同じ「たいしょう」という読み方、似た意味を持つ「対象」と「対照」と「対称」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「対象」と「対照」と「対称」という言葉は、読み方は同じでも意味は大きく違いますので、混同しないようご注意下さい。
対象と対照と対称の違い
対象と対照と対称の意味の違い
対象と対照と対称の違いを分かりやすく言うと、対象とは行為のターゲットのことを意味していて、対照とは二つのものが正反対であることを意味していて、対称とは二つのものが釣り合いが取れていることを意味しているという違いです。
対象と対照と対称の使い分け方
一つ目の「対象」は「行為のターゲット」という意味を持つ言葉です。例えば「実験対象」は実験が素材やデータとして扱う物のことです。また「調査対象者」は調査が取り上げる人のことです。
対象という言葉を説明するにあたって、「目標や目的」といった説明がされることがありますが、正確ではありません。しかし外来語を使わずにもっぱら日本語で説明しようとすると、そうした不正確な説明が限界であることも確かです。
対象は決して目的ではありません。弓道であれば、ターゲットはそのまま目標や目的と考えることも出来なくはありません。しかし「実験対象」の対象は実験の目的ではなく、目的に至るために取り扱われるものに過ぎません。
またおもちゃなどに「対象年齢何歳以上」と表記されることがあります。その年齢以上の子供が商品のターゲットであるということですが、子供が商品の目的や目標であるわけではありません。商品の目標や目的は、そうした子供たちから利益を上げることです。
二つ目の「対照」は「二つのものの違いが際立っている」という意味を持つ言葉です。例えば「対照的な性格の二人」とは、一人は社交的で他人と関わることを楽しく感じ、もう一人は内向的で自分ひとりで何かをするほうが楽しく感じる、といったことを意味します。
三つ目の「対称」は「二つのものの釣り合いが取れている」という意味を持つ言葉です。小学校の高学年になると、算数の時間に「線対称」や「点対称」などについて習いますが、それらの「対称」のことです。
例えば線対称は、ある図形を上下や左右で二分割し、折りたたむようにした時にピタリと一致する図形のことです。ここでは分割された後の部分同士が等しく、釣り合いが取れていることから「対称」という言葉が用いられています。
対象の意味
対象とは
対象とは、行為のターゲットを意味しています。
表現方法は「対象とする」「対象となる」「対象外」
「対象とする」「対象となる」「対象外」などが、対象を使った一般的な言い回しです。
対象の使い方
抽象的に言えば、ある行為が何か物を捉える時の、その物のことが対象と呼ばれます。例えば船のレーダーは物を補足するための機器ですが、捉えられたものがレーダーの対象です。
対象の対の字は「向かい合っている」という意味で、象の字は「かたち」という意味を持っています。レーダーの例で言えば、レーダーと捕捉された対象は向かい合っている、というのが対象という言葉が惹起させるイメージです。
心と物、自我と世界などの二項対立でこの世の物事を理解しようとする傾向のある哲学などでは、自分の精神が補足する世界の全体が対象という言葉で呼ばれることもあります。遠大な使われ方ですが、レーダーの例とさほど変わりはありません。
英語ではこの意味での「対象」のことを「object」(読み方:オブジェクト)と言います。
このような意味とは別の対象の使い方をしているのが、「対象年齢」や「対象商品」などの文言に含まれる対象です。同じ内容を英語で表記する際、「object」と書かれることはまずありません。
例えば対象年齢5歳以上なら「(suitable)for ages 5 and up」(suitableは省略可能)などのように「5歳以上に(適した)」と表記されるのが一般的です。
こうした使い方をされる「対象」は「ターゲット」という意味に極めて近いと言うことが出来ます。というのも、商品の開発や市場展開に際して、どのような顧客層に売り込んでいくかを考えることを「ターゲティング」と言うからです。
対象の対義語
対象の対義語・反対語としては、認識や行為を起こる物を意味する「主体」、認識する主体を意味する「主観」などがあります。
対象の類語
対象の類語・類義語としては、認識や行為の対象となるものを意味する「客体」、認識の対象となるものを意味する「客観」、狙いをつけた物のことを意味する「目当て」などがあります。
対象の対の字を使った別の言葉としては、二つのもの反対しあっていることを意味する「対立」、匹敵する物、並び立つ物がないことを意味する「絶対」などがあります。
対象の象の字を使った別の言葉としては、形を持って表へ現れることを意味する「現象」、明確な形を備えている物のことを意味する「具象」、物や出来事が心に与えるものを意味する「印象」などがあります。
