似た意味を持つ「除斥」(読み方:じょせき)と「忌避」(読み方:きひ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「除斥」と「忌避」という言葉は、どちらも何かを除外するという意味を持つという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
除斥と忌避の違い
除斥と忌避の意味の違い
除斥と忌避の違いを分かりやすく言うと、除斥は単純に取り除いたり除外することを意味していて、忌避は嫌って遠ざけたり、避けたりすることを意味しているという違いです。除斥には嫌がるという意味は含まれませんが、忌避は嫌悪を含みます。
また、裁判用語としては、除斥というのは、裁判官自身がその事件の当事者であったり、裁判官の配偶者や親族が事件に関わっていたりする場合に、その事件の裁判から除外されることを意味しています。
これは裁判の公平性を保つために取られる処置であり、公平性を失わせる可能性のある裁判官を正式に除外することを意味しています。また、除斥期間という言葉を使うことによって、一定期間だけ法律上の権利が除外されることを意味する場合もあります。
対する忌避というのは、嫌って遠ざけるという意味を持つ言葉です。忌避の「忌」という字が「忌む」という意味を持つことからもその言葉の意味が分かりやすいでしょう。忌避とは、忌み嫌う気持ちを持って遠ざけるという意味を持つ言葉です。
そして、裁判用語としては、除斥と似た意味を持ちます。忌避の場合には、裁判官が事件の当事者と特別に関係が深いというような理由ではなく、不公正な結論を出されるような恐れがあることから当事者が裁判官の除外を申立てるものです。
つまり、忌避というのは、事件の当事者が自らの考えによって裁判官を除外するために出す申立てのことを意味しています。現在の裁判では忌避の申立ては認められない場合が圧倒的に多いものです。
除斥と忌避の使い分け方
除斥と忌避は、どちらも誰かを除外することを求める意味を持つ言葉ですが、除斥については、正当な理由による除外であり、忌避については嫌悪の感情から来る除外の希望であると覚えておくようにしましょう。
除斥の意味
除斥とは
除斥とは、良くないものを取り除くことや除外することを意味しています。
裁判用語としての除斥
裁判用語では、裁判官がその事件や当事者と深く関わりがある場合、裁判の公平性を保つため、該当の裁判官を裁判から除外することを「除斥」と表現します。
除斥の使い方
除斥というのは、害となりそうなものを事前に取り除いたり、除外することを意味しています。例えば「弊害となりそうなものを除斥する」などのように使用されます。一定期間だけ法律上の権利が除外されることを「除斥期間」と表現したりもします。
また、裁判用語としても除斥という言葉は使われるものです。これは、裁判を行うのに際し、裁判官がその事件や事件の当事者と深い関わりがある場合、公正な裁判が出来ないものとして、事件担当から外れることを表現する言葉です。
例えば、事件の当事者が裁判官自身の親族や配偶者だった場合、または裁判官自身が事件の当事者である場合、その裁判が公正に行われるものなのかは疑問が残ります。そのような曖昧な状況を防ぐために、除斥という手続きが行われるものです。
つまり、裁判官は自分と関わりの深い事件については、自身で裁判を担当することが出来ないような仕組みになっているということです。除斥というのは、正式な手続きを踏まえて、行われるものです。
除斥の語源
除斥の「除」という字は、取り除く、古いものから新しいものに移る、取り払うという意味を持つ漢字です。そして、除斥の「斥」は、退ける、押しのけるという意味を持ちます。除斥とは、取り除いて押しのけるという意味だと覚えておくようにしましょう。
除斥の類語
除斥の類語・類義語としては、邪魔なものを除き去ることを意味する「除去」、該当する範囲内に収まらないものを外すことを意味する「除外」などがあります。
除斥の「除」という字を使った別の単語としては、学籍や戸籍、名簿などから名前を除くことを意味する「除籍」、金銭や数量などを差し引くことを意味する「控除」、義務や役目などを免じることを意味する「免除」などがあります。
忌避の意味
忌避とは
忌避とは、その物事を嫌って避けることを意味しています。
裁判用語としての忌避
裁判用語では、裁判の公平性を保つために、該当する裁判官を申立てによってその裁判から排除することについても「忌避」と表現します。
忌避の使い方
忌避とは、何かの物事を嫌って避けることを意味している言葉です。例えば「兵役を忌避する」などの表現で使用されます。現代では、あまり頻繁に使用される言葉ではなく、畏まった、カタい印象を与える言葉です。
また、裁判用語としても使われる言葉で、これは、裁判官を申立てによって排除することを意味しています。前述した除斥と似ていますが、忌避の場合には、裁判を受ける側からの申立てによって裁判官が排除されることを意味します。
裁判官が該当事件の当事者であったり、関係者であったりするわけではないけれど、何かしらの縁があったり、忖度が発生しそうな可能性があると見られる際に、裁判を行う当事者から忌避の申立てをすることが出来ます。
除斥には該当しないけれど、裁判の公正さが失われる可能性がある場合に「忌避」という申立て、手続きが行われるものであると覚えておくようにしましょう。しかしながら、実際には、この忌避の申立ては認められないことが大半です。
忌避の場合には、裁判官が事件の当事者と直接深い関わりを持っているわけではない場合が多いので、公平性を保てない理由の説明が困難なことが忌避が認められない大きな理由です。
表現方法は「忌避感を覚える」「退屈を忌避する」
「忌避感を覚える」「退屈を忌避する」などが、忌避を使った一般的な言い回しです。
忌避の類語
忌避の類語・類義語としては、物事を避けてぶつからないようにすることを意味する「回避」、関わりを持つことを嫌って避けることを意味する「敬遠」などがあります。
忌避の「避」という字を使った別の単語としては、災害を避けて安全な場所へ立ちのくことを意味する「避難」、その場所を退いて危険を避けることを意味する「退避」、涼しい土地に一時移って夏の暑さをさけることを意味する「避暑」などがあります。
除斥の例文
この言葉がよく使われる場面としては、良くないものを取り除いたり、裁判用語として、裁判官が事件に直接深く関わりを持つ場合に、裁判の公平性を保つため、その裁判官を除外することなどを表現したい時などが挙げられます。
除斥というのは、取り除いて退けるという意味を持つ言葉です。悪いものを取り除くという意味でもあり、不当な理由で取り除くような意味は含まれません。あくまでも、正式に除外するべきとされたものが外されることを除斥と表現します。
裁判用語でよく使用されるものですが、その他にも「除斥期間」という言葉で使われます。これは、一定の期間、法的権利を行使しない期間のことを意味しています。法的措置から除外されている期間であると考えると分かりやすいでしょう。
忌避の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事を嫌って避けることや、裁判用語として、裁判の公平性を保つために該当する裁判官の排除を申立てることを表現したい時などが挙げられます。
忌避というのは、忌み嫌って避けるという意味を持つ言葉です。この「忌む」というのは、不吉なものとして避けるという意味を持つ言葉です。どうしても嫌で避けたい場合に「忌避」という言葉を使うのだと覚えておくようにしましょう。
日常生活ではあまり頻繁に使われる言葉ではなく、カタい印象を与えますが、裁判用語としては、一般的に使用される言葉です。