似た意味を持つ「所存」(読み方:しょぞん)と「意向」(読み方:いこう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「所存」と「意向」という言葉は、どちらも「心の中で思っている考え」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
所存と意向の違い
所存と意向の意味の違い
所存と意向の違いを分かりやすく言うと、所存とは自分の考えのみを表し、意向とは自分だけでなく相手や第三者の考えも表すという違いです。
所存と意向の使い方の違い
一つ目の所存を使った分かりやすい例としては、「全力で取り組む所存でございます」「地域医療の発展に尽力する所存であります」「一生懸命に頑張る所存です」「努めて参る所存でございます」などがあります。
二つ目の意向を使った分かりやすい例としては、「新規契約に賛成する意向です」「ワクチン接種の意向調査票が届いた」「次の総裁選には不出馬の意向です」「社長の意向に沿う結果になりました」などがあります。
所存と意向の使い分け方
所存と意向という言葉は、どちらも「ある事柄に対する考えや気持ち」を意味し、ビジネスシーンにおいて多用される言葉ですが、使い方には違いがあります。
所存とは、心に思うところや考えを意味し、自分の考えや意見を述べるときに用いる言葉です。所存という言葉の「存」は「思う」の謙譲語であり、所存という言葉も謙譲的な表現として扱われています。そのため、目上の人に対して自分をへりくだって表現したい時に使います。
意向とは、心の向かうところや気持ちを意味します。「私の意向」のように自分の気持ちを表す一方、「先方のご意向を踏まえる」「お客様のご意向を反映させる」のように相手や第三者の気持ちを表すことも出来ます。
つまり、二つの言葉の違いは、所存は謙譲表現であり自分の考えのみを表しますが、意向とは自分の考えだけでなく相手や第三者の考えも表すことにあります。
所存と意向の英語表記の違い
所存も意向も英語にすると「intension」「opinion」「will」となり、例えば上記の「全力で取り組む所存でございます」を英語にすると「I will try my best」となります。
所存の意味
所存とは
所存とは、心に思うところ、考えを意味しています。
所存の読み方
所存の読み方は「しょぞん」です。誤って「しょそん」と読まないようにしましょう。
所存の使い方
所存を使った分かりやすい例としては、「地域発展に全力を尽くす所存である」「履歴書を早急に送らせていただく所存です」「目標に向けて邁進する所存であります」「お客様のご要望にお応えして参る所存です」などがあります。
その他にも、「お願いしたい所存でございます」「社会に貢献してまいる所存です」「より良いサービスを提供していく所存です」「厳重なデータ管理に努める所存であります」「より一層の注意を払う所存でございます」などがあります。
所存とは、心に思うところや考えを意味し、へりくだって自分の思っていることや考えていること表し相手への敬意を表す敬語表現です。所存の語義は「存ずる所」であり、「存ずる」とは「思う」「考える」の意味の謙譲語です。所存は謙譲語のため、相手や第三者に対して用いることは出来ません。
表現方法は「所存です」「所存である」「所存であります」
所存という言葉は、ビジネスシーンでよく使われており、「所存です」「所存である」「所存であります」「所存でございます」などの言い回しがあります。「所存でございます」は「所存です」のさらに丁寧な表現になります。
「思う所存です」「考える所存です」は誤り
所存を用いた誤った表現には、「思う所存です」「考える所存です」などがあります。所存には「思い」や「考え」の意味があるために、同じ意味の言葉を重ねてしまうと「頭痛が痛い」のような二重表現となってしまいます。「思う次第です」「考えます」などと言い換えるようにしましょう。
所存の類語
所存の類語・類義語としては、物事について心に感じたことや思ったことを意味する「感想」、事に触れて心に感じた事柄を意味する「所感」、心に思っている事柄や思うところを意味する「所懐」などがあります。
意向の意味
意向とは
意向とは、どうするつもりかという考え、心の向かうところを意味しています。
表現方法は「意向に沿う」「本人の意向」「意向を示す」「意向を聞く」
「意向に沿う」「本人の意向」「意向を示す」「意向を聞く」「意向を汲む」などが、意向を使った一般的な言い回しです。
意向の使い方
意向を使った分かりやすい例としては、「アンケート調査で転職の意向を示す若者は多い」「英語留学について意向を確認する」「まちづくりに関する住民意向調査を実施します」「大リーグに移籍する意向を示した」などがあります。
その他にも、「社長のご意向をお聞かせください」「M&Aの意向表明書の提出期限が近づいている」「最大限にCEOの意向を汲むよう努力します」「お客様の意向に沿う提案だと思います」「部長の意向を踏まえた課題分析の結果をお知らせします」などがあります。
意向とは、あることに対する考えや気持ちを意味し、物事をどうするかについての意志や判断を表す言葉です。意向の「意」は心の中の思いや気持ちを表し、「向」はある方にむかうことや心がめざすことを表します。
意向は自分だけではなく、相手や第三者に対して使うことが出来ます。特に、目上の方や地位の高い方に対しては、敬意を表す接頭語の「ご」を付けて「ご意向」と表現されることが多くあります。「ご意向」は尊敬語の扱いになるので、自分に対して使うことはできません。
「意向表明書」の意味
意向という言葉を用いたビジネス用語には「意向表明書」があります。M&Aにおける意向表明書とは、買い手企業が会社買収の意思を示すために売り手企業に提出する書面のことです。
意向の類語
意向の類語・類義語としては、あることを行いたい又は行いたくないという考えを意味する「意志」、何かをしようとするときの元となる心持ちを意味する「意思」、ある問題に対する主張や考えを意味する「意見」などがあります。
所存の例文
この言葉がよく使われる場面としては、心に思うところ、思惑を表現したい時などが挙げられます。
所存という言葉は、上記の例文にあるようにビジネスシーンや、スピーチの場面で用いられる言葉です。例文1から例文4のように、決意を示す場合に多用されています。
意向の例文
この言葉がよく使われる場面としては、心の向かうところ、思惑を表現したい時などが挙げられます。
例文1では、意向という言葉が自分の思いを表していますが、例文2から例文5では、第三者や相手方の思いや考えを表わしています。例文5にある「ご意向」とは、意向の尊敬語です。ビジネスシーンにおいて、顧客や取引先あるいは上司の考えを表します。
所存と意向という言葉は、どちらも「考えていること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、へりくだって自分の考えを表現したい時は「所存」を、自分の考えや相手の考えを表現したい時は「意向」を使うようにしましょう。