同じ「じつじょう」という読み方の「実情」と「実状」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「実情」と「実状」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
実情と実状の違い
実情と実状の意味の違い
実情と実状の違いを分かりやすく言うと、実情とは内面的な事情を表し、実状とは外面的な状況を表すという違いです。
実情と実状の使い方の違い
一つ目の実情を使った分かりやすい例としては、「苦しい生産者の実情を知って欲しい」「被災地の実情に合わせて取材を控える」「地域の実情を踏まえた判断を求める」「家庭の事情に応じてサポートする」「パートナーに実情を尽くす」などがあります。
二つ目の実状を使った分かりやすい例としては、「全く作業が進んでいないのが実状である」「村民が被害の実状を訴える」「現場の実状を県は把握していなかった」「医師会はX線撮影の実状調査を行った」などがあります。
実情と実状の使い分け方
実情と実状という言葉は、どちらも「じつじょう」と読み、物事に関する実際の事情や情況という共通する意味を持ちます。同音同義語の二つの言葉ですが、詳しくみると違いが二点あります。
一点目は、実情という言葉は「偽りのない心情、真心」という意味も持っていることです。上記の例文にある「パートナーに実情を尽くす」は、この意味で使われれいるため、実情を実状に置き換えることは出来ません。
二点目は、ニュアンスの違いです。二つの言葉の相異点となる「情」と「状」に注目すると、「情」とは人の心の動きや物事の実際のありさまを表し、「状」とは物の形や姿を現します。このことから、実情は内面的な事情の意味合いが強く、実状は外面的な状況の意味合いが強いと言えるでしょう。
二つの言葉の共通する「実際の事情や情況」という意味では、どちらの漢字を使っても間違いではありませんが、正しくニュアンスを伝えたい時には、内面的か外面的かの観点で使い分けると良いでしょう。
実情と実状の英語表記の違い
実情も実状も英語にすると「real condition」「actual condition」「actual circumstances」となり、例えば上記の「実情を知っている」を英語にすると「know the actual circumstances」となります。
実情の意味
実情とは
実情とは、物事の実際の事情や情況を意味しています。
その他にも、偽りのない心情や真心の意味も持っています。
表現方法は「実情に合わせて」「実情に応じて」「実情にそぐわない」
「実情に合わせて」「実情に応じて」「実情にそぐわない」「実情に沿う」などが、実情を使った一般的な言い回しです。
実情の使い方
「地域の実情に応じた在宅医療を推進する」「実情に即する救済措置を求めます」「竜巻被害の実情報告に関する記者会見が開かれた」「実情に沿う法整備が求められている」「実情にそぐわない感染対策ではないか」などの文中で使われている実情は、「物事の実際の事情」の意味で使われています。
一方、「些細なことに実情を尽くす」「彼女は私にだけ実情を吐露してくれた」「実情あふれる手紙であった」などの文中で使われている実情は、「偽りのない心情や真心」の意味で使われています。
実情という言葉のには二つの意味がありますが、「物事の実際の事情」の意味で使われることの多い言葉です。「実」とは本当の事柄を表し、「情」とは物事に感じて起こる心の動きや気持ち、物事の実際のありさまを表します。
実情の対義語
実情の対義語・反対語としては、内実とは違った見せかけのようすや事情を意味する「上辺」、本来の趣旨や本来の目的を意味する「本旨」、誠実でないことや事実でないことを意味する「不実」などがあります。
実情の類語
実情の類語・類義語としては、ありのままの姿や実際のありさまを意味する「実相」、うそ偽りのない気持ちを意味する「真情」、偽りのない心を意味する「誠心」、私利私欲を離れて正直に熱心に事にあたる心を意味する「誠意」などがあります。
実状の意味
実状とは
実状とは、物事の実際の事情や情況を意味しています。
表現方法は「実状に即す」「実状を知る」「実状を伝える」
「実状に即す」「実状を知る」「実状を伝える」などが、実状を使った一般的な言い回しです。
実状の使い方
実状を使った分かりやすい例としては、「住民には被害の実状が伝わっていなかった」「戦争の実状を伝えることが私の使命です」「悲惨な実状を前に動くことができなかった」「地方の実情に即する子育て支援事業です」などがあります。
その他にも、「現場の実状を上層部に報告する」「お客様の実状に見合ったシステムを構築する」「早急に水害の実状を把握して欲しい」「事前情報と実状況の差が大きい」「理学療法士の実状を先輩に聞く」などがあります。
実状という言葉は、実際のありさま、ありのままの事情や状況を意味します。実状の「状」という漢字は、物の形や姿、物事の様子を表します。
「被害の実状」の意味
上記の例文の「被害の実状」とは、推測ではない被害のありさまをや、実際の被害状況のことです。
実状の対義語
実状の対義語・反対語としては、外側から見た感じや見かけを意味する「外観」、外から見た様子や感じを意味する「見た目」などがあります。
実状の類語
実状の類語・類義語としては、物事がある状態に至るまでの理由や状態を意味する「事情」、実際の状態や本当のありさまを意味する「実態」、現実のありのままの姿や実際の状況を意味する「実況」などがあります。
実情の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ありのままの事情や状況、真実の心情や真心を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4で使われている実情は「ありのままの事情や状況」を意味し、例文5にある実状は「真実の心情や真心」を意味します。例文2にある「実情にそぐわない」とは、実情に相応しくないこと、実情に合ってないことを表します。
実状の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の実際の事情や情況を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「実状調査」とは、実際のありさまや状況を明らかにする目的で行われる調査のことです。例文3の「実状に即する」や例文5の「実状に応じる」とは、実際の状況に適合することや、実際の状況に相応しく対応することを意味します。
実情と実状という言葉は、どちらも「じつじょう」と読み、物事に関する実際の事情や情況を表す同音同義語の言葉です。どちらを使っても構いませんが、実情は内面的な事情の意味合いが強く、実状は外面的な状況の意味合いが強いことを覚えておきましょう。