似た意味を持つ「保留」(読み方:ほりゅう)と「留保」(読み方:りゅうほ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「保留」と「留保」という言葉は、そのままにしておくことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
保留と留保の違い
保留と留保の意味の違い
保留と留保の違いを分かりやすく言うと、保留とは単にそのままにしておくこと、留保とは意図的にそのままにしておくことという違いです。
保留と留保の使い方の違い
一つ目の保留を使った分かりやすい例としては、「問題を保留にして話を進める」「買うか買わないか保留にしおく」「印刷が保留状態で実行しない」「この土地は保留地となった」「保留地証明書を発行する」などがあります。
二つ目の留保を使った分かりやすい例としては、「結論を留保せざるを得ない」「留保金課税を算出する」「留保価格と販売価格の差が大きい」「留保利益にかかる税効果が改正された」などがあります。
保留と留保という言葉は、漢字の前後が入れ替わった言葉であり、そのままにしておくことを表すのですが、意味は微妙に異なります。保留は単にそのままを保つことを意味するのに対し、留保は何か目的があって意図的に行わないことを意味します。
「問題を保留にする」と「問題を留保する」の違い
上記の例の「問題を保留にする」とは、問題をそのままに放っておくことを意味します。これが「問題を留保する」になると、自分の不利益にならないようになどの意図があってそのままにしておくことを意味します。何か目的があるかどうかが、保留と留保という言葉の違いになります。
保留と留保の英語表記の違い
保留も留保も英語にすると「reservation」「retention」「on hold」となり、例えば上記の「問題を保留にする」を英語にすると「put the problem on hold」となります。
保留の意味
保留とは
保留とは、そのまま保ちとどめておくことを意味しています。
その他にも、その場で決定しないで延ばしておくことの意味も持っています。
表現方法は「保留する」「保留にする」「保留でお願いします」
「保留する」「保留にする」「保留でお願いします」などが、保留を使った一般的な言い回しです。
保留の使い方
「電話を保留して上司に確認する」 「この件は詳しく調べる必要があるので保留にしよう」「他社の結果が出るまで内定保留をお願いします」などの文中で使われている保留は、「そのまま保ちとどめておくこと」の意味で使われています。
一方、「お返事は保留にさせてください」「容疑者を処分保留で釈放しました」「南北関係の悪化により支援を保留した」などの文中で使われている保留は、「決定しないで延ばしておくこと」の意味で使われています。
保留という言葉は、その状況を保ち留めておくことを表し、日常生活でもビジネスシーンでも使われる言葉です。上記の例にあるように二つの意味があり、どちらも意味でも頻繁に使われる言葉なので、文脈により意味を捉える必要があります。
「内定保留」の意味
上記の例の「内定保留」とは、就職活動で使われている言葉で、企業からの内定通知を承諾せずに内定の権利を保ちとどめている状態を言います。
「処分保留」の意味
「処分保留」とは、刑事手続が進められていく上で期間内に十分な証拠が揃わなかった場合、起訴か不起訴の判断を保留して釈放させることを言います。
保留の対義語
保留の対義語・反対語としては、物事をはっきりと決めることを意味する「決定」、はっきりと定まることを意味する「確定」などがあります。
保留の類語
保留の類語・類義語としては、 未解決の状態にとどまることを意味する「ペンディング」、残して次へ送ることを意味する「持ち越し」、物事の処理や期限などを先に延ばすことを意味する「先延ばし」などがあります。
保留の保の字を使った別の言葉としては、保ち続けることや持ち続けることを意味する「保持」、失わないようにしっかりと保つことを意味する「確保」などがあります。
留保の意味
留保とは
留保とは、すぐその場で行わないで、一時差し控えることを意味しています。
その他にも、法律で権利や義務を残留や保持することの意味も持っています。
表現方法は「留保する」「留保のない」「留保をつける」
「留保する」「留保のない」「留保をつける」などが、留保を使った一般的な言い回しです。
留保の使い方
「来週まで結論を留保します」「潤沢な内部留保を活用すべきだ」「留保価格がネットオークションに反映される」「留保財源率の引き下げが検討されている」などの文中で使われている留保は、「一時差し控えること」の意味で使われています。
一方、「法律の留保の原則にのっとる」「倒産手続における所有権留保の取扱いについて」「外国で出産し日本国籍を留保する」「次回公判までに留保の結果を出してください」などの文中で使われている留保は、「権利や義務を残留や保持すること」の意味で使われています。
留保という言葉は、その状況を留めて、それを保つことを表し、日常生活ではあまり使われずにビジネスシーンで使われる言葉です。上記の例にあるように二つの意味があり、一般的には一時差し控えることを意味し、法律においては義務や残留を保持することを意味します。
「内部留保」の意味
上記の例の「内部留保」とは、企業の所有する資産のうち、 借入金や株主の出資ではなく、自己の利益によって調達した部分を言います。
「法律の留保」の意味
「法律の留保」とは、行政権の行使は法律に基づかなければならないという原理を表します。
留保の対義語
留保の対義語・反対語としては、即座に決定または裁決することを意味する「即決」、正邪善悪を判断や裁決することを意味する「決断」などがあります。
留保の類語
留保の類語・類義語としては、需給の調節のために一時商品を市場へ出さないことを意味する「棚上げ」、動きのない状態を意味する「塩漬け」などがあります。
留保の留の字を使った別の言葉としては、所持品などを置き忘れることを意味する「遺留」、退こうとする人をなだめて思いとどまらせることを意味する「慰留」などがあります。
保留の例文
この言葉がよく使われる場面としては、そのまま保ちとどめておくことを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「保留金」とは、契約の条件変更をおこなう時点で残存する未払い利息や未払い損害金の合計金額のことを意味します。例文4にある「保留音」とは、電話を取り次ぐ時や確認のために相手を待たせている間に流れる音を意味します。
留保の例文
この言葉がよく使われる場面としては、一時差し控えること、権利や義務を残留や保持することを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「所有権留保」とは、自動車ローンで担保のために車検証の所有者が信販会社や自動車会社になることを意味します。例文5にある「留保賃金」とは、ある水準以上の賃金ならば就職しそれより小さければ職探しを続けるという賃金の水準を意味します。
保留と留保という言葉は、そのままにしておくことを意味する言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、単にそのままにしておくことを表現したい時は「保留」を、意図的にそのままにしておくことを表現したい時は「留保」を使うようにしましょう。