似た意味を持つ「遺憾」(読み方:いかん)と「残念」(読み方:ざんねん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「遺憾」と「残念」という言葉は、どちらも心残りなさまを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
遺憾と残念の違い
遺憾と残念の意味の違い
遺憾と残念の違いを分かりやすく言うと、遺憾は公の場で使われ、残念とは日常生活でも公の場でも使われるという違いです。
遺憾と残念の使い方の違い
一つ目の遺憾を使った分かりやすい例としては、「我が社にとってそれは非常に遺憾なことである」「政府は遺憾の意を示した」「誠に遺憾ではございますが」「スキルを遺憾なく発揮できる職場だ」などがあります。
二つ目の残念を使った分かりやすい例としては、「お役に立てず誠に残念です」「お会いできなくて残念です」「残念ながら今回は採用を見送らせて頂きます」「この度は誠に残念でなりません」などがあります。
遺憾と残念という言葉は、思いどおりにならずに不満や物足りなさ、または心配などが残ることという共通の意味を持つ言葉です。同じ意味を持つ言葉ですが使われ方に違いがあり、遺憾は公の場や改まった場面で使われ、残念は日常生活でも公の場でも使われる傾向があります。
遺憾は政治家や経営責任者が使うことが多い
遺憾という言葉は日常会話でに使われることはないのですが、政治家や経営責任者などの会見などで使われるので聞き馴染みのある言葉でしょう。外交問題や不祥事に対してのコメントで出てくるので、非難や謝罪の意味を持つと思われがちなのですが、本来は残念と同じ意味の言葉なのです。
「遺憾の意」の意味
例えば「領海侵入に対して遺憾の意を表明する」と政府が発表した場合、強い非難や抗議を表明しているわけではなく、単に残念だという見解を表していることに過ぎません。領海侵入されたことは残念だという表明は、遠まわしに非難していることにもなりますが、明らかな非難ではありません。
遺憾は残念と同義であり、非難や抗議あるいは謝罪の意味を厳密には持たない言葉です。また、日常会話で使われず、公の場や改まった場面で使われる傾向があることを覚えておきましょう。
遺憾と残念の英語表記の違い
遺憾も残念も英語にすると「regret」「pity」「lamentable」となり、例えば上記の「それは非常に遺憾なことだ」を英語にすると「it is extremely regrettable」となります。
遺憾の意味
遺憾とは
遺憾とは、期待したようにならず心残りであること、残念に思うことを意味しています。
表現方法は「極めて遺憾」「遺憾に思う」「誠に遺憾ながら」
「極めて遺憾」「遺憾に思う」「誠に遺憾ながら」などが、遺憾を使った一般的な言い回しです。
遺憾の使い方
遺憾を使った分かりやすい例としては、「歴史的見解の相違は遺憾千万である」「領海への侵入に対し遺憾の意を表明する」「外交問題に対する遺憾砲には聞き飽きた」「遺憾極まりない対応だった」などがあります。
その他にも、「彼の感性を遺憾なく発揮した作品だ」「誠に遺憾ながらご希望に沿えない結果となりました」「甚だ遺憾に存じております」「この対応は極めて遺憾である」「解決できず遺憾に堪えない」などがあります。
「遺憾なく」の意味
上記の例にある「遺憾なく」とは、心残りがないほど十分なさまを意味する副詞です。「実力を遺憾なく発揮する」とは、実力を余すことなく完全に発揮することを表します。遺憾はマイナスイメージの言葉ですが、「なく」という打ち消しの言葉と結びつきプラスイメージの言葉となります。
遺憾の語源
遺憾は漢語を語源とする言葉で、「憾(かん)を遺(のこ)す」という、不満足な気持ちや恨みを心に留めるという意味が元になっています。不本意で残念だという意味なのですが、外交問題や謝罪会見のコメントで使われるので、抗議や謝罪の意味に誤って受けとられる傾向があります。
四字熟語「遺憾千万」の意味
遺憾という言葉を用いた四字熟語には「遺憾千万」があり、物事が思うようにならず残念でたまらない様子を意味します。「千万」は程度がこの上ないという意味を添える接尾辞であり、他にも、非常にこっけいなさまを意味する「笑止千万」、非常に奇怪なさまを意味する「奇怪千万」などがあります。
