【上げる】と【挙げる】と【揚げる】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

同じ「あげる」という読み方の「上げる」と「挙げる」と「揚げる」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「上げる」と「挙げる」と「揚げる」という言葉は同音の言葉ですが、意味は大きく異なりますのでご注意下さい。




「上げる」と「挙げる」と「揚げる」の違い

「上げる」と「挙げる」と「揚げる」の意味の違い

「上げる」と「挙げる」と「揚げる」の違いを分かりやすく言うと、「上げる」は物の位置を高いところに移す時に使い、「挙げる」は目立つように示す時に使い、「揚げる」は高く掲げる時に使うという違いです。

「上げる」と「挙げる」と「揚げる」の使い方の違い

「上げる」という言葉は、「先生に頭を上げてもらう」「今年もよろしくお願い申し上げます」などの使い方で、物の位置を高いところに移動させることなどを意味します。また、後者の例文のように敬語表現などの複合語としても使われます。

「挙げる」という言葉は、「生徒に手を挙げてもらう」「戦に備えて兵を挙げる」などの使い方で、目立たせたり広く知られるようにすることや、手元に収めることを意味します。

「揚げる」という言葉は、「祝日には国旗が揚げられる」「春巻きを揚げる」などの使い方で、高く掲げることや、高温の油で加熱調理を行うことを意味します。

「上げる」と「挙げる」と「揚げる」の使い分け方

「挙げる」と「揚げる」は、「手を挙げる」や「旗を揚げる」のように物を高い位置に移動させることは共通するものの、前者は目立つことに、後者は高く掲げることにそれぞれ重きを置いています。

そのため、「手を挙げる」行為は、手を真っすぐ高く挙げずに、顔の横の高さで挙げられることも含み、その手の位置は関係ありません。目立つか目立たないかが重視されているからです。

一方、「上げる」という言葉は、「挙げる」と「揚げる」では表現できない言葉に対して使います。特に、「上げる」は他の動詞と共に使って複合語を作ることができますが、「挙げる」と「揚げる」は複合語として使うことはできません。

ちなみに、「手を挙げる」という言葉を「手を上げる」という表記にした場合、手を目立つように上げることではなく、相手に乱暴を働くことや降参することを意味するようになり、同じ意味にはなりません。

これらが、「上げる」「挙げる」「揚げる」の明確な違いです。

「上げる」の意味

「上げる」とは

「上げる」とは、物の位置を低いところから高いところに移すことを意味しています。

表現方法は「声を上げる」「物を上げる」「ネットに上げる」

「声を上げる」「物を上げる」「ネットに上げる」「棚に上げる」などが、上げるを使った一般的な言い回しです。

他にも「上げる」を使った言葉として、「血道を上げる」「腕を上げる」があります。

「血道を上げる」の意味

一つ目の「血道を上げる」(読み方:ちみちをあげる)とは、色恋や趣味などに異常なほど夢中になることを意味する慣用表現です。頭に血を上げて、血の流れが速くなるほど興奮して夢中になることが由来となっています。

「腕を上げる」の意味

二つ目の「腕を上げる」とは、腕前や技術を向上させることを意味する慣用表現です。また、お酒が前よりも多く飲めるようになることも意味します。

「血道を上げる」「顔を上げる」などは物を高い位置に移動させる時に、「腕を上げる」「調子を上げる」などは上の状態へと程度を高める時に使いますが、「課題を仕上げる」「申し上げる」「作って上げる」など複合語や補助動詞としても使われます。

「上げる」の対義語

「上げる」の対義語・反対語としては、高いところから低いところに移すことを意味する「下げる」があります。

「上げる」の類語

「上げる」の類語・類義語としては、物の数量を増やすことを意味する「増加」、強くすることを意味する「強化」、より良い方向に向かうことを意味する「向上」、人に物を差し上げることを意味する「進呈」などがあります。

「挙げる」の意味

「挙げる」とは

「挙げる」とは、はっきりと分かるように示すことを意味しています。

「挙げる」を使った言葉として、「槍玉に挙げる」「星を挙げる」があります。

「槍玉に挙げる」の意味

一つ目の「槍玉に挙げる」とは、大勢の中から選び出した対象を攻撃や非難することを意味する慣用表現です。槍で突き刺した相手を掲げて勝利を示し、お手玉のように扱ったことから槍玉と言われるようになりました。

「星を挙げる」の意味

二つ目の「星を挙げる」とは、犯人や容疑者を捕まえて警察に連れていくことを意味する慣用表現です。この星は「犯人の目星」の略で、後々星自体が犯人を表す警察用語となりました。

表現方法は「手を挙げる」「例を挙げる」「意見を挙げる」

「槍玉に挙げる」「手を挙げる」などは目立つようにする時に使いますが、「例を挙げる」「意見を挙げる」のように表し示す時や、「結婚式を挙げる」などのイベント事を執り行う時にも使われます。

ただし、「星を挙げる」の「挙げる」は、検挙する時に使うため、星や犯人などの言葉にしか使うことができません。

「挙げる」の類語

「挙げる」の類語・類義語としては、並べて書き記すことを意味する「列記」、連ねて並べることを意味する「羅列」、実際に行うことを意味する「執行」、捕らえて縛ることを意味する「捕縛」などがあります。

「揚げる」の意味

「揚げる」とは

「揚げる」とは、人目につき広く知られるようになることを意味しています。その他にも、高温の油で加熱調理を行うことも意味します。

表現方法は「名を揚げる」「目標を揚げる」「油で揚げる」

「名を揚げる」「目標を揚げる」「油で揚げる」などが、揚げるを使った一般的な言い回しです。

上記以外の「揚げる」を使った言葉として、「得手に帆を揚げる」「一旗揚げる」があります。

「得手に帆を揚げる」の意味

一つ目の「得手に帆を揚げる」とは、自分の得意なことを行う絶好の機会に、それを逃さず利用して張り切ることを意味することわざで、江戸いろはかるたのうちの一枚でもあります。

