同じ「じったい」という読み方の「実態」と「実体」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「実態」と「実体」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
実態と実体の違い
実態と実体の意味の違い
実態と実体の違いを分かりやすく言うと、実態とは実際の状態を意味し、実体とは本当の姿や正体を意味するという違いです。
実態と実体の使い方の違い
一つ目の実態を使った分かりやすい例としては、「春闘前に賃金の実態を把握する必要がある」「実態を反映していない統計だ」「海洋汚染の実態や汚染物質の調査を進める」「感染者の実態をリアルに伝えている」などがあります。
二つ目の実体を使った分かりやすい例としては、「教育現場で実体のある改革が求められている」「ネットの情報で虐待加害者の実体を知る」「実体配線図をフリーハンドで書いてみる」「水に溶けた砂糖を実体的に捉える」「スピノザの実体論を批判する」などがあります。
実態と実体という言葉は、どちらも「じったい」と読む同音異義語です。「経営の実態」「経営の実体」などと、同じような表現をすることがあるので混同して使われますが、意味は異なるので注意が必要です。
実態と実体の使い分け方
実態とは、実際の状態や本当のありさまを意味します。一般に言われていることやではない、ある事柄に関する実際のありさまを表す言葉です。「経営の実態」とは、経営に関する収支や人材あるいは商品やサービスの管理などの状況などを意味します。
実体とは、物事の本当の姿や正体を意味します。「経営の実体」とは、経営している会社そのものを表しますが、「経営の実体は反社会的勢力だった」となると、隠されていた本当の組織を意味します。また、実体は、哲学用語として、変化する事物の根底にある本質的なものの意味も持っています。
実態と実体の英語表記の違い
実態を英語にすると「true state」「actual condition」となり、例えば上記の「賃金の実態」を英語にすると「current situation regarding wages」となります。
一方、実体を英語にすると「entity」「substance」となり、例えば上記の「実体のある改革」を英語にすると「substantive reform」となります。
実態の意味
実態とは
実態とは、実際の状態、本当のありさまを意味しています。
表現方法は「実態として」「実態に合った」「実態を調べる」
「実態として」「実態に合った」「実態を調べる」などが、実態を使った一般的な言い回しです。
実態の使い方
実態を使った分かりやすい例としては、「テレワークの実態調査に協力する」「実態の明らかでない組織である」「組織の実態を調べる」「教育委員会がいじめの実態を把握する」「これが今の小学生の実態だ」などがあります。
その他にも、「子どもの貧困の実態を知る」「ホームレスの実態に関する報告書です」「高齢者の生活実態調査が行われた」「下請事業者との取引実態について説明する」「虐待の実態を捉えた映像が見つかった」などがあります。
実態という言葉は、文字通り「実際の状態」と意味します。実際のありさまが、一般に言われていることや外見からうかがい知れることと違っている場合に使われることが多い言葉です。実態の「実」は作りごとではない本当の事柄を、「態」は様子やありさまを表します。
「実態調査」の意味
実態という言葉を用いた日本語には「実態調査」があり、ある物事の実態や動向などを実際にどうなっているのか明確にするために調べることを意味します。例えば「高齢者の生活実態調査」とは、高齢者の生活状況を明らかにする目的で、アンケートやインタビューなどを行います。
「実態に則した」は誤り
実態を用いた誤った言い回しには「実態に則した」があります。正しくは「実態に即した」であり、実際の状態に合わせること、対応することを意味します。「則」は基準に従うこと、「即」は適合させること、という違いがあります。
実態の対義語
実態の対義語・反対語としては、現実には存在しない事柄を心の中に思い描くことを意味する「想像」、ある事柄をもとにして推量することを意味する「推測」、事実ではないことを事実らしくつくり上げることを意味する「虚構」などがあります。
実態の類語