対照の意味
対照とは
対照とは、二つのものの違いが際立っていることを意味しています。
表現方法は「対照する」「比較対照」「好対照をなす」
「対照する」「比較対照」「好対照をなす」などが、対照を使った一般的な言い回しです。
対照の使い方
対照の対は「向かい合う」という意味で、照の字の意味は「照らす」です。お互いに照らし合っているというイメージを持てると、対照という言葉の使い方が分かりやすくなります。
例えば「二人の考え方は対照的だ」という文言は、お互いの考え方が全く異なることを表現しています。また「対照の妙」という言葉は「二つの違いを際立たせ、それによって全体的な魅力をあたあること」という意味を持ちます。
対照の対義語
対照の対義語・反対語としては、二つ以上の物が重なり合うことを意味する「合致」「一致」、条件に当てはまったり、環境に順応すことを意味する「適合」などがあります。
対照の類語
対照の類語・類義語としては、二つの物の違いを比べて際立たせることを意味する「対比」、二つ以上の物の特徴を比べることを意味する「比較」などがあります。「比較対照」というように並べて使われることも多いです。
対照の照の字を使った別の言葉としては、明かりを意味する「照明」、書類などに照らし合わせて本人を確認することを意味する「照会」などがあります。
対称の意味
対称とは
対称とは、二つのものの釣り合いが取れていること、二つのものが等しいことを意味しています。
表現方法は「左右対称」「点対称」「線対称」
「左右対称」「点対称」「線対称」などが、対称を使った一般的な言い回しです。
対称の使い方
小学校の算数の授業で習う「点対称」や「線対称」などに「対称」が使われます。
例えば「点対称」な図形とは、中心の点に即して180度回転させた時、回転させる前とまったく同じ形をしている図形のことです。回転させる前と回転させた後の二つの図形が等しく釣り合っていることから、「対称」という言葉が使われています。
対称の称の字は、「呼称」(読み方:こしょう)や「通称」(読み方:つうしょう)など、「呼ぶ、となえる」という音声の意味で親しまれていますが、対称の称の字は「はかる」という意味で使われています。
「はかる」の意味で称の字を使った別の言葉としては、重さを量ることを意味する「称量」(読み方:しょうりょう/ひょうりょう)などがあります。江戸時代の関西では重さで価値を計る「秤量貨幣」が流通していました。秤は称と同じ意味です。
対称の対義語
対称の対義語・反対語としては、二つのものが不ぞろいなことを意味する「非対称」などがあります。
対称の類語
対称の類語・類義語としては、互いに釣り合いが取れていることを意味する「相称」、あるものが優れたバランスを持っていることを意味する「均整」などがあります。
対象の例文
この言葉がよく使われる場面としては、行為のターゲットを表現したい時などが挙げられます。対象という日本語には、主観―客観の対立図式における客観とほぼ同じ意味がありますが、この意味の対象は日常生活ではほとんど使われない言葉です。
日常生活での「対象」は、「対象年齢」や「実験対象」のように、「ターゲット」という言葉に近い意味を持ちます。ただし、ここでのターゲットとは目的や目標ではありません。狙撃の的のターゲットとは、ほんの僅かですが違う意味になります。
おもちゃの「対象年齢」と言う時の「対象」とは、利益をそこから吸い上げる言わばダシのようなものを指し示しています。
対照の例文
この言葉がよく使われる場面としては、二つの物事の差異が際立っていることを表現したい時などが挙げられます。「対照」という言葉は「お互いに照らし合う」という意味合いを持っています。
ある人の特徴は、それとは正反対の特徴を持つ人と比較することで際立ちます。「比較対照」という言葉は、細かいニュアンスになりますがですが、比較が対照のための前段階、比較のための手段になっています。
例文3の対照実験とは、例えば薬の効果を調べるためには、投薬を施すグループと施さないグループに分け、その他の条件を全く同一にして平行して実験を行う必要がありますが、その時のされないグループに対する実験のことです。
ただし、医療の分野では対照実験ではなく、対照試験と呼ばれるのが一般的です。
対称の例文
この言葉がよく使われる場面としては、二つの物が釣り合いが取れていて等しいことを表現したい時などが挙げられます。
対称という言葉は、形に対して使われることが多い言葉です。数学で対称式という言葉を目にすることはありますが、日常的にはほぼ間違いなく、目に見える形に対して使われます。
対称かどうかを調べるためには、何らかの基準が必要です。線対称であれば線が基準になっていて、点対称なら点が基準になっています。例文2のように、人間の顔の左右非対称を調べる時には、一般的に顔の画像の中心に線を引いて調べます。