【燃やす】と【焼く】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「燃やす」(読み方:もやす)と「焼く」(読み方:やく)の違いを例文を使ってを分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、このページの使い分け方を参考にしてみて下さい。

「燃やす」と「焼く」という言葉は、どちらも物を火にかけることを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使用される傾向があります。




「燃やす」と「焼く」の違い

「燃やす」と「焼く」の意味の違い

燃やすと焼くの違いを分かりやすく言うと、燃やすとは火が立っている状態にすることを意味していて、焼くとは熱によって加工する・変質させることを意味しているという違いです。

「燃焼」(読み方:ねんしょう)という言葉があるように、燃やすと焼くは同じようなものとして理解される傾向がある言葉ですし、実際に二つの言葉が同じ状況を意味することがあります。

「落ち葉を燃やす」と「落ち葉を焼く」は言い換え可能

例えば「庭の落ち葉を焼く」は「庭の落ち葉を燃やす」と言い換えることが出来ます。また「家を焼く」も「家を燃やす」と表現することも出来ます。このような例から分かるように、「灰にする」という意味では「燃やす」も「焼く」も使うことが出来ます。

ですが「燃え盛る炎」という表現から分かるように、「火が立つ」という描写をすることが出来るのは「燃やす」の方だけです。「ロウソクの火が燃える」とは言えますが、同じことを「焼ける」を使って表現することは出来ません。

「燃やす」と「焼く」の使い分け方

「枯れ草を燃やす」も「枯れ草を焼く」も同じ状況を表現していますが、「火が立つ」ことを念頭に置いているのは「燃やす」だけです。

他方で「焼く」にも独自の意味があります。それは「熱によって加工する、変質させる」という意味です。「魚を焼く」は熱を通して食べられる状態にするという意味です。「魚を燃やす」と言ってしまえば、それは灰にすることを意味しています。

「焼く」という言葉は「光の持つ熱によって加工する、変質させる」場合にも使われます。例えば「海で肌を焼く」というのは、火中に身を投じたわけではなく、太陽の光に晒されて肌を黒くすることを意味しています。

「燃やす」の意味

「燃やす」とは

燃やすとは、火や炎を立てて灰にすること、感情を高ぶらせることを意味しています。

表現方法は「闘志を燃やす」「意欲を燃やす」「ごみを燃やす」

「闘志を燃やす」「意欲を燃やす」「ごみを燃やす」などが、燃やすを使った一般的な言い回しです。

「燃やす」の使い方

「燃やす」という言葉が持つ独自の意味は「火を立てる」ことです。「火柱」という形を描写するのが「燃やす」という言葉です。灰にするという意味は、燃やすだけでなく焼くでも表現することが出来ます。

「失火で家を燃やす」は「家を焼く」と表現することも出来ます。どちらも「家を灰にする」という意味ですが、炎が家を包むように立ち上がっていることを描写しているのは燃やすの方だけです。

また「燃える闘志」「観客の興奮で場内が燃え上がる」「敵対心を燃やす」などのように、「燃やす」は「感情を高ぶらせる」という意味で使われることもあります。これらのことを表現するのに焼くという言葉を使うことは出来ません。

感情や意欲などが高ぶることに「燃える」という言葉が使われているのは、それが燃え盛る炎を連想させるからです。なので焼くという言葉を使うことが出来ないのです。

「燃やす」の対義語

燃やすの対義語・反対語としては、燃えている物をこれ以上燃えないようにすることを意味する「消す」などがあります。

「燃やす」の類語

燃やすの類語・類義語としては、明るくするための火や電気など光源になるものを働かせることを意味する「点ける」、明かりをつけることを意味する「灯す」などがあります。

燃やすの燃の字を使った別の言葉としては、ガソリンや灯油など、エネルギーを発生させるための材料となるものを意味する「燃料」、燃やして廃棄が出来ることを意味する「可燃」、車などが一定の距離をどの程度の燃料で走れるかを示す指標である「燃費」などがあります。

「焼く」の意味

「焼く」とは

焼くとは、熱の働きで別の状態にすること、あれこれと気を揉むことを意味しています。

表現方法は「手を焼く」「世話を焼く」「木を焼く」

「手を焼く」「世話を焼く」「木を焼く」などが、焼くを使った一般的な言い回しです。

「焼く」の使い方

「焼く」は「熱作用で別の状態に変える、加工する」という意味で使われ、この意味の時には「灰にする」の意味は無くなります。焼き鳥、焼きうどん、焼き芋など、多くの料理名に「熱で加工する」という意味の「焼く」という言葉が使われています。

