似た意味を持つ「粗相」(読み方:そそう)と「失態」(読み方:しったい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「粗相」と「失態」という言葉は、どちらも失敗することを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
粗相と失態の違い
粗相と失態の意味の違い
粗相と失態の違いを分かりやすく言うと、粗相とは不注意な言動による失敗を表し、失態とは名誉が傷つくような失敗を表すという違いです。
粗相と失態の使い方の違い
一つ目の粗相を使った分かりやすい例としては、「彼がそんな粗相をするとは信じられない」「くれぐれも粗相のないように」「食事の粗相で服が汚れてしまった」「息子がとんだ粗相をしでかした」「トイレに間に合わず粗相した」などがあります。
二つ目の失態を使った分かりやすい例としては、「打ち上げでハメを外して失態をさらした」「お酒の席での失態のお詫び文を書いている」「階下に水が漏れる大失態で問題になる」「セリフを忘れるという失態を演じた」などがあります。
粗相と失態の使い分け方
粗相と失態という言葉は、失敗を表す言葉であり、日常生活やビジネスシーンで使われる言葉です。失敗という共通の意味では似た使い方をする言葉ですが、意味合いは異なるので注意が必要です。粗相は不注意から起こす失敗を意味し、失態は面目をそこなうような失敗を意味します。
つまり、粗相は不注意な言動が引き起こす単なる失敗を表すのですが、失態は名誉を傷つけたり恥ずかしさを伴うような失敗を表します。ある失敗を粗相と表現した場合、その失敗の程度は軽い印象を受けます。一方、失態と表現した場合、その失敗の程度は重い印象を受けるようになります。
また、粗相には複数の意味があり、粗末なことや、大便や小便をもらすことの意味もあります。失敗の意味合いが異なること、粗相には失敗以外にも意味があること、これらが粗相と失態という言葉の違いになります。
粗相と失態の英語表記の違い
粗相も失態も英語にすると「fault」「mistake」「failure」となり、例えば上記の「そんな粗相をするとは」を英語にすると「make such a mistake」となります。ただし、粗相が持つ「小便などを漏らす」意味では「have a toilet accident」となります。
粗相の意味
粗相とは
粗相とは、不注意や軽率さから過ちを犯すことを意味しています。
その他にも、「粗末なこと、粗略なこと」や「大便や小便をもらすこと」の意味も持っています。
表現方法は「粗相をしでかす」「粗相のないように」「粗相してしまった」
「粗相をしでかす」「粗相のないように」「粗相してしまった」などが、粗相を使った一般的な言い回しです。
粗相の使い方
「訪問先では粗相のないように」「粗相をした際の謝罪は丁重にすること」「飲み会で粗相して粗相コールされた」「粗相ポイント制という習わしがある」などの文中で使われている粗相は、「不注意や軽率さから過ちを犯すこと」の意味で使われています。
一方、「私だけ粗相な身なりで恥ずかしかった」「お客様に粗相な品はお渡しできない」などの文中で使われている粗相は、「粗末なこと」の意味で使われ、「子供がお風呂で粗相して慌てた」などの文中で使われている粗相は、「大便や小便をもらすこと」の意味で使われています。
粗相という言葉は、上記の例にあるように複数の意味があります。不注意や軽率さから過ちを犯すことや粗末なことの意味ではビジネスシーンでも日常生活でも使われますが、大便や小便をもらすことの意味ではビジネスシーンでは使われず日常生活で限定的に使われています。
「粗相コール」の意味
粗相は俗語に使われることがあり、上記の例の「粗相コール」とは、飲み会で粗相した時に一気飲みさせる掛け声を意味し、「そそう」というフレーズを使ったコールです。
「粗相ポイント制」の意味
「粗相ポイント制」とは、防衛大学で問題になった習わしで、下級生のミスを点数化し一定値で罰を与えるきまりを意味します。
「粗相火」の意味
