどに身体の一部、特に膝を揺らし続ける行為を指します。足を揺すると貧乏神に取りつかれるという迷信が生まれましたが、寒さや飢えから小刻みに震えている様子に似ているためこの名前がつけられました。
例文5の「貧乏飯」はお金をかけずとも工夫された美味しい食事のことを指します。今日では、食事だけでなく「貧乏タレント」など貧乏であることを前提としたエンターテインメントなども多く存在します。
質素と貧乏どちらを使うか迷った場合は、必ずしも金銭や物品が不足していない時の控えめな状態を表す場合には「質素」を、金銭も物品も不足しており経済的に困っている状態を表す場合は「貧乏」を使うと覚えておけば間違いありません。