料理の場合には火を使いますが、「光の熱を使って物を加工すること」にも「焼く」という言葉が使われます。

例えばコピーを取ることを意味する「コピーを焼く」、写真を現像することを意味する「写真を焼く」、CDを空のCD-Rを使って複製することを意味する「CDを焼く」などの「焼く」という表現があります。

どれも細かな原理は異なりますが、光学式の機器によって物を作ることから「焼く」という言葉で表現されるようになりました。これらは段々と使われなくなっている「焼く」の用法ですが、まだまだ使われる場合も多く、知っておくべきものです。

こうした「加工する」とは別の意味の「焼く」としては、悲痛な気持を意味する「身を焼く思い」、気を揉むことを意味する「世話を焼く」、扱いに困っていることを意味する「手を焼く」などの、心情に関係する用法があります。

燃えるにも同じように心情を表現する用法がありますが、「焼く」が表現する心情は「困る、辛い」ものである傾向が強いです。

「焼く」の類語

焼くの類語・類義語としては、焼いて黒く炭のようにすることを意味する「焦がす」、食べ物を油で煎り付けることを意味する「炒める」などがあります。

焼くを使った別の言葉としては、火事で損害を受けたが保険金が下り、以前より暮らし向きが良くなることを意味する「焼け太り」、飲酒で顔が紅潮することを意味する「酒焼け」、胃酸が逆流することで胸に鈍痛が走ることを意味する「胸やけ」などがあります。

「燃やす」の例文

1.大切にしている人形をあろう事か燃やす夢を見た。
2.うっかり空鍋をしてしまっていた。危うく家を燃やすところだった。
3.自分の家でゴミを燃やすのは禁止されています。きちんと廃品回収に出して下さい。
4.燃やせないゴミ、燃やせるゴミ、燃やさないゴミ・・・色々あって頭がこんがらがる。
5.ライバルチームを倒すため、チーム一丸となって闘争心を燃やして練習にはげんだ。
6.昔は庭の焼却炉でゴミを燃やしていたが、今ではそのような光景を見かけなくなりました。
7.静かに闘志を燃やすレスラーはとても格好良く、私もあのように強くなれたらと思っていました。
8.田舎の実家の土間には薪を燃やす大きな炉があって、料理と暖房に使われていた。
9.この食材は体脂肪を効率よく燃やす働きがあるので、意識して食べるようにしています。
10.彼女は美容に異常な執念を燃やしており、給料の大半を美容に注ぎ込んでいました。

この言葉がよく使われる場面としては、火をつけて灰にすること、炎が燃え立つこと、感情が高ぶっていることを表現したい時などが挙げられます。

火という字の形は、「燃え立つ様子」を表現しています。普段は何気なく使われているため「立つ」という意味合いをなかなか感じ取ることは出来ませんが、使い方を見ると、この意味合いが確かに生きていることが分かります。

例文4のゴミに関してですが、ゴミには普通は「燃やす」を使い、焼くは使われない傾向があります。しかしゴミを焼却施設以外で燃やすことを「野焼き」と言うことから、燃やすと焼くはゴミに対しては同じ「灰を出す」という意味で使われていることが分かります。

「焼く」の例文

1.新しいホームプレートで肉を焼くと、これがまた美味しいんだ。
2.家で焼き肉をする時には、必ず焼きそばか焼きうどんを一緒に作る。
3.何から何まで世話を焼くことが親切だとは限らないよ。
4.今更1時間や2時間勉強したところで焼け石に水だよ。
5.終戦直後の焼け野原となった風景の写真を見た。
6.最近は調理器も多機能になり便利だが、魚は正直網で焼くほうが風味もありおいしいと思った。
7.家の中で肉を焼くと油のニオイが取れないので、なかなか妻が許してくれませんでした。
8.彼はいつもだらしがなかったので、彼女がいつも世話を焼いてくれていました。
9.私はヤキモチを焼いて、色々彼女に当たっていたが、我に返るとそんな自分が恥ずかしくなった。
10.母親は弟にもっとも手を焼いていたので、私は自然と放ったらかしで甘えることが出来なかった。

この言葉がよく使われる場面としては、火や光などの熱によって状態が変わること、あれこれと気を揉むことを表現したい時などが挙げられます。

例文3は「焼く」を心情的な事柄に対して使っています。「焼く」という言葉は「困っている、辛い」という心情を指し示す傾向が強く、気持ちの高ぶりを指し示す「燃やす」とは大きく異なります。

また例文5の「焼け野原」という言葉では前後で状態が大きく変化したことを表現するために「焼く」という言葉が使われています。同じような「焼く」の使い方をした言葉としては「焼畑農業」などがありますので、合わせて覚えておくようにしましょう。

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