似た意味を持つ「存在」(読み方:そんざい)と「実在」(読み方:じつざい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分けを参考にしてみてください。
「存在」と「実在」という言葉は、どちらも「物事がある」ことを表現する際に用いられるという共通点があり、本来の意味は少し違いますが、混同して使われる傾向があります。
存在と実在の違い
存在と実在の意味の違い
存在と実在の違いを分かりやすく言うと、存在というのは、現実であってもなくても、ある物事があるということを意味するのに対して、実在というのは、ある物事が現実に存在するという違いです。
存在と実在の使い分け方
上記の説明から分かるように、存在の方が実在よりも広い意味の言葉であり、それだけに捉えどころのないものだと言うことができますが、両者は同じ「在」という漢字を含むことから、意味の重なるところがあります。
存在と実在は、両方「在」という漢字を含みます。「在る」(読み方:ある)という形で使うこともありますが、そこにあること、そこにいることを意味します。「潜在能力」(読み方:せんざいのうりょく)と言ったら、能力がひそんで「いる」ということです。
存在というのは、どんな物事であっても、それが「ある」ということを表現する言葉です。「彼は存在する」「存在が疑わしい」というように用いられます。存在とほぼ同じ意味を表すものに「有」(読み方:う)という言葉がありますが、存在の方が一般的です。
私たちの身の回りにあるものは、すべて「存在」するものです。そして、小説や映画の中の出来事も、脚色や空想が含まれていたとしても、「存在」すると言えます。身の回りにあるものだけでなく、頭の中でイメージされるものも「存在」します。
存在の「存」という漢字は「ある」ということを意味します。存も在も「ある」ということを意味で、同じ意味の漢字を重ねて作られているのが「存在」という言葉です。
ただし「存」という漢字には、「そのままの状態をたもつ、ながらえる」という意味あいも含まれています。この意味あいは「在」の方にはありません。少しややこしいですが、「あるということ」が「保たれている」という意味あいが「存在」という言葉にはあります。
もう一方の実在というのは、現実に存在するという意味です。実在という言葉を説明する時には、存在という言葉を使わなければなりません。実在というのは存在の一種だと考えると分かりやすいでしょう。電車に蒸気機関車もあれば新幹線もあるのと同じことです。
実在というのは、現実に存在するということです。現実の対義語・反対語として、「空想」「仮想」「理想」「幻想」「妄想」「虚構」などが挙げられます。このことから分かるように、実在という言葉は、実際にあるものを表現する言葉です。
例えば、あなたが今座っているイスは実在しています。もっと言うと、存在も実在もしています。あなたの好きなドラマの俳優は実在しますが、キャラクターは実在していません。キャラクターや物語はフィクションなので、存在はしますが、実在はしていません。
ただし、物語も現実の世界の一部だという観点から、「物語や虚構の実在性」ということを考える人たちもいますので、今後「キャラクターは実在しない」と考えない人が多くなる可能性があります。その場合には、実在という言葉で表現される事態が変わることになるでしょう。
存在の意味
存在とは
存在とは、現実であるかどうかに関係なく、物事があるということを意味しています。存在の「存」も「在」も「ある」ということを意味しています。同じ意味の漢字を重ねたものが「存在」という言葉です。
存在の「存」という漢字には「保たれている、ながらえている」という意味あいもあります。存在のイメージが「ある」ということが「保たれている」と考えると、存在という言葉がなぜ日常生活よりもむしろ難解な議論で使用されるのか分かりやすくなります。
表現方法は「存在する」「存在しない」「存在意義」
「存在する」「存在しない」「存在意義」などが、存在を使った一般的な言い回しです。
存在の使い方
存在を使った分かりやすい例としては、「自分という人間がこの世に存在することをアピールしたい野望がある」「彼には存在しない彼女とのデートを妄想の中だけで楽しむ癖がある」「自分の存在意義が分かれば人生はもっと楽しいものになるだろう」などがあります。
存在の対義語