粗相を用いた日本語には「粗相火」があり、過失から起こる火事を意味します。寝タバコやコンロの消し忘れなど、火の取り扱いを誤って出火させてしまうことを粗相火または失火といいます。対になる言葉は放火であり、わざと火を付け出火させる行為を意味します。
粗相の類語
粗相の類語・類義語としては、不注意なために引き起こした過ちを意味する「粗忽」、自分の意思にかかわらず大便や小便が排泄されることを意味する「失禁」、無意識に小便を漏らすことを意味する「遺尿」などがあります。
粗相の粗の字を使った別の言葉としては、品質などが上等でないことを意味する「粗末」、言動が下品で洗練されていないことを意味する「粗野」、およその筋道やあらましを意味する「粗筋」などがあります。
失態の意味
失態とは
失態とは、失敗して体面を失うこと、面目を損なうようなしくじりを意味しています。
表現方法は「失態をしでかす」「失態を演じる」「失態をする」
「失態をしでかす」「失態を演じる」「失態をする」などが、失態を使った一般的な言い回しです。
失態の使い方
失態を使った分かりやすい例としては、「お酒の席で失態をさらす」「先日のデートでの失態を挽回したい」「キャプテンが思わぬ失態を演じて失点となる」「スマホを洗濯する大失態をしでかす」などがあります。
その他にも、「約束の日時を間違うなんて大失態だ」「部下の失態のお詫びに出向く」「定期券をお店に忘れるという失態をしでかす」「子供の前で酔いつぶれて失態をさらす」「子供の通帳を失くし、失態を詫びる」などがあります。
失態とは失体とも書きますが、一般的に失態と表記されます。失体と書いても間違いではありませんが、失態の方が馴染みがあり通じやすいでしょう。
失態という言葉は、単なる失敗を表すのではなく、体裁が悪くなる失敗や、名誉を傷つけるような失敗を意味します。失敗して外聞や世間体が気になったり、恥ずかしく感じたりする時に使われる言葉です。
「大失態」の意味
大変な失態を表す言葉に「大失態」があります。どんでもないしくじりや失敗を意味し、大きな失敗により体面を失ったときに時に使われる言葉です。へまをするという意味の「やらかす」「しでかす」という言葉と併せて、「大失態をやらかす」「大失態をしでかす」などと表現します。
失態の類語
失態の類語・類義語としては、不注意などによって生じたしくじりを意味する「過失」、物事をやりそこなうことを意味する「失敗」、人に迷惑がかかるような不都合な行いをすることを意味する「不始末」などがあります。
失態の失の字を使った別の言葉としては、するべきことを怠ることを意味する「失策」、すっかり忘れてしまうことを意味する「忘失」、財産や利益などを失うことを意味する「損失」などがあります。
粗相の例文
この言葉がよく使われる場面としては、不注意や軽率さから過ちを犯すこと、粗末なこと、大便や小便を漏らすことを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「くれぐれも粗相のないように」とは、失礼の無いように準備や対応するように懇願することを意味します。目上の人や大事なお客様を迎える際に使われることが多い言葉です。例文4や例文5にある粗相は大小便をもらすことを意味し、人だけでなくペットにも使われます。
失態の例文
この言葉がよく使われる場面としては、失敗して体面を失うこと、面目を損なうようなしくじりを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「失態をしでかす」とは、ふつうでは考えられないような失敗をすることを意味します。「失態をやらかす」とも言います。例文4の「失態をさらす」とは、 失態を広く人目に触れさせてしまうことを表します。
例文5の「失態をおかす」は失態をしてしまったことを表す言葉ですが、「失態をおかす」は漢字で「失態を犯す」となる仰々しい表現となるので、「失態を演じる」「失態をさらす」などとする方が良いでしょう。
粗相と失態という言葉は、どちらも失敗を表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、不注意な言動による失敗を表現したい時は「粗相」を、名誉が傷つくような失敗を表現したい時は「失態」を使うようにしましょう。