似た意味を持つ「杜撰」(読み方:ずさん)と「雑」(読み方:ざつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「杜撰」と「雑」という言葉は、どちらも「やり方がいい加減なさま」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
杜撰と雑の違い
杜撰と雑の意味の違い
杜撰と雑の違いを分かりやすく言うと、杜撰とは間違いがあるニュアンスがあり、雑とは間違いがあるニュアンスがないという違いです。
杜撰と雑の使い方の違い
一つ目の杜撰を使った分かりやすい例としては、「この計画は杜撰だったので完遂できなかった」「部下の杜撰な仕事を注意する」「杜撰な経営実態が非難されている」「クレーム対応の杜撰さは信用を失います」などがあります。
二つ目の雑を使った分かりやすい例としては、「雑所得は課税対象になりますか」「雑草の生えない庭づくりのアドバイスをもらう」「弁当作りがどんどん雑になっている」「雑な仕事ぶりで解雇された」「雑な性格を直したい」などがあります。
杜撰と雑の使い分け方
杜撰と雑という言葉は、どちらも物事のやり方がぞんざいで、いい加減なさまを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
杜撰とは、物事の行い方がいい加減であること、書物などに誤りが多いことを意味します。仕事や工事、経営などについて、そのやり方がぞんざいであることに用いる言葉です。「杜撰な仕事」とは、仕事が丁寧ではなかったり、ミスがあるような仕事を表します。
雑とは、大まかでいい加減なさまを意味します。「雑な仕事ぶり」とは、仕事に対して丁寧に取り組んでいないさまを表しますが、杜撰のような誤りがあるニュアンスは含みません。また、「雑な性格」のように人の性格についても用いられることがあります。
つまり、杜撰には間違いがあるニュアンスがあり、雑には間違いがあるニュアンスはありません。また、「雑な性格」とは言いますが、「杜撰な性格」のように杜撰を人に対して使うことは誤用になります。これらが、杜撰と雑という言葉の違いになります。
杜撰と雑の英語表記の違い
杜撰を英語にすると「careless」「slipshod」「faulty」となり、例えば上記の「この計画は杜撰だ」を英語にすると「This plan is faulty」となります。
一方、雑を英語にすると「rough」「messy」「miscellany」となり、例えば上記の「雑費」を英語にすると「miscellaneous income」となります。
杜撰の意味
杜撰とは
杜撰とは、詩や文章に典拠の確かでないことを書くこと、その詩文を意味しています。
その他にも、「物事がいい加減で、誤りが多いこと」の意味も持っています。
表現方法は「杜撰になる」「杜撰な対応」「杜撰な扱い」
「杜撰になる」「杜撰な対応」「杜撰な扱い」などが、杜撰を使った一般的な言い回しです。
杜撰の使い方
「杜撰でいい加減な論文は受け付けません」「杜撰な文章は読むに値しない」「辞典がこんなに杜撰でいいのだろうか」などの文中で使われている杜撰は、「詩や文章に典拠の確かでないことを書くこと」の意味で使われています。
一方、「調査の杜撰さが浮き彫りになる」「勤怠管理システムの使い方が杜撰になる」「ビジネス文書の管理が杜撰だ」「東京オリンピックの杜撰な実態が明るみになる」などの文中で使われている杜撰は、「物事がいい加減で誤りが多いこと」の意味で使われています。
杜撰の読み方
杜撰の読み方は「ずさん」です。誤って「とせん」と読まないようにしましょう。杜撰は、漢字よりも平仮名で「ずさん」と書かれることが一般的なため、読めない人が多い言葉です。
杜撰とは、上記の例文にあるように二つの意味がありますが、ほとんどの場合は「物事がいい加減で、誤りが多いこと」の意味で使われています。仕事や計画の進め方などに問題がある時などに、ネガティブな意味で用いられています。