存在の対義語・反対語として、「無」(読み方:む)「非存在」(読み方:ひそんざい)が挙げられます。両方「ない」という意味ですが、「非存在」の方は一般的ではありません。「無」も「財布がない」のように使われるのが一般的で、名詞としては一般には使われません。
存在の類語
存在の類語・類義語としては、はっきりと形に現れて存在することを意味する「顕在」、具体的に形に現すことを意味する「具現」、はっきりと姿を現すことを意味する「顕現」などがあります。
存在の「存」という字を使った別の言葉としては、思っていたことと異なることを意味する「存外」、自分以外の他のものに頼るという意味の「依存」、前々からあることを意味する「既存」、都会から離れた田舎を意味する「在郷」などがあります。
もう一方の「在」という字を使った別の言葉としては、多くのものが一か所にかたまっていることを意味する「偏在」、それと読み方は同じですが、至る所に数多くあることを意味する「偏在」、あちらこちらということを意味する「在在所所」などがあります。
実在の意味
実在とは
実在とは空想や虚構ではなく現実に存在するということを意味しています。存在の一種と言うことができますが、現実と仮想・フィクションが区別されないような時には、意味が捉えにくくなる言葉です。
実在の「実」という漢字には「ありのままの」という意味があることを考えると、実在が現実の存在を意味することが分かりやすくなります。しかし、私たちの現実世界で人間が手を加えていないものが本当にあるのかと考え始めると、実在と現実は分かれていきます。
表現方法は「実在する」「実存的」「実存主義」
「実在する」「実存的」「実存主義」などが、実在を使った一般的な言い回しです。
実在の使い方
実在を使った分かりやすい例としては、「こんなことを普通はしないと思うような人がこの世には実在する」「生命にはいつか終わりが来るという実存的不安が私の中にはいつもある」「大学では実存主義を研究するゼミに所属している」などがあります。
実在の対義語
実在の対義語・反対語としては、事実ではなく想像によって作られたものであることを意味する「架空」があります。
実在の類語
実在の類語・類義語としては、実際にこの世に存在することを意味する「実存」があります。
実在の「実」という字を使った別の言葉としては、目の前で実際に演技をしてみせることを意味する「実演」、現実の様子と同じであることを意味する「実態」、模型や写真の元となるもののことを意味する「実物」、現実の歴史ということを意味する「史実」などが挙げられます。
存在の例文
この言葉がよく使われる場面としては、表現したい対象について、偶然的な状況やその時々によって違う状態とは違う、それ自体の「ある」ということを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にあるように、「自分の存在」と言う時には、ふつう、日によって変わる状態や感情などには左右されない、自分の本質的なあり方を見つめていることが多いです。実際、存在には本質という意味もあります。
また、例文5にあるように、強烈な印象を与えるものに対して「存在感」という言葉が使われることもあります。「存在」が別の言葉と結びついたものとしては、少し硬い言葉ですが、「存在理由」「存在様式」「有機的存在」などが挙げられます。
この言葉を使う時には、表現したい物事について、偶然的な状況、状態、性質などではなく、その本質を言いたいかどうかを意識するようにしてください。そうすれば、日常ではあまり使わないこの言葉も違和感なく使えるようになります。
実在の例文
この言葉がよく使われる場面としては、その物事が現実に存在することを強調して表現したい時などが挙げられます。例えば例文2では、この人物の名前が言われた時点で存在することはすでに意味されていますが、現実に存在することが強調されています。
例文4の「実在感」はあまり聞きなれない言葉かも知れませんが、フィクションも現実の一部をなしていると考えたり、「拡張現実」ということを考える場合に、用いられることもある言葉です。今後、使用頻度が上がっていく可能性があります。
この言葉を使う時には、表現したい物事について、現実感があるかどうかを意識するようにしてください。そうすれば、実在と言うべきところを存在と言い間違えてしまうことはなくなります。