【葛藤】と【ジレンマ】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「葛藤」(読み方:かっとう)と「ジレンマ」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分けを参考にしてみてください。

「葛藤」と「ジレンマ」という言葉は、どちらも相反するもの同士の間で困難が生まれていることを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが、混同して使われる傾向があります。




葛藤とジレンマの違い

葛藤とジレンマの意味の違い

葛藤とジレンマの違いを分かりやすく言うと、葛藤が二つ以上のものの間で衝突が生まれ、そこに感情的な悩みが生まれていることを意味していて、ジレンマが片方を取ればもう一方が取れなくなるという状況で板挟みなることを意味しているという違いです。

葛藤とジレンマの使い分け方

葛藤というのは、二つのものの間でバランスが取れなくなり、緊張が生じている状態のことを意味する言葉です。人と人、集団と手段がいがみ合っていることや、心の中の様々な感情がせめぎ合っていることを、葛藤と表現します。

例えば母親と子供がケンカしている状態を、「母と子の葛藤」と言うことが出来ます。また、心の中の状態についていえば、「理性と欲求の葛藤」という言い方も出来ます。

葛藤という言葉は、「葛」(読み方:かずら)と「藤」(読み方:ふじ)という植物の名前から出来ていますが、どちらも枝が複雑にもつれて絡み合います。その様子が、相反するもの同士の緊張状態を表現していると言われています。

ジレンマというのは、反対の関係にある二つのものの間で板挟みになることを意味していて、多くの場合、その板挟みに苦悩するという意味も含まれる言葉です。英語の「delemma」をカタカナ表記にした言葉なので、ディレンマと書かれることもあります。

二つのものからどちらかしか選べないけれども、もう片方も捨てられないという場合、また、どちらを選んでも悪いことが起こるけれども、どちらかを選ぶしかない場合にも、ジレンマという言葉でその状況を表現できます。

葛藤とジレンマは両方とも、対立しているものの間での板挟みになることを意味しますが、葛藤がどちらかといえば感情的な対立、ジレンマが選択肢と選択肢、行動と行動の間の対立だと考えると意味が分かりやすくなります。

葛藤の意味

葛藤とは

葛藤とは、人や集団同士がいがみ合うこと、心の中の様々な感情がせめぎ合うことを意味しています。人同士や集団同士のいがみ合いも感情的なものなので、葛藤の意味あいには心理的要素が含まれます。

葛藤の英語表記

英語の「conflict」は普通は「対立」と和訳されますが、心理学では「葛藤」という訳語が用いられます。同じ程度の強さの2つの欲求がある時、両方を選ぶことが出来ずに思い悩むことを言います。

葛藤の使い方

例えば、好きな人に思いを打ち明けたいけれども恥ずかしかったり、関係を壊したくないとためらってしまうとき、この葛藤があります。また、試験勉強をしないといけないけれどテレビが見たい時なども、この葛藤があります。

表現方法は「葛藤する」「葛藤に苦しむ」「自分との葛藤」

「葛藤する」「葛藤に苦しむ」「自分との葛藤」などが、葛藤を使った一般的な言い回しです。

「社会的葛藤」の意味

「社会的葛藤」という言葉があり、この言葉は社会的だから感情的なものとは関係ないということではなく、むしろ社会の様々な立場や階層の思惑が、相互に感情的にもつれあい、不和が生まれているということを意味しています。

葛藤の類語

葛藤の類語・類義語としては、仲が悪くなることを意味する「軋轢」、ぶつかることを意味する「衝突」、思い通りにならなくて心が苛立つことを意味する「イライラ」などがあります。

ジレンマの意味

ジレンマとは

ジレンマとは相反する二つの事柄の間で板挟みになっていることを意味しています。また、どちらを選んでも何かしらの不都合が出ることから、ジレンマは「窮地」を意味することもあります。

心理的な意味を強調する葛藤と違って、ジレンマは実際の行動にまつわる板挟みや、そこから生まれる悩みや困難という意味あいの強い言葉です。

ジレンマの使い方

例えば、既存技術からの転換を図るのにコストがかかる先進国よりも発展途上国の方が新しい技術を導入しやすいことも、ジレンマの一例と言えます。

「社会的ジレンマ」の意味

「社会的ジレンマ」という言葉がありますが、社会の中で各人が最もよい選択をしても、社会にとっては結果として悪影響になることを表現する言葉です。ここでは個人と社会全体が相反して、問題を起こしています。

