似た意味を持つ「大往生」(読み方:だいおうじょう)と「往生」(読み方:おうじょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「大往生」と「往生」という言葉は、どちらも「死ぬこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
大往生と往生の違い
大往生と往生の意味の違い
大往生と往生の違いを分かりやすく言うと、大往生とは安らかに死ぬことを意味し、往生とは単に死ぬことだけでなく困り果てることも意味するという違いです。
大往生と往生の使い方の違い
一つ目の大往生を使った分かりやすい例としては、「家族に見守られながら大往生を遂げる」「大往生した父の葬式は明るい雰囲気でした」「大往生とは何歳から言えますか」「祖父の大往生はめでたいことだと思います」などがあります。
二つ目の往生を使った分かりやすい例としては、「念仏を唱えれば極楽往生を遂げられる」「往生礼讃に基づいて行動する」「今朝、祖父が往生しました」「恋愛において往生際が悪いタイプです」「吹雪により車が立ち往生する」などがあります。
大往生と往生の使い分け方
大往生と往生という言葉は、どちらも「命がなくなって、この世を去ること」を意味しますが、意味や使い方には違いがあります。
大往生とは、天寿を全うして安らかに亡くなることを意味します。死ぬことを意味する往生に、敬いを表す「大」が加わった言葉であり、安らかに亡くなる死に方や、立派な死に方を表す時に用いられています。
往生とは、もともと仏教の言葉で、仏の浄土に生まれ変わることを意味します。そこから一般的な言葉として、死ぬこと、あきらめて大人しくすること、どうしようもなく困り果てることの意味で使われるようになりました。
上記の例文にある「往生際が悪い」とは、あきらめが悪いことを意味します。未練がましく悪あがきをしたり、負けた者が負けを認めない主張をしたりする時に用いられる表現です。「往生際」とは、もともと「死に際」のことですが、転じて、追いつめられてどうしようもなくなった状態を表します。
大往生と往生という言葉を比べると、亡くなることのみを表現する大往生に比べて、様々な意味を持つ往生の方が汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
大往生と往生の英語表記の違い
大往生を英語にすると「euthanasia」「peaceful death」となり、例えば上記の「大往生を遂げる」を英語にすると「die a peaceful death」となります。
一方、往生を英語にすると「death」「submission」「the last extremity」となり、例えば上記の「極楽往生を遂げる」を英語にすると「die a gentle and easy death」となります。
大往生の意味
大往生とは
大往生とは、少しの苦しみもなく安らかに死ぬこと、立派な死に方であることを意味しています。
表現方法は「大往生を遂げる」「大往生を前にして」「大往生だった」
「大往生を遂げる」「大往生を前にして」「大往生だった」などが、大往生を使った一般的な言い回しです。
大往生の使い方
大往生を使った分かりやすい例としては、「愛する父が大往生しお悔やみの言葉を頂戴した」「英語が堪能だった母が大往生しました」「23歳で亡くなった犬は大往生だと思います」「何歳からの享年が大往生と言えるのだろう」などがあります。
その他にも、「大往生する人の食生活には共通点があります」「厳しい修行の末に大往生流を会得した」「自然死が出来なくなるから大往生したけりゃ医療とかかわるな」「自宅で大往生を遂げることが願いです」などがあります。
大往生とは、天命を全うして安らかに亡くなることです。病気や怪我で苦しまず、老衰などにより穏やかな死を迎えることを指す言葉です。高齢の人が亡くなった時に使われますが、何歳からという定義はありません。一般的に、平均寿命を過ぎた80歳半ば以降の死を大往生と表現しています。
大往生という言葉は葬儀の場でも用いられていますが、基本的には遺族が使う言葉です。参列者がお悔やみの言葉に「大往生ですね」などと表現することは、マナー違反だとされています。これは、「亡くなっても良い年齢だった」という意味に捉えられる可能性があるからです。
大往生の対義語
大往生の対義語・反対語としては、年が若くて死ぬことを意味する「夭折」、早く世を去ることを意味する「早世」、若くて死ぬことを意味する「若死に」などがあります。
大往生の類語
大往生の類語・類義語としては、人が死んでその魂が天にのぼることを意味する「昇天」、天皇や皇后を敬ってその死をいう「崩御」、皇族または三位以上の貴人が死去することを意味する「薨去」、死ぬことを婉曲にいう「他界」などがあります。
往生の意味
往生とは
往生とは、仏教において、現世を去って仏の浄土に生まれること、極楽浄土にいって生まれ変わることを意味しています。
その他にも、「死ぬこと」「あきらめて大人しくすること」「どうにもしようがなく困り果てること」の意味も持っています。
表現方法は「往生する」「往生しました」「往生せい」
「往生する」「往生しました」「往生せい」などが、往生を使った一般的な言い回しです。
往生の使い方
「善行で往生すると信じている」「往生の素懐を遂げる」「往生要集の現代語訳を読む」の文中で使われている往生は「現世を去って仏の浄土に生まれること」の意味で、「愛犬の往生が信じられません」「いつ往生しても良い」の文中で使われている往生は「死ぬこと」の意味で使われています。
一方、「往生際が悪い奴だ、しつこいぞ」「お前こそ往生際の意味を知れ」などの文中で使われている往生は「あきらめて大人しくすること」の意味で、「自動車道では車の立ち往生が続いている」などの文中で使われている往生は「どうにもしようがなく困り果てること」の意味で使われています。
往生という言葉は、複数の意味を持っており、それぞれの意味で使われているため文脈により捉える必要があります。
「立ち往生」の語源
往生の語源は仏教用語であり、この世で命を終えた後、仏や菩薩の浄土に生まれることを意味しました。転じて、死ぬこと、困り果てることの意味でも使われるようになりました。
「立ち往生」の意味
上記の例文にある「立ち往生」とは、その場に止まったり途中で行き詰まったりしたまま、処置のしようもなく動きのとれないことを意味します。この言葉の原義は、立ったまま死ぬことであり、源義経の家臣である武蔵坊弁慶の死にざまに由来します。
「極楽往生」の意味
往生を用いた日本語には「極楽往生」があります。仏教語で、死後に極楽浄土に生まれ変わることを意味します。一般的には、安らかに死ぬことや、ひどい苦しみもなく安楽に死ぬことの意味で使われています。
往生の対義語
往生の対義語・反対語としては、人が生まれることを意味する「生誕」、聖人や偉人などがこの世に生まれることを意味する「降誕」、生まれ出ることや人が生まれることを意味する「出生」などがあります。
往生の類語
往生の類語・類義語としては、あの世に旅立つことを意味する「お陀仏」、この世に別れを告げることを意味する「辞世」、命が絶えることを意味する「絶命」、息が絶えることや絶命を意味する「絶息」などがあります。
大往生の例文
この言葉がよく使われる場面としては、 臨終に際して苦痛や心の乱れがない安らかな死、立派な死に方を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「大往生を遂げる」とは、人の死を丁寧に表現した言い回しです。「遂げる」は、完全に終わらせることや、そのような結果となることを意味します。
往生の例文
この言葉がよく使われる場面としては、現世を去って仏の浄土に生まれること、この世を去ること、あきらめて行動をやめること、どうにもしようがなくなって困ることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「浄土往生」とは、死後に仏や菩薩の住む世界に生まれ変わることです。「極楽往生」「往生浄土」とも言います。例文4の文中にある往生は、あきらめて大人しくすることの意味で使われています。
大往生と往生という言葉は、どちらも「この世を去ること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、安らかに死ぬことを表現したい時は「大往生」を、死ぬことや困り果てることを表現したい時は「往生」を使うようにしましょう。