似た意味を持つ「支障」(読み方:ししょう)と「影響」(読み方:えいきょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「支障」と「影響」という言葉は、どちらもを「他に働きを及ぼすこと」意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
支障と影響の違い
支障と影響の意味の違い
支障と影響の違いを分かりやすく言うと、支障とは悪い作用のみを表し、影響とは悪い作用だけでなく良い作用も表すという違いです。
支障と影響の使い方の違い
一つ目の支障を使った分かりやすい例としては、「日常生活を支障なく送れる程度の軽症です」「体に支障をきたす激務であった」「筋肉痛でプレーに支障が出る」「通行の支障物件を取り除く」「荒天で大会運営に支障が生じる」などがあります。
二つ目の影響を使った分かりやすい例としては、「大量の放射線は有害な影響があります」「英語力が合否に影響する」「英語の発音は教師の影響を受ける」「品行方正な友人に良い影響を受ける」などがあります。
支障と影響の使い分け方
支障と影響という言葉は、どちらも人や物事に何かを及ぼすことを表し、似た表現する言葉ですが、意味や使い方には違いがあります。
支障とは、何か物事を行う上で何らかの差し支えや、妨げがあることを意味します。「体に支障をきたす激務」「筋肉痛でプレーに支障が出る」のように、悪い作用である場合に用いられる言葉です。良い意味で使われることはありません。
影響とは、物事の存在や働きが他のものにまで及ぶことを意味します。「放射線は有害な影響があります」のように悪い作用である場合にも、「品行方正な友人に良い影響を受ける」のように良い作用である場合にも用いられています。
つまり、支障はネガティブな作用を表しますが、影響はネガティブな作用もポジティブな作用も表す、という点が二つの言葉の違いになります。
支障と影響の英語表記の違い
支障を英語にすると「problem」「hindrance」「obstacle」となり、例えば上記の「支障なく」を英語にすると「without hindrance」となります。
一方、影響を英語にすると「effect」「influence」「impact」となり、例えば上記の「有害な影響」を英語にすると「pernicious influence」となります。
支障の意味
支障とは
支障とは、差し支え、差し障りを意味しています。
支障の使い方
支障を使った分かりやすい例としては、「腰が痛くて動作に支障がある」「業務遂行に支障がないよう配慮する」「システム障害で取引に支障が生じる」「勉強に支障が出るほどの騒音だ」「子どもの成長に支障をきたす恐れがある」などがあります。
その他にも、「御社の業務に支障を来すことになりお詫び申し上げます」「副業を始めて本業に支障が出る」「中途半端な英語力はコミュニケーションに支障を来す」「学業に支障がない範囲で遊びなさい」などがあります。
支障とは、物事に取り組むうえで、何かしらの問題があったり不都合があったりすることを意味します。支障の「支」は、突き当たって先へは進めない状態を表し、「障」は物事の遂行を邪魔することを表す漢字です。日常生活やビジネスシーンだけでなく、法律の文言でも用いられています。
「支障をきたす」「支障を来す」の意味
上記の例文にある「支障をきたす」「支障を来す」とは、差し障りのある状態をもたらすこと、都合の悪いことが生じることを表す言い回しです。「来す」とは、結果として、ある事柄や状態を生じさせることを意味します。
表現方法は「支障が出る」「支障ない」「支障がある」
「支障が出る」「支障ない」「支障がある」などが、支障を使った一般的な言い回しです。
支障の対義語
支障の対義語・反対語としては、物事が調子よく運ぶことを意味する「順調」、素晴らしく物事の調子がよいことを意味する「快調」、物事が思いどおりにうまくいくことを意味する「好調」などがあります。
支障の類語
支障の類語・類義語としては、いろいろの不都合な事情や種々の故障や差し支えを意味する「万障」、さまざまの困難やあらゆる障害を意味する「万難」、物事の進行が損なわれるような事情を意味する「故障」などがあります。
影響の意味
影響とは
影響とは、物事の力や作用が他のものにまで及ぶことを意味しています。
その他にも、「影と響き、また、物事の関係が密接なこと」の意味も持っています。
表現方法は「影響する」「影響を及ぼす」「影響が生じる」
「影響する」「影響を及ぼす」「影響が生じる」などが、影響を使った一般的な言い回しです。
影響の使い方
「影響力のある女性には共通する特徴があります」「影響力の武器を要約する」「英語活動が子供の脳に影響を与える」「環境の変化が生活に影響を及ぼす」などの文中で使われている影響は、「物事の力や作用が他のものにまで及ぶこと」の意味で使われています。
一方、「影響のような関係にある母娘だ」「中国王朝と朝鮮三国の影響を考える」「審査と限度額への影響について教えてください」などの文中で使われている影響は、「物事の関係が密接なこと」の意味で使われています。
影響の使い分け方
影響とは、上記のにあるように複数の意味がありますが、一般的には「物事の力や作用が他のものにまで及ぶこと」の意味で用いられています。文脈により、良い意味にも悪い意味にもなる言葉です。
影響という言葉の語源は、影が形に従い、響きが音に応ずるように、関係が密接であり速やかに反応することにあります。また、「影」と「響き」そのものの意味も持ちますが、この意味で使われることは殆どありません。
「影響力の武器」の意味
上記の例文にある「影響力の武器」とは、アメリカを代表する社会心理学者ロバート・チャルディーニが提唱する心理学に基づいたアプローチ方法をまとめた著書です。人は他者からどのような影響を受け、他人の望む行動をとるようになるのかなどを説いています。
「社会的影響」の意味
影響という言葉を用いた日本語には「社会的影響」があります。人の態度や認知行動が、他者の存在や他者や組織からの働きかけによって変化することを意味します。「社会的影響力のある人」「ネットの発信力は社会的影響が大きい」などと表現します。
影響の対義語
影響の対義語・反対語としては、ある状態や変化を引き起こすもとになることを意味する「原因」、物事の始まりや事の起こりを意味する「発端」などがあります。
影響の類語
影響の類語・類義語としては、他のものに力を及ぼして影響を与えることを意味する「作用」、考え方や行動に影響を与えて自然にそれを変えさせることを意味する「感化」、ある働きかけによって現れる望ましい結果を意味する「効果」などがあります。
支障の例文
この言葉がよく使われる場面としては、差し障ること、差し支えを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「支障が出る」とは、ある物事を行う上で不都合があるさまを意味します。「支障を来す」「支障をきたす」と言い換えることが出来ます。
影響の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他に働きを及ぼして反応や変化を起こさせること、響きが音に応ずるように関係が密接であることを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「影響を及ぼす」と例文3にある「影響を与える」は、ある人や物事に変化をもたらすことを表します。ほぼ同じ意味の言い回しですが、「影響を及ぼす」の方が、かしこまった印象になります。
支障と影響という言葉は、どちらも他の物事に何かを及ぼすことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、差し障ることを表現したい時は「支障」を、他に反応や変化を起こさせることを表現したい時は「影響」を使うようにしましょう。