各国の防衛力強化が国際的緊張を高めることを意味する「安全保障のジレンマ」も社会的ジレンマの一種です。

表現方法は「ジレンマを抱える」「ジレンマを感じる」「ジレンマがある」

「ジレンマを抱える」「ジレンマを感じる」「ジレンマがある」などが、ジレンマを使った一般的な言い回しです。

ジレンマの類語

ジレンマの類語・類義語としては、対立する二者の間に入って苦しむことを意味する「板挟み」、心の苦しみを意味する「悩み事」、心にわだかまりがある状態を意味する「モヤモヤ」などがあります。

葛藤の例文

1.彼はチーム内の人間関係に葛藤している。
2.精神的な葛藤に打ち勝つ。
3.いままではそれを信じて疑わなかったが、いまでは葛藤がある。
4.組織の内部に感情的な葛藤が生じた。
5.葛藤をくぐりぬけ、彼女は人間的に成長した。
6.東京で働きたいが私は一人っ子で、高齢の親を置いて出ていっていいものか葛藤している。
7.私はさまざまな葛藤の末、自分の過去と決別するために、この街を離れることにしました。
8.これから仕事が忙しくなるので、何か行動を起こそうとするたびにいちいち葛藤している暇はない。
9.母親は思春期を迎える子供との関係でさまざまな葛藤に直面していたが、相談する相手もいなかった。
10.彼にどんな心の葛藤があったか、私にはわからなかったが、そっと彼を見守ることはできた。

この言葉がよく使われる場面としては、二つ以上のもの間で思い悩むことや、集団や組織の中での自分の立ち位置にわずらわされていることを表現したい時などが挙げられます。

例文2、例文3、例文5は個人の内面にある、さまざまな感情の間で対立が生じていることを表現していて、例文4は集団の中での人間関係で問題があることを表現しています。例文1は、チームの組織について、自分自身と組織のあり方との間での悩みです。

葛藤という言葉は、多くの場合「悩み」と置き換えることが出来るということを覚えておきましょう。ただし、葛藤という悩みは、「人生についての漠然とした悩み」のような悩みではなく、具体的な何かと何かが対立から生まれる悩みということを覚えておきましょう。

ジレンマの例文

1.その時、彼はジレンマに陥った。
2.結局、そうしたやり方はジレンマに達した。
3.ジレンマにさいなまれて、がんじがらめにされてように感じる。
4.給与はないが自分の時間の持てない今の働き方に、ジレンマを感じる。
5.僕はジレンマを抱えて生きていると感じる。
6.転職したいが自分の年齢や経験のなさを考えるとやりがいはないが安定した今の仕事を続ける方がいいのかジレンマに陥っている。
7.私は演劇をやってみたいのに、人前に出るのは恥ずかしいというジレンマを抱えていた。
8.ゲーム理論とは何かを説明するなら、囚人のジレンマという思考実験を紹介したい。
9.人工知能が発達すれば、人間は仕事で楽をできるかもしれないが、同時に仕事を失うジレンマも見え隠れする。
10.最低賃金を引き上げることは一見良いように思えるが、上げ過ぎると雇用主が採用を控えるというジレンマが発生する。

この言葉がよく使われる場面としては、二つの物事の間で板挟みになっていることを表現したい時などが挙げられます。ジレンマの意味だけでなく、どのような言葉と結びつくか、上の例文を使うなどして覚えておくといいでしょう。

例文3の「がんじがらめ」という言葉は、からみとられて身動きが出来ないという意味です。ジレンマは、このような感情を伴うことがあります。そうした気持ちになったときは、その理由をはっきり意識すると、ジレンマという言葉の意味が納得できるかもしれません。

ジレンマという言葉を使う時には、何と何の間の板挟みになっているのかをはっきりと意識するようにしましょう。そしてどちらも選ぶことができなかったり、どちらを選んでも不都合がある場合、その状況のことをジレンマと表現することは適切だと言えます。

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