似た意味を持つ「主導」(読み方:しゅどう)と「主体」(読み方:しゅたい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「主導」と「主体」という言葉は、中心となっているものという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
主導と主体の違い
主導と主体の意味の違い
主導と主体の違いを分かりやすく言うと、主導は中心となるものが他を導く時に使い、主体は中心となるだけの時に使うという違いです。
主導と主体の語源の違い
主導の導は、知識などを得るための手引をすることを意味する漢字であるため、中心となって他を引っ張っていくという意味が「主導」にはあります。
一方、主体の体は、まとまりのある形や組織を意味する漢字であるため、まとまりや組織の中心、主な構成要素という意味しか「主体」にはありません。これが二つの言葉の明確な違いです。
主導と主体の英語表記の違い
主導を英語にすると「initiative」「lead」となり、例えば「主導権を持つ」を英語にすると「have the initiative」となります。
一方、主体を英語にすると「subject」「core」「main constituent」となり、例えば「行動の主体」を英語にすると「the subject of an action」となります。
主導の意味
主導とは
主導とは、中心となって他を導くことを意味しています。
表現方法は「主導のもと」「主導する」「主導した」
「主導のもと」「主導する」「主導した」などが、主導を使った一般的な表現方法です。
主導の意味を含んだ言葉として、「牛耳を執る」「生殺与奪」「提灯持ちは先に立て」があります。
一つ目の「牛耳を執る」(読み方:ぎゅうじをとる)とは、団体の中心となって自分の思い通りに事を運ぶという意味があり、「牛耳る」という形で動詞として使われています。
この言葉は、中国の戦国時代に、同盟の中のリーダーとなるべき人がが牛の耳を裂いて出した血をすすり、誓い合い盟主になったと言われる故事が由来となった言葉です。
二つ目の「生殺与奪」(読み方:せいさつよだつ)とは、生かすも殺すも、与えることも奪うことさえも思いのままであることを意味する言葉で、これが転じて、絶対的な支配力や権力を持つことを意味する言葉ともなりました。
もとは『荀子』に「殺生与奪」という表記で登場した言葉で、自分の思い通りに扱う様子を意味する「活殺自在」は類語・類義語にあたります。
三つ目の「提灯持ちは先に立て」とは。主導する人間は先頭に立って模範を示すべきであるということを意味することわざです。提灯を持って案内する人が先頭に立たなければ、辺りを照らせず役目を果たすことが出来ないことが由来しています。
主導の対義語
主導の対義語・反対語としては、人の意見に従うことを意味する「追従」、権力や威力のあるものに依存してそれに付き従うことを意味する「従属」があります。
主導の類語
主導の類語・類義語としては、大きな力で引っ張ることや引き寄せることを意味する「牽引」、多くの人々をまとめてひきいることを意味する「統率」、全体の行動の統一のため命令して人々を動かすことを意味する「指揮」などがあります。
主導の導の字を使った別の言葉としては、外部から導きいれることや引き入れることを意味する「導入」、教え導くことを意味する「訓導」、先に立って導くことを意味する「先導」、ある目的に向かって教え導くことを意味する「指導」などがあります。
主体の意味
主体とは
主体とは、物事を構成する上で中心となっているものを意味しています。その他にも、自覚や意志に基づいて行動したり他に作用したりするものという意味もあります。
表現方法は「主体として」「主体となって」
「主体として」「主体となって」などが、主体を使った一般的な表現方法です。
主体を使った言葉として、「主体化」「主体作業」があります。
「主体化」の意味
一つ目の「主体化」とは、中心となるという言葉の意味を持つ以外に、フランスの哲学者であるミシェル・フーコーによって考えられた概念を指す言葉でもあります。彼は自身の著書でフランス語で本来は従属と訳される言葉を使っていましたが、これが主体と訳されました。
主体を英語で表すと「subject」となりますが、この単語は名詞として使う場合、国民や臣民という意味も持ち、形容詞として使う場合は従属するという意味を持ちます。
そのため、フーコーにとっての「主体化」の概念とは、何かの主体になることで、他の何かのもとでは従属したり権力に支配されることにつながる可能性があるという考え方を意味します。
「主体作業」の意味
二つ目の「主体作業」とは、生産する現場にて作業を行う中で必要な作業のうち、作業単位ごとにその発生頻度と順序が決まっているもののことを指す言葉です。
例えば、チョコレート工場であれば、カカオ豆をすりつぶし、練り、温度を高めて液状にしたものを型に流し込み、冷やします。そして最後に商品の形にして包装するのが工場でのおおまかな作業工程です。これが主体作業です。
この作業工程とは別に、工場に届いた豆を機械のもとまで運搬する作業なども発生します。これは付帯作業と呼ばれ、チョコレートを作るという主体作業を達成するための作業です。このように直接作業の進行に役立つ仕事を主体作業といいます。
主体の対義語
主体の対義語・反対語としては、主体の認識や行為などの対象となるものや意識から独立して存在する外界の事物を意味する「客体」があります。
主体の類語
主体の類語・類義語としては、主要なものや最も重要な部分を意味する「メイン」、主題や主意、主観を意味する「サブジェクト」があります。
主体の体の字を使った別の言葉としては、個々の部分が相互に連なって全体としてまとまった機能を果たす組織を意味する「体系」、ある目的のために人々が集まって一つのまとまりとなったものを意味する「団体」などがあります。
主導の例文
この言葉がよく使われる場面としては、中心となって他を引っ張っていくことを意味する時などが挙げられます。
例文4の「主導権」とは、主となって物事を動かし進めることが出来る力を意味する言葉です。また、その様子を表す例文5の「主導的」は形容動詞として使われます。
主体の例文
この言葉がよく使われる場面としては、中心となっていることを意味する時などが挙げられます。
例文2の「主体要因」とは健康に関する言葉で、年齢や性別、遺伝などの生物学的な面と、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣を指す言葉です。不健康になった場合主体要因のいずれかに問題が発生していると考えられます。
例文3の「主体性」とは、自分の意志や判断で行動しようとする態度を意味する言葉です。また、その様子を表す例文4の「主体的」は形容動詞として使われます。
主導と主体どちらを使うか迷った場合は、中心として他を導く様子を表す場合には「主導」を、中心になっている様子のみを表す場合は「主体」を使うと覚えておけば間違いありません。