似た意味を持つ「困窮」(読み方:こんきゅう)と「貧困」(読み方:ひんこん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「困窮」と「貧困」という言葉は、どちらも「貧しくて生活に苦しむこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
困窮と貧困の違い
困窮と貧困の意味の違い
困窮と貧困の違いを分かりやすく言うと、貧困よりも困窮の方が、貧しさや苦しさの程度が大きいという違いです。
困窮と貧困の使い方の違い
一つ目の困窮を使った分かりやすい例としては、「生活困窮者の自立支援制度を利用する」「長引く不況で経済的に困窮する」「誰もが生活困窮に陥る可能性がある」「戦時中は壮絶な困窮状態にありました」などがあります。
二つ目の貧困を使った分かりやすい例としては、「貧困の生活をする人々を救いたい」「富裕層と貧困層の格差が問題である」「貧困をなくそうはSDGsの目標のひとつである」「貧困な知識では立派な社会人になれないよ」などがあります。
困窮と貧困の使い分け方
困窮と貧困という言葉は、どちらも貧しくて生活に苦しむことを表しますが、度合いの違いがあります。困窮の「窮」には、苦しみの程度がこれ以上ないというほど強いという意味があり、貧困より「困窮」の方が、貧しさや苦しみの程度が強い場合に用いられます。
また、困窮には「万策尽きて困窮する」のように「困り果てること」の意味があり、貧困には「貧困な知識」のように「内容が乏しい」という意味があります。困窮と貧困には、それぞれ別の意味があることも、二つの言葉の明確な違いになります。
困窮と貧困の英語表記の違い
困窮を英語にすると「poverty」「distress」「misery」となり、例えば上記の「生活困窮者の自立支援」を英語にすると「self-support of needy person」となります。
一方、貧困を英語にすると「poor」「destitution」「indigence」となり、例えば上記の「貧困の生活をする」を英語にすると「live in destitution」となります。
困窮の意味
困窮とは
困窮とは、困り果てること、困り苦しむことを意味しています。
その他にも、貧しいために生活に苦しむことの意味も持っています。
表現方法は「困窮する」「困窮を極める」「生活が困窮」
「困窮する」「困窮を極める」「生活が困窮」などが、困窮を使った一般的な言い回しです。
困窮の使い方
「経済危機の対策に困窮する」「福祉施策は次第に困窮を極めるようになった」「学費が払えず困窮する大学生もいる」「事業継続のための万策尽きて困窮する」などの文中で使われている困窮は、「困り果てること」の意味で使われています。
一方、「困窮した家庭を訪問する」「生活が困窮する留学生からの相談が絶えない」「この自治体では困窮者支援事業を行っている」「経済的に困窮する学生が対象の給付金です」などの文中で使われている困窮は、「貧しいために生活に苦しむこと」の意味で使われています。
困窮の語源
困窮という言葉の「困」とは苦しむことや困ることを表し、「窮」とは行きづまることや身動きできないことを表します。困窮とは、どうして良いか分からず物事の処置に苦しむことを意味し、特に、貧乏で苦しむことを表現する言葉です。
「生活困窮者自立支援制度」の意味
困窮という言葉を用いた日本語には「生活困窮者自立支援制度」があり、生活困窮者に対し、福祉事務所設置自治体が自立相談支援事業や住宅確保給付金の支給などを行う制度のことです。生活保護が最後のセーフティーネットとされるのに対し、この制度は第二のセーフティーネットと言われています。
困窮の対義語
困窮の対義語・反対語としては、財産や収入がゆたかで生活に余裕があることを意味する「裕福」、財産を多く持っている人や財産家を意味する「金満家」などがあります。
困窮の類語
困窮の類語・類義語としては、貧しくて生活に苦しむことを意味する「貧窮」、金銭や物品が著しく不足して苦しむことを意味する「窮乏」、困り苦しむことを意味する「困苦」、不足や欠けた点があって困ることを意味する「不自由」などがあります。
貧困の意味
貧困とは
貧困とは、貧しくて生活に困っていることを意味しています。
その他にも、大切なものが欠けていることや、内容に乏しいことの意味も持っています。
表現方法は「貧困をなくす」「貧困生活」「貧困な発想」
「貧困をなくす」「貧困生活」「貧困な発想」などが、貧困を使った一般的な言い回しです。
貧困の使い方
「貧困な家庭で育ちました」「子どもの貧困問題を何とかしたい」「貧困女子のリアルを取材した記事だ」「日本は先進国の中で相対的貧困率が高い」「生活保護者を狙った貧困ビジネスが問題になっている」などの文中で使われている貧困は、「貧しくて生活に困っていること」の意味で使われています。
一方、「貧困な精神では豊かな人生は送れないぞ」「これでは解決方法が貧困だ」「寝不足で貧困な発想しか浮かばない」「その程度の貧困な知恵では難局を乗り越えられないだろう」などの文中で使われている貧困は、「内容に乏しいこと」の意味で使われています。
貧困という言葉は、上記の例文にあるように二つの意味があり、「貧乏で生活に困っていること」の意味で使われることが多いですが、「欠けて不足していること」の意味で使われることもあります。それぞれの意味で使われているので、文脈により意味を捉える必要があります。
「貧困ビジネス」の意味
貧困という言葉を用いた日本語には「貧困ビジネス」があり、経済的に困窮した人の弱みに付け込んで利益をあげる悪質な事業行為を意味します。具体的には、囲い屋による生活保護費の詐取や、医療受診の繰り返しによる薬剤の過剰入手などがあり、その手口は様々です。
貧困の対義語
貧困の対義語・反対語としては、財産が多くあって生活が豊かなことを意味する「富裕」、富んで豊かなことを意味する「富饒」、大金持ちや財産家を意味する「富豪」などがあります。
貧困の類語
貧困の類語・類義語としては、財産や収入が少なくて生活が苦しいことを意味する「貧乏」、きわめて貧しくて何も持っていないことを意味する「赤貧」、貧乏の苦しみを意味する「貧苦」、貧しくさむざむとしていることや中身が乏しいことを意味する「貧寒」などがあります。
困窮の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の処置に苦しむこと、特に貧乏に苦しむことを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある「困窮者」とは、収入や資産が少なく生活に困っている人を表す言葉です。例文5の「困窮を極める」とは、いよいよ行き詰まり、どうして良いか分からなくなっている様子を表し、 特に窮乏して非常に苦しい生活を送るさまを表現します。
貧困の例文
この言葉がよく使われる場面としては、貧乏で生活に困っていること、欠けて不足していることを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「貧困層」とは、正確には相対的貧困層と呼ばれ、厚生労働省が公表している相対的貧困率の算出方法から、等価可処分所得の中央値の半分に満たない世帯と定義付けられています。2016年に公表した「国民生活基礎調査」によると、日本の相対的貧困率は15.6%でした。
困窮と貧困という言葉は、どちらも貧しくて生活に苦しむことを表しますが、その度合いに違いがあります。どちらの言葉を使うか迷った場合、より貧しさや苦しさを強く表現したい時は「困窮」を使うようにしましょう。