当時の舟の動力は風だったため、風が吹いた時に帆を揚げて舟を動かしたことから由来して、この言葉が使われるようになりました。

「一旗揚げる」の意味

二つ目の「一旗揚げる」とは、新しく事業を始め、成功を目指すことを意味する慣用表現です。

日本の武士たちは、戦いにおいて自分たちの手柄を立てるために家紋などが描かれた旗を揚げて戦に向かいました。そして、いざ敵を倒したり、敵の拠点を陥落させた時、自分たちの旗をそこに立てて、勝利を示したことから使われるようになりました。

「揚げる」の対義語

「揚げる」の対義語・反対語としては、掲げたものを取り外すことや陸から水面に物を移すことを意味する「降ろす」があります。

「揚げる」の類語

「揚げる」の類語・類義語としては、人目につく高いところへ上げることを意味する「掲げる」、持ち上げることや起こすことを意味する「擡げる」(読み方:もたげる)があります。

「上げる」の例文

1.子どもにお小遣いの額を上げてほしいと頼まれた。
2.宿題に手を付けずに遊んでいた息子が、ようやく重い腰を上げて取り組み始めた。
3.彼は自分のことは棚に上げて、他人を非難することが多い。
4.仕事に追われている時はちょっとだけドライブして、大好きな歌を大声で歌い気分を上げてから取り組むことにしている。
5.放課後好きな人とばったり会ってしまったのだが、顔が真っ赤になっていくのがわかっていたので、はずかしくて顔を上げることができなかったのだ。
6.大御所のお笑い芸人が、後輩芸人に「お前腕を上げたな」と言うギャグをいって観客を湧かしていたが、後輩芸人としてもこれ以上の賛辞はないだろう。
7.経営者の友人いわく、ビジネスとはただ単に利益を上げることばかり考えていたらいけないというところがとても難しく、また探求し甲斐があるというものだよということだそうだ。

この言葉がよく使われる場面としては、物の位置を低いところから高いところに移すことを意味する時などが挙げられます。

例文2の「腰を上げる」とは、座っている人が立ち上がることから、行動を起こすことや、やる気になることを意味する慣用表現です。

例文3の「棚に上げる」とは、不都合なことには触れないでおくことを意味する慣用表現です。

「挙げる」の例文

1.オリンピックの期間中は、世を挙げてのお祭り気分となるだろう。
2.皆と変わった行動をしていたらいつの間にか槍玉に挙げられるかもしれない。
3.文化祭で芸能人をゲストとして呼ぶことが決定した時諸手を挙げて喜んだ。
4.大安の日は結婚式を挙げる人も多いが、お店の開業や引越し、新車の納品や宝くじ購入にも良いとされている。
5.授業では手を挙げる生徒が少なかったので、なんとかしようとクイズ番組の早押しボタンのような装置を設置したところ、生徒たちは積極的に意見を発するようになった。
6.3億円事件では、警察がローラ作戦でもって星を挙げることに全力だったにも拘わらず、結局犯人を見つけることはできずに時効を迎えてしまった。
7.ディベートの議論の途中で、わたしは例を挙げるとするならばといって思考を巡らせていたが、うまい例が思い浮かばずに相手に隙きを与えてしまった。

この言葉がよく使われる場面としては、目立つようはっきりと示すことを意味する時などが挙げられます。

例文1の「世を挙げて」とは、世の中の人が全員ということを意味する慣用表現です。

例文2の「槍玉に挙げる」(読み方:やりだまにあげる)とは、非難や攻撃の目標にして責めることを意味する慣用表現です。

例文3の「諸手を挙げる」とは、積極的に歓迎する様子を意味する慣用表現です。

「揚げる」の例文

1.揚げ物は美味しいと思うが、毎度油の処理をするのが面倒でならない。
2.酒を飲んだ彼はいつも次のプロジェクトに関して気炎を揚げて飲み会を締めくくる。
3.地方でひっそり営業するのではなく、いっそのこと都会で一旗揚げることも考えたことがある。
4.この河川敷の広場は風も強すぎず、障害となるような高い木も生えておらず、一年を通して凧を揚げて遊ぶ人の姿がよく見られる。
5.わたしの誕生日では友達がシャンパンを持ってきてくれたので、せっかくだから乾杯しようと言ってわたしたちはグラスを揚げて乾杯した。
6.料理好きの友人が、天ぷらは揚げたてが一番美味しいと言ってわざわざフライヤーを用意してその場で天ぷら料理を振る舞ってくれた。
7.定年退職をした男はセカンドライフで一旗揚げようとして、なにやら商売をしようとしているが、妻は内心やめたほうがいいと思っていたようだ。

この言葉がよく使われる場面としては、物を高く掲げることや高温の油で加熱調理をすることを意味する時などが挙げられます。

例文2の「気炎を揚げる」とは、威勢のいいことを言うことや、燃え上がるように盛り上がることを意味する慣用表現です。

例文3の「一旗揚げる」とは、新しい事業を起こすことを意味する慣用表現です。

「上げる」と「挙げる」と「揚げる」どれを使うか迷った場合は、物の位置を高いところに移すことを表す場合は「上げる」を、目立つよう示すことを表す場合は「挙げる」を、高く掲げることを表す場合は「揚げる」を使うと覚えておけば間違いありません。

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