杜撰の語源
杜撰という言葉の語源は、古代中国の宋の時代にいた杜黙という詩人にあります。杜黙の詩が、定形詩の規則に合っていないものが多かったという故事に由来します。杜黙の「杜」と、詩文を作ることを表す「撰」が結び付き、杜撰という言葉が生まれました。
杜撰の対義語
杜撰の対義語・反対語としては、細かいところまで行きとどいていて丁寧なことを意味する「入念」、心を込めて丁寧に行うことを意味する「丹念」、詳しく細かいことを意味する「綿密」、細かいところまで注意が行き届いていて手落ちのないことを意味する「緻密」などがあります。
杜撰の類語
杜撰の類語・類義語としては、必要なものが完全には揃っていないことを意味する「不備」、物事を軽くみていい加減に扱うことを意味する「等閑」、しなければならない手続きや手間を故意に省くことを意味する「手抜き」、粗略で手抜かりが多いことを意味する「杜漏」などがあります。
雑の意味
雑とは
雑とは、いろいろなものが入り混じっていること、区別しにくい事柄を集めたものを意味しています。
その他にも「大まかでいい加減なさま、丁寧でないさま」の意味も持っています。
表現方法は「雑な対応」「雑に扱う」「雑になる」
「雑な対応」「雑に扱う」「雑になる」などが、雑を使った一般的な言い回しです。
雑の使い方
「雑収入の勘定科目を教えてください」「鍋の締めに雑炊を食べる」「忘年会の余興に雑学クイズを用意しました」「近所の雑貨屋さんでバイトする」などの文中で使われている雑は、「いろいろなものが入り混じっていること」の意味で使われています。
一方、「雑に物を扱うだらしない人は嫌いです」「時間がなくて盛り付けが雑になる」「雑な文章を書く人だな」「先輩から雑な扱いを受けます」「商品を雑に扱うな」などの文中で使われている雑は、「大まかでいい加減なさま」の意味で使われています。
雑とは上記の例文にあるように二つの意味があります。「いろいろなものが入り混じっていること」の意味では、単独で使われることは少なく、「雑学」「雑誌」「雑所得」のように他の言葉と結び付くことが多くあります。
雑という言葉は、人となりを表す時にも用いられています。雑な人とは、物事を大雑把に大きく捉えたり、細かなところに注意が行き届かなかったり、物の扱いが乱暴であったりする人のことです。
「雑所得」の意味
雑を用いた日本語には「雑所得」があります。所得税法で定められた各種の所得のいずれにも該当しない所得のことで、恩給や公的年金などがこれに当たります。
雑の対義語
雑の対義語・反対語としては、まじりけや偽りのないさまを意味する「純」、雑多なものがまじっていないことを意味する「純粋」、細かいところまで気を配ることや注意深く入念にすることを意味する「丁寧」、注意が行き届いていて丁寧なことを意味する「丁重」などがあります。
雑の類語
雑の類語・類義語としては、入りまじっていて無秩序なことを意味する「乱雑」、いい加減で大ざっぱなことを意味する「粗雑」、綿密でなく荒っぽいことを意味する「粗放」、でたらめなことを意味する「与太」などがあります。
杜撰の例文
この言葉がよく使われる場面としては、詩文などで典拠の正確でないことを述べること、誤りが多くいい加減なことを表現したい時などが挙げられます。
例文1の文中にある杜撰は、書物などで典拠が不確かであったり、内容に誤りが多いことの意味で用いられています。例文2から例文5にある杜撰は、誤りが多くいい加減なことの意味で用いられています。
雑の例文
この言葉がよく使われる場面としては、入りまじること、ぞんざいなことを表現したい時などが挙げられます。
例文1の文中にある雑は、入りまじることの意味で、例文2から例文5にある雑は、ぞんざいなことの意味で用いられています。
杜撰と雑という言葉は、どちらも「やり方がいい加減なさま」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、誤りがあるニュアンスを表現したい時は「杜撰」を使うようにしましょう。