遺憾の類語
遺憾の類語・類義語としては、あとに思いが残ってすっきり思い切れないことを意味する「心残り」、自分の本当の望みとは違っていることを意味する「不本意」、くやしいことを意味する「無念」などがあります。
遺憾の遺の字を使った別の言葉としては、忘れがたい深いうらみを意味する「遺恨」、病気やけがが治ったに残る機能障害などの症状を意味する「後遺症」、大切な事が抜け落ちていることを意味する「遺漏」などがあります。
残念の意味
残念とは
残念とは、もの足りなく感じること、あきらめきれないことを意味しています。
その他にも、悔しく思うさま、すぐれた素質や長所などをもちながら大きな短所を併せもっているさまの意味も持っています。
表現方法は「残念ですが」「残念なことに」「残念に思う」
「残念ですが」「残念なことに」「残念に思う」などが、残念を使った一般的な言い回しです。
残念の使い方
「残念ですが参加できそうにありません」「残念なことに会えなかった」「数量限定で購入できず残念だ」などの文中で使われている残念は、「もの足りなく感じること、あきらめきれないこと」の意味で使われています。
一方、「残念無念の落選となった」「残念な結果だ」などの文中で使われている残念は「悔しく思うさま」の意味で使われています。「残念ないきもの事典を読む」「残念な人だな」などの文中で使われている残念は「大きな短所を併せもっているさま」の意味で使われています。
残念という言葉は、上記の例のように複数の意味を持つ言葉です。思い詰めた考えや気持ちである念が残ることを表し、物足りなさや悔しさを意味しますが、昨今では俗に、長所が発揮されなかったり、長所を打ち消すほどの短所を併せもつさまの意味で使われるようになりました。
四字熟語「残念無念」の意味
残念という言葉を用いた四字熟語には「残念無念」があり、非常に残念であり悔しくてたまらないことを意味します。同じ意味の四字熟語には、この上ないという意味の「至極」と組み合わせた「残念至極」があります。
残念の類語
残念の類語・類義語としては、対象が期待外れで満足できないさまを意味する「口惜しい」、物事が思うとおりにならず残念でたまならいことを意味する「悔しい」、ひどく残念がることを意味する「痛恨」などがあります。
残念の残の字を使った別の言葉としては、なくならないで残っていることを意味する「残存」、残りとどまることを意味する「残留」、無慈悲でむごたらしいことを意味する「残酷」などがあります。
遺憾の例文
この言葉がよく使われる場面としては、期待したようにならず心残りであることを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「遺憾の意を表する」という表現は、残念であったり不満であったりする気持ちを表に出すという意味ですが、ここでは非難しているように使われています。使い方によっては、謝罪の意味のように使われることもあります。
例文3にある「遺憾砲」とは、ネット上で誕生した言葉と言われています。日本政府が意見表明の中で「遺憾」という言葉を多く使うことを意味した言葉で、はっきりとした抗議や解決に向けた行動をしないことを揶揄した言葉です。
残念の例文
この言葉がよく使われる場面としては、もの足りなく感じること、悔しく思うこと、大きな短所を併せもっているさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「残念ながら」とは、事の展開や結果を伝える際に相手が残念がることを見越して思いやる意味を込めて投げかける表現です。例文3では、優れた容姿を持ちながら、それを打ち消すほどのマイナス要素を持っている男性を「残念なイケメン」と表現しています。
遺憾と残念という言葉は、どちらも不本意で心残りなさまを表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、日常会話においては残念を使うようにしましょう。また、遺憾という言葉には、本来、非難や抗議あるいは謝罪の意味はないことを覚えておきましょう。