同じ「あらい」という読み方、似た意味を持つ「荒い」と「粗い」の違いと使い方を分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、このページの使い分け方を参考にしてみて下さい。
「荒い」と「粗い」という言葉は同音異義語で、本来の意味は少し違いますが混同して使用される傾向があります。
「荒い」と「粗い」の違い
「荒い」と「粗い」の意味の違い
荒いと粗いの違いを分かりやすく言うと、荒いとは激しい動きや部屋などが整頓されていないことを意味していて、粗いとは大雑把であることや隙間が大きく触ったときにざらざらすることを意味するという違いです。
「荒い」と「粗い」の使い分け方
一つ目の「荒い」とは「激しさ」という意味合いを持った言葉で、生き物の言動や自然現象に対して使われます。例えば「息が荒い」「荒っぽい言動」「荒波に乗る」というような使い方をされます。
荒いという言葉が表現する激しさとは「威圧感を与えるような激しさ」です。荒っぽい言動は、周囲の人に居心地の悪さや不快感を感じさせますし、荒波は恐怖感を与えるものです。
また荒いという言葉には「整っていない」という意味合いも含まれます。息が荒い人は、呼吸を整える必要があることを想像すれば、このことは分かりやすくなります。
この「整っていない」という意味が強く出た使われ方としては、例えば「荒れ果てた大地」「荒れ放題の庭」のような表現を考えてみて下さい。また「荒れた街」とは、「秩序が整っていない、乱れている」ことを意味しています。
二つ目の「粗い」とは「隙間が大きすぎる」ことを意味する言葉です。「粗い目の網」は、穴のような網目の網を指し示しています。そこから転じて「内容に穴がある」という意味の「大雑把」や、「手触りがざらざらしている」等を表現するためにも使われます。
「粗のある計画」や「きめの粗いタオル」のように使われます。荒いは物の動きや場の状況を指し示す言葉ですが、「粗い」は「物の特徴」を指し示しています。
「仕事が荒い」と「仕事が粗い」の違い
荒いと粗いの使い分けで困った場合には、表現しようとしている物の動きの激しさに着目してみて下さい。例えば「仕事があらい」は「荒い」とも「粗い」とも表記出来ますが、表現しようとしている状況に応じて使い分けられます。
「仕事が荒い」と書けば力任せにやっているということで、「仕事が粗い」と書けば要求されている水準を下回る雑な仕事ということです。
「荒い」の意味
「荒い」とは
荒いとは、動きの激しさや秩序のない状況を意味しています。
表現方法は「呼吸が荒い」「言動が荒い」「口調が荒い」
「呼吸が荒い」「言動が荒い」「口調が荒い」などが、荒いを使った一般的な言い回しです。
「荒い」の使い方
「荒い」という言葉は「正常な状態を逸した良くない状態」という意味合いを持ちます。「荒い呼吸」や「荒れた空模様」という言葉は、普段は落ち着いているものが乱れて、良くない状況になっているという意味合いを持ちます。
「常軌を逸した状況」という意味合いが「荒い」には含まれています。「金使いが荒い」と言えば常軌を逸した浪費をしていることが、「人使いが荒い」と言えば人の使い方が尋常ではないことを表現しています。
また、「荒い」という言葉が使われる時、多かれ少なかれ「人の心をざわつかせるような状況」が念頭に置かれています。「荒れた議論」の時には議場はざわついているものです。
「荒い」の対義語
荒いの対義語・反対語としては、落ち着いていて静かであることを意味する「穏やか」、気持ち穏やかであることを意味する「安穏」、性格が穏やかでやさしいことを意味する「温厚」などがあります。
「荒い」の類語
荒いの類語・類義語としては行動や考えなど世間の常識を逸脱していて激しいことを意味する「過激」、程度が甚だしいことを意味する「凄まじい」、文化的・文明的でなく荒っぽいことを意味する「野蛮」などがあります。
荒いの荒の字を使った別の言葉としては、荒れた大地を意味する「荒野」、荒れ果ててさびしいことを意味する「荒涼」「荒漠」、激しい悪天候を意味する「荒天」などがあります。
「粗い」の意味
「粗い」とは
粗いとは、物事が細やかさや丁寧さに欠けることを意味しています。荒いが状況を指し示す言葉であるのに対して、「粗い」は「物の特徴」を指し示す言葉です。
表現方法は「画質が粗い」「縫い目が粗い」「仕事が粗い」
「画質が粗い」「縫い目が粗い」「仕事が粗い」などが、粗いを使った一般的な言い回しです。
「粗い」の使い方
「粗」という字は、「一緒にあるべき二つ以上のものがくっついていない、離れている」という意味合いを持つ言葉です。「網の目が粗い」と言われるのは、網と網が密接していなく離れ離れになっている網のことです。
金網などは、粗い目のものほど手触りがざらざらしています。そうした繋がりから、「ざらざらした手触り」のことも「粗い」と表現することが出来ます。「ざらざらした壁紙」や「ざらざらした肌触りのタオル」などのように使われます。
そうした網の様子が、まるで穴が開いているようであるとイメージ出来るなら、「穴のある計画」、つまり緻密でない計画のことを「粗のある計画」と表現出来ることも納得が出来るようになります。
「粗い」の対義語
粗いの粗の対義語・反対語としては、隙間なくみっしりと詰まっていることを意味する「密」、細かいことや詳しいことを意味する「精」などがあります。細かいところにまで注意が行き届いていること、寸分の狂いもないことを意味する「精密」という言葉もあります。
「粗い」の類語
粗いの類語・類義語としては、大まかでいい加減なことを意味する「雑」、洗練されていないことを意味する「粗削り」、投げやりな様子を意味する「いい加減」などがあります。
粗いの粗の字を使った別の言葉としては、言動に洗練されているところがなく下品であることを意味する「粗野」、乱暴で荒々しいことを意味する「粗暴」、家具や家電製品などの廃品を意味する「粗大塵」などがあります。
「荒い」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、動きが激しく尋常ではないことや、場の状況に秩序がないことを表現したい時などが挙げられます。物の持つある特徴を指し示す粗いとは異なり、「荒い」は激しい動きや状況を指し示す言葉です。
「荒れ果てた土地」という言葉は動きを表現してはいないですが、「尋常ではない」という意味で「荒い」という言葉が使われています。ただし「荒れた学校」だったら「秩序が乱れている」という意味で、ある意味では「激しい動き」を表現していると言えます。
荒いと粗いの使い分けに困った場合には、まずは動きの激しさに注目してみて下さい。動いているという意味合いを持つのは荒いで、粗いにはそのような意味はありません。
「粗い」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、細やかさがないことを表現したい時などが挙げられます。「粗い」という言葉は写真や画像の画質に対して使われることの多くなって来ている言葉です。「画質が荒い」という表現をよく見かけますが、正しくない表現です。
荒いが動きや状況などを指し示すのに対して、粗いは物の特徴を表現する言葉だということをポイントとして押さえておくことで、混乱することが少なくなります。ただし、中にはどちらの「あらい」も使うことの出来る言葉もあります。
例えば「荒れた議論」は、話し合いが紛糾し、ざわついているという状況を表現し、「粗い議論」は、下手な議論であることを表現しています。このように紛らわしい場合があるので、意味の違いをしっかりと理解しておくようにしましょう。