実態の類語・類義語としては、物事の実際の事情や情況を意味する「実情」、物事がある状態に至るまでの理由や状態を意味する「事情」、素姓がわからない物や人の真実の姿を意味する「得体」、物事のあるがままの状態を意味する「実際」などがあります。
実体の意味
実体とは
実体とは、そのものの本当の姿、実質を意味しています。
その他にも、哲学で、多様に変化してゆく物の根底にある持続的、自己同一的なものの意味も持っています。
実体の読み方
実体の読み方は「じったい」のほかに「じってい」がありますが、意味は異なります。「じってい」と読む場合は、「まじめで正直なこと」の意味になりますので注意しましょう。
表現方法は「実体のある」「実体を持つ」「実体を持たない」
「実体のある」「実体を持つ」「実体を持たない」などが、実体を使った一般的な言い回しです。
実体の使い方
「実体のない電子マネーが普及している」「謎の生物の実体を掴む」「新しい実体顕微鏡で昆虫を観察する」「憲法は実体法と手続法の両者を含む」「ネットの情報で虐待加害者の実体を知る」などの文中で使われている実体は、「そのものの本当の姿」の意味で使われています。
一方、「アリストテレスの実体論について講義を受ける」「部落問題は差別意識を実体化したものだ」「実体概念から関数概念へと発展した」「個体を本来的な第一実体とする」などの文中で使われている実体は、「根底にある持続的、自己同一的なもの」の意味で使われています。
実体という言葉は、上記の例文にあるように二つの意味があります。一般的には、「そのものの本当の姿」の意味で使われており、正体という言葉に置き換えることもできます。また、哲学用語として、「多様に変化してゆく物の根底にある持続的、自己同一的なもの」の意味も持っています。
「実体顕微鏡」の意味
上記の例文にある「実体顕微鏡」とは、観察対象をそのままの形で観察するための顕微鏡のことです。比較的低倍率で、観察対象を薄切標本などにせず、顕微鏡観察を行いながら解剖などの作業する場合などにも使われています。
「実体参照」の意味
実体という言葉を用いた日本語には「実体参照」があり、プログラミング言語のXMLにおいて、ある文字や記号を表示する際に、特定の文字列で指定することを意味します。誤って「実態参照」と表記されることがありますが、正しくは「実体参照」です。
「実体化」の意味
実体という言葉を用いた哲学用語には「実体化」があります。実体化とは、概念的なもの、抽象的なもの、観念的なものを独立の実在として具体化することを意味します。たとえば、普遍概念を独立の存在とする中世の実念論の考え方などを指します。
実体の対義語
実体の対義語・反対語としては、形だけで実質の伴わないことを意味する「形式」、外から見た形や見かけを意味する「外形」、ある事物に属する性質や特徴を意味する「属性」などがあります。
実体の類語
実体の類語・類義語としては、物事の根本的な性質やそのものの本来の姿を意味する「本質」、そのものの本当の姿や正体を意味する「本体」、ある物事の真実の姿や事件などの本当の内容を意味する「真相」などがあります。
実態の例文
この言葉がよく使われる場面としては、実際の状態、本当のありさまを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「食品ロスの実態」とは、まだ食べられるのに廃棄される食品に関する実際の状況を意味します。具体的には、どこから、どんなものが、どれだけの量、排出されているのかなどのありさまのことです。
実体の例文
この言葉がよく使われる場面としては、事物の本体や正体、哲学で同一性を保って自存するものを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある実体は事物の本体や正体を意味します。例文1にある「実体経済」とは、商品やサービスの生産・販売や設備投資など、具体的な金銭対価が伴う経済活動を意味し、「金融経済」「資産経済」と対比して使われる言葉です。
例文3から例文5にある実体は哲学用語として使われています。
実態と実体という言葉は、どちらも「じったい」と読みますが、意味が異なります。どちらを使うか迷った場合、実際の状態や本当のありさまを表現したい時は「実態」を、そのものの本当の姿や実質を表現したい時は「実体」を用いれば間違いないでしょう。