似た意味を持つ「仁義」(読み方:じんぎ)と「正義」(読み方:せいぎ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「仁義」と「正義」という言葉は、どちらも「道徳的な観念」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
仁義と正義の違い
仁義と正義の意味の違い
仁義と正義の違いを分かりやすく言うと、仁義とは他者への思いやりや情けを表し、正義とは人としての正しい行いを表すという違いです。
仁義と正義の使い方の違い
一つ目の仁義を使った分かりやすい例としては、「仁義にもとる行為は容認できません」「もう彼らに仁義立てする必要はない」「関連部署に仁義を切っておこう」「仁義を通す生き方を貫きたい」などがあります。
二つ目の正義を使った分かりやすい例としては、「彼は正義感が強いヒーローのような存在です」「いじめを目の当たりにして正義感に駆られる」「子どもの頃は正義の味方がいると信じていました」などがあります。
仁義と正義の使い分け方
仁義と正義という言葉は、どちらも道徳的な観念であり、人が行うべき道筋や態度を表していますが、意味や使い方には違いがあります。
仁義とは、儒教で道徳の根本とする教えです。「仁」は思いやりや情けを表し、「義」は人が守るべき正しい道を意味します。転じて、「仁義を重んじる」のような使い方で、道徳上守るべき道筋や義理の意味もあります。
正義とは、人として行なうべき正しい道義を意味する言葉です。上記の例文にある「正義の味方」とは、弱者を救い、悪者をこらしめる人を表す言葉であり、物語に登場するヒーローを指していう場合が多くあります。
つまり、仁義は思いやりや情けのニュアンスが強く、正義は人としての正しい行為を表す点に、二つの言葉の違いがあります。
仁義と正義の英語表記の違い
仁義を英語にすると「humanity and justice」「duty」「moral code」となり、例えば上記の「仁義を欠く」を英語にすると「fail in one’s duty」となります。
一方、正義を英語にすると「justice」「right」「righteousness」となり、例えば上記の「正義感」を英語にすると「a sense of justice」となります。
仁義の意味
仁義とは
仁義とは、仁と義、儒教道徳の根本理念を意味しています。
その他にも、「道徳上守るべき筋道」「他人に対して欠かせない礼儀上の務め、義理」「ばくち打ち・香具師などの仲間の道徳や掟、その仲間内で行われる初対面の挨拶」の意味も持っています。
表現方法は「仁義を通す」「仁義を尽くす」「仁義を切る」
「仁義を通す」「仁義を尽くす」「仁義を切る」などが、仁義を使った一般的な言い回しです。
仁義の使い方
「仁義礼智信という儒教の教えを大切にする」の文中で使われている仁義は「儒教道徳の根本理念」の意味で、「父は仁義を重んじる昔気質の人です」「好きな映画は仁義なき戦いです」「ビジネスでも仁義は大事です」の文中で使われている仁義は「道徳上守るべき筋道」の意味で使われています。
一方、「恩師には仁義を通すべきだと考える」「忠誠と仁義を尽くす家臣を重用する」の文中で使われている仁義は「礼儀上の務め、義理」の意味で、「お控えなすってと仁義を切るシーンが好きです」の文中で使われている仁義は「ばくち打ちなどの仲間の掟や初対面の挨拶」の意味で使われています。
仁義とは、儒教の基本理念を示す言葉です。「仁」は博愛の徳、「義」は正しい行いを守る徳を表します。転じて、社会生活を送るうえで必要な良識、他人に対して欠かせない義理なども意味する言葉です。また、同音の「辞宜」から、ヤクザなどの仲間の掟や初対面の挨拶も意味するようになりました。
「仁義なき戦い」の意味
上記の例文にある「仁義なき戦い」とは、戦後の広島で起きたやくざの抗争事件を題材とした小説であり、1973年に映画化された作品です。任侠映画の名作とされ、ヤ○ザ特有の名セリフや名言の宝庫と言われています。
「大道廃れて仁義あり」の意味
仁義を用いた日本語には「大道廃れて仁義あり」があります。大道廃れて仁義ありとは、道家の始祖・老子の書である「老子」を由来とする故事成語です。道徳を守ることが口うるさく言われるのは、それが衰えている証拠であることを意味します。
仁義の対義語
仁義の対義語・反対語としては、義理を欠くことを意味する「不義理」、道徳に反していることを意味する「不道徳」などがあります。
仁義の類語
仁義の類語・類義語としては、人として守るべき道を意味する「人倫」、人の行うべき正しい道や根本の道徳を意味する「大道」、道徳や倫理を意味する「モラル」、社会生活をするうえで守るべき道徳を意味する「公衆道徳」などがあります。
正義の意味
正義とは
正義とは、人の道にかなっていて正しいことを意味しています。
その他にも、「正しい意義、正しい解釈」「人間の社会行動の評価基準で、その違反に対し厳格な制裁を伴う規範」の意味も持っています。
表現方法は「正義を振りかざす」「正義が勝つ」「正義を盾に」
「正義を振りかざす」「正義が勝つ」「正義を盾に」などが、正義を使った一般的な言い回しです。
正義の使い方
「正義感が強すぎることで反感を買う」「政治哲学における正義を論じる」「正義で世界は救えないのが現実です」などの文中で使われている正義は、「人の道にかなっていて正しいこと」の意味で使われています。
一方、「孔穎達の五経正義を読み解く」「四書正義を読み解く」などの文中で使われている正義は「正しい意義」の意味で、「正義に反することはしたくない」「アンパンマンは正義の味方です」などの文中で使われている正義は「社会行動の違反に対して制裁を伴う規範」の意味で使われています。
正義とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ちますが、おもに「人の道にかなっていて正しいこと」「社会行動の違反に対して制裁を伴う規範」の二つの意味で用いられています。「正しい意義、正しい解釈」の意味で用いられることはほとんどありません。
「正義感」の意味
正義を用いた日本語には「正義感」があります。正義感とは、物事を処理する際に正義を通そうとする気持ちのことであり、「正義心」とも言います。言い回しには「正義感が強い」「正義感がある」などがあります。
正義の対義語
正義の対義語・反対語としては、人として守るべき道にはずれることを意味する「不義」、 人としてのあり方や生き方に外れていることを意味する「非道」などがあります。
正義の類語
正義の類語・類義語としては、人として守り行うべき道を意味する「人道」、人のふみ行うべき正しい道を意味する道理「道義」、 人が正しい行為をなすために守り従わねばならない規範の総体を意味する「道徳」などがあります。
仁義の例文
この言葉がよく使われる場面としては、儒教で最も重んじる徳目、世間一般の道徳、特殊な仲間の間の道徳や初対面の挨拶を表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「仁義を切る」とは、ばくち打ちや香具師などの間で、独特の形式に基づいた初対面の挨拶を交わすことです。例文5の「仁義を切る」とは、事をなすにあたって、先任者や関連部署などに一通りの挨拶をしておくことを表しています。
正義の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人として行なうべき正しい道義、正しい意義、社会行動の違反に対し厳格な制裁を伴う規範を表現したい時などが挙げられます。
例文4に関して、アリストテレスは正義について、広義には合法的であること、狭義には公平であることと定義しました。
仁義と正義という言葉は、どちらも「人として行うべき道筋や態度」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、他者への思いやりや情けを表現したい時は「仁義」を、人としての正しい行いを表現したい時は「正義」を使うようにしましょう。