似た意味を持つ「苦渋の決断」(読み方:くじゅうのけつだん)と「断腸の思い」(読み方:だんちょうのおもい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「苦渋の決断」と「断腸の思い」という言葉は、どちらも辛くて苦しいことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「苦渋の決断」と「断腸の思い」の違い
「苦渋の決断」と「断腸の思い」の意味の違い
「苦渋の決断」と「断腸の思い」の違いを分かりやすく言うと、「苦渋の決断」と「断腸の思い」はどちらも辛くて苦しいことを意味していますが、「断腸の思い」の方がより辛くて苦しいという違いです。
「苦渋の決断」と「断腸の思い」の使い方の違い
一つ目の「苦渋の決断」を使った分かりやすい例としては、「苦渋の決断を迫られた」「苦渋の決断が続いている」「ウイルスの感染拡大を防ぐため苦渋の決断だった」「その選択は苦渋の決断だったと思います」「苦渋の決断をする」などがあります。
二つ目の「断腸の思い」を使った分かりやすい例としては、「断腸の思いで引退することを決意しました」「断腸の思いで彼女に別れを告げた」「愛着がある会社だが断腸の思いで辞めることを決めました」「断腸の思いで決断する」などがあります。
「苦渋の決断」と「断腸の思い」はどちらも、辛くて苦しい決断をする時に使う言葉ですが、「断腸の思い」の方が、「苦渋の決断」よりもさらに辛くて苦しい決断をする場合に使うと覚えておけば問題ないでしょう。
「苦渋の決断」と「断腸の思い」の英語表記の違い
「苦渋の決断」を英語にすると「difficult decision」「agonizing decision」となり、例えば上記の「苦渋の決断をする」を英語にすると「make a difficult decision」となります。
一方、「断腸の思い」を英語にすると「heartbroken thoughts」「overwhelming sorrow」「heartrending grief」となり、例えば上記の「断腸の思いで決断する」を英語にすると「make a heart rending decision」となります。
「苦渋の決断」の意味
「苦渋の決断」とは
「苦渋の決断」とは、辛くて苦しい決定をすることを意味しています。
「苦渋の決断」の使い方
「苦渋の決断」を使った分かりやすい例としては、「業績を持ちこたえるため苦渋の決断をしました」「苦渋の決断を迫られることもあるでしょう」「この選択は苦渋の決断だった」「今シーズン限りでの引退は本当に苦渋の決断でした」などがあります。
「苦渋の決断」は、辛くて苦しい決定をする時に使われる言葉です。たくさん悩んだ結果、デメリットはあるがこの選択をした方が良い場合に使われます。
そのため、軽い決断をした場合は、「苦渋の決断」という言葉は使いません。例を挙げると「今日の夕飯は洋食と和食どちらにしよう」「今日は何の靴を履いていこう」などのような、辛くて苦しくない場合は使わないと覚えておきましょう。
「苦渋の決断」はビジネスシーンと日常生活の両方で使う言葉になります。また、スポーツ選手や芸能人などが引退する場合に、「苦渋の決断でしたが引退致します」などと使うことも多いです。
表現方法は「苦渋の決断だったと思います」「苦渋の決断となりました」
「苦渋の決断だったと思います」「苦渋の決断となりました」「苦渋の決断でしたね」などが、「苦渋の決断」を使った一般的な表現方法になります。
「苦渋の決断」の類語
「苦渋の決断」の類語・類義語としては、辛い苦しい思いを抱きながらもやむ得ず選択することを意味する「苦渋の選択」などがあります。
「苦渋の決断」の苦の字を使った別の言葉としては、苦しい立場を意味する「苦境」、本人のためを思い、言いにくいところまであえて言うことを意味する「苦言」、物事を成し遂げようと色々試みたり考えて苦労することを意味する「苦心」などがあります。
「断腸の思い」の意味
「断腸の思い」とは
「断腸の思い」とは、腸が千切れるほど悲しく辛い思いをすることを意味しています。
「断腸の思い」の使い方
「断腸の思い」を使った分かりやすい例としては、「断腸の思いで諦める」「断腸の思いで休業とさせて頂きます」「断腸の思いで辞表を提出した」「断腸の思いで離婚することにした」「式へ出席が叶わず断腸の思いでございます」などがあります。
「断腸の思い」は、腸が千切れるほど悲しく辛い思いをすることを表現したい時に使います。本当に腹が千切れたわけではなく、心が悲しいかったり、苦しかった場合に使うため、比喩的な言葉になります。
「断腸の思い」の由来
「断腸の思い」は中国の世説新語(読み方:せせつしんご)という故事に由来しています。中国の晋の武将桓温(読み方:かんおん)の船が戦場へ向かう途中、峡谷を渡った時に家臣が子猿を捉えて船に乗せました。
それに気づいた母猿が、子猿を助けようと岸伝いで船を追いかけます。長い距離を走って船が岸に近づいた所で、飛び乗ることに成功したですが、間もなくしてその母猿は死んでしまいます。その後、母猿の腹を裂いてみると、腸がずたずたに断ち切れていました。
この故事から、腸が千切れるほどの悲しい思いをすることを「断腸の思い」と言うようになりました。
表現方法は「断腸の思いで決断する」「断腸の思いで欠席する」
「断腸の思いで決断する」「断腸の思いで欠席する」「断腸の思いで断念する」「断腸の思いで諦める」「断腸の思いではありますが」などは、「断腸の思いを」を使った一般的な表現方法になります。
「断腸の思い」の類語
「断腸の思い」の類語・類義語としては、悲しく痛ましいことを意味する「悲槍」、あまりに悲しくて心が痛むことを意味する「悲痛」、悲しみ痛むことを意味する「悲悼」などがあります。
「断腸の思い」の思の字を使った別の言葉としては、恐ろしさや緊張のあまり身体が丸まって小さくなったように感じることを意味する「身の縮む思い」、身が痩せるほどのつらい思いをすることを意味する「痩せる思い」などがあります。
「苦渋の決断」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、辛くて苦しい決定をすることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文のように、とても悩んで決断した場合に使う言葉になります。そのため、軽い決断に対しては苦渋の決断という言葉は使いません。
「断腸の思い」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、腸が千切れるほど悲しく辛い思いをすることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文のように、腸が千切れるくらい苦しい思いを比喩的に表現した場合に使います。
「苦渋の決断」と「断腸の思い」どちらを使うか迷った場合は、「苦渋の決断」よりも「断腸の思い」の方がより悲しく辛い場合に使うと覚えておきましょう。