同じ「とっかん」という読み方の「吶喊」と「突貫」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「吶喊」と「突貫」という言葉は、声をあげて突撃することを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
吶喊と突貫の違い
吶喊と突貫の意味の違い
吶喊と突貫の違いを分かりやすく言うと、どちらも声をあげて突撃することの共通する意味を持っているのですが、突貫はさらに一気に仕上げることの意味も持っているという違いです。
吶喊と突貫の使い方の違い
一つ目の吶喊を使った分かりやすい例としては、「吶喊しながら前進する」「多数の兵士が剣をかざして吶喊していた」「無言ではなく吶喊すると勢いが増すものだ」「吶喊するやいなや城壁がくずれ落ちた」などがあります。
二つ目の突貫を使った分かりやすい例としては、「工期が迫って突貫作業になっている」「イベント会場建設を突貫工事で進める」「あのビルの改修工事は突貫作業だな」「時間がないので突貫工事的に作業を進める」「突貫攻撃を命じられた」などがあります。
「吶喊工事で進める」は誤字
吶喊と突貫は同音の言葉であり、声をあげて突撃することという共通する意味を持っています。昔の戦争や戦では、士気を鼓舞するため「ワーッ!」「ウオー!」という声をあげながら敵陣に突進していきました。これを吶喊や突貫と表現し、この意味では、二つの言葉は置き換えて使うことができます。
一方、突貫には貫き通すこと、短期間で一気に仕上げることの意味もあり、この意味では突貫と吶喊を置き換えることができません。「突貫工事で進める」は「吶喊工事で進める」に置き換えられません。
吶喊と突貫の英語表記の違い
吶喊を英語にすると「battle cry」「shout out」となり、例えば上記の「吶喊しながら前進する」を英語にすると「move forward while shouting out」となります。一方、突貫を英語にすると「rushing」「dash at the enemy」となり、例えば上記の「突貫作業」を英語にすると「rush job」となります。
吶喊の意味
吶喊とは
吶喊とは、ときの声をあげることを意味しています。
その他にも、ときの声をあげて敵陣へ突き進むことの意味も持ちます。
表現方法は「吶喊します」「吶喊する」
「吶喊します」「吶喊する」などが、吶喊を使った一般的な表現方法です。
吶喊の使い方
「軍勢は吶喊を上げた」「敵を威嚇するために吶喊する」「敵陣で我々の吶喊が響いている」「戦場には吶喊が響き渡った」などの文中で使われている吶喊は、「ときの声をあげること」の意味で使われています。
一方、「誰よりも先に吶喊した」「吶喊の命令を下す」「将校が吶喊!と号令すると、兵士たちが声をあげて突撃した」などの文中で使われている吶喊は、「ときの声をあげて敵陣へ突き進むこと」の意味で使われています。
吶喊の語源
吶喊という言葉は上記の例のように二つの意味を持っており、戦争や合戦において使われる言葉です。「吶」という漢字は、口ごもるや叫ぶことを意味し、「喊」という漢字は、大声をあげることを意味しており、どちらも声を発することを表しています。
吶喊は、戦場において士気を鼓舞するために多数の人が一緒に叫ぶ声をあげること、声をあげながら敵陣へ突き進むことの二つの意味がありますが、どちらも声をあげることを意味しているのです。
吶喊の類語
吶喊の類語・類義語としては、大勢で突撃するときにあげる叫び声を意味する「喊声」(読み方:かんせい)、大勢の人が一斉にあげる声を意味する「鯨波」(読み方:げいは)などがあります。
吶喊の喊の字を使った別の言葉としては、口ごもりながら話すさまを意味する「吶吶」(読み方:とつとつ)などがあります。
突貫の意味
突貫とは
突貫とは、貫き通すこと、短期間で一気に仕上げることを意味しています。
その他にも、ときの声をあげて敵陣へ突き進むことの意味も持ちます。
表現方法は「突貫で作った」「突貫します」「突貫せよ」
「突貫で作った」「突貫します」「突貫せよ」などが、突貫を使った一般的な表現方法です。
突貫の使い方
「その針は分厚い布を突貫する」「人の流れに逆行して突貫した」の文中で使われている突貫は「つきとおすこと」の意味で使われています。「原稿を突貫で書き上げた」「昼夜を問わず突貫工事が進められた」の文中で使われている突貫は、「短期間で一気に仕上げること」の意味で使われています。
一方、「大東亜戦争の突貫攻撃に関する記録」「緊迫した状況のなかで突貫の号令を待っている」「騎兵の突貫を描いた油絵」などの文中で使われている突貫は、「ときの声をあげて敵陣へ突き進むこと」の意味で使われています。
突貫という言葉は上記の例のように複数の意味があるのですが、一般的に使われるのは、貫き通すこと、短期間で一気に仕上げること、の意味です。ときの声をあげて敵陣へ突き進むことの意味では、戦争や戦などの限定的な場面や、歴史を語る資料や小説など限定的に使われています。
「突貫工事」「突貫作業」の意味
突貫という言葉を用いた日本語には、「突貫工事」や「突貫作業」があります。突貫工事は、短期間で一気に仕上げる工事のことを意味し、突貫作業は、途中で休むことなく一気に行われる作業のことを意味します。
どちらも、一気に仕上げることを意味するものですが、時間的な余裕を持たないイメージがあることから、やっつけ仕事や手抜きなどのマイナスのイメージがある言葉です。本来は手抜きなどの意味はありませんが、マイナスなイメージを連想させる言葉なので使う時には注意しましょう。
突貫の類語
突貫の類語・類義語としては、ある物の中を貫いて通ることを意味する「貫通」、襲いかかることを意味する「襲撃」、攻撃しながら前進することを意味する「進撃」などがあります。
突貫の突の字を使った別の言葉としては、突き破ることを意味する「突破」、目標に向かって一気に進むことを意味する「突進」、突然発生することを意味する「突発」などがあります。
吶喊の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ときの声をあげることや、声をあげて突撃することを表現したい時などが挙げられます。
例文1で使われている吶喊は、多数の人が一緒に士気をあげる叫び声を意味します。例文3で使われている吶喊は、叫び声をあげながら突撃することを意味します。吶喊は軍事上の用語ですが、例文4のように、日常においても、勢いづけるために雄叫びをあげることを表現する時にも使われます。
突貫の例文
この言葉がよく使われる場面としては、貫き通すことや一気に仕上げること、ときの声をあげて突撃することを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3で使われている突貫は、短期間で一気に仕上げることを意味します。例文3のように、突貫工事には本来手抜き工事の意味はありませんが、急いで仕上げるために手抜き工事になるイメージがあります。例文4で使われている突貫は、貫き通すことを意味します。
例文5にある突貫は、吶喊と共通する意味で使われており、ときの声をあげて敵陣へ突き進むことを意味します。
吶喊と突貫という言葉は、ときの声をあげて突撃することという共通の意味を持つ同音の言葉です。さらに突貫は、貫き通すこと、短期間で一気に仕上げることの意味もあり、日常的にはこの意味で使われることを覚えておきましょう。