似た意味を持つ「無情」(読み方:むじょう)と「非情」(読み方:ひじょう)と「薄情」(読み方:はくじょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「無情」と「非情」と「薄情」という言葉は、思いやりの気持ちがないという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
無情と非情と薄情の違い
無情と非情と薄情の意味の違い
無情と非情と薄情の違いを分かりやすく言うと、無情は思いやりの心がないことを表現する時に使い、非情は人間らしい感情がないこと表現する時に使い、薄情は思いやりの心が欠けていることを表現する時に使うという違いです。
無情と非情と薄情の語源の違い
無情の無は存在しないことを表す漢字です。そのため、無情という言葉は人間味の全くない様子であったり、人の持っているいつくしむ感情や愛情などが全くない様子を表します。
非情の非は正しくないことやそれとは違うこと、対象が無いことを表す漢字です。そのため、思いやりだけではなく、人間として当然あるはずの喜怒哀楽がない様子を表します。
薄情の薄は真心に欠ける、心がこもっていない状態を表す漢字です。そのため、人間の気持ちや愛情が冷たい様子を表します。
無情と非情と薄情の程度の違い
これらのことから、三つの言葉を程度の軽い順番に並べると、薄情<無情<非情の順になり、非情になるほど人間らしい感情がないことを表しています。これが無情、非情、薄情の違いです。
無情の意味
無情とは
無情とは、いつくしむ心がないことや思いやりのないことを意味しています。
四字熟語「冷酷無情」の意味
無情を使った言葉として「冷酷無情」があります。思いやりがなく人間らしい感情に欠けていることを意味する四字熟語です。情愛に欠けている様子を意味する「冷淡無情」や冷淡な態度を意味する「枯木寒巌」(読み方:こぼくかんがん)は類義語にあたります。
また、無情を使った誤った言葉として「諸行無情」「無情の喜び」があります。
「諸行無情」は「諸行無常」の誤字
一つ目の「諸行無情」は、本来「諸行無常」と書き、この世のすべてのものは常に変化して、ほんの少しも留まるものはないということを意味する四字熟語です。無情という言葉の意味であるいつくしむ心に関する意味は全く含まれていません。
「無情の喜び」は「無上の喜び」の誤字
二つ目の「無情の喜び」は、本来「無上の喜び」と書き、この上ないほど喜ばしいことを意味します。「無上の悲しみ」という言葉でも無情と表記することはありません。こちらも思いやりの気持ちに関する意味は含まれていませんので注意しましょう。
無情の対義語
無情の対義語・反対語としては、人間としての感情があること、感情や感覚を持つことを意味する「有情」があります。
無情の類語
無情の類語・類義語としては、無慈悲でむごたらしいことを意味する「残酷」、行いが人の道に背いていることを意味する「無道」、暗くむごたらしい感じを意味する「陰惨」、人や生き物に対してする行為のむごたらしいことを意味する「残虐」などがあります。
無情の無の字を使った別の言葉としては、利益のないことや無駄なことを意味する「無益」、休まないことを意味する「無休」、報酬のないことや代金を払わないでいいことを意味する「無償」、実現するのが難しいことを意味する「無理」などがあります。
非情の意味
非情とは
非情とは、人間らしい感情をもたないことを意味しています。その他にも、感情に左右されないことを意味します。
表現方法は「非情な仕打ち」「非情な現実」「非情な掟」
「非情な仕打ち」「非情な現実」「非情な掟」「非情にも」「非情だ」などが、非常を使った一般的な言い回しです。
非情の使い方
非情を使った分かりやすい例としては、「遅刻すると会社で非情な仕打ちを受けるので早めに出社している」「いくら努力しても非情な現実が待っていることもある」「これから逆転だというタイミングで非情にも試合終了のベルが鳴った」「サラリーマンは安定していると言うけれど現実は非情だ」などがあります。
非情の由来
非情は、草や木、土、石のような感情のないものを意味する仏教用語でもあります。この言葉の対語・対義語は、感情や意識など心の動きを持つもつものを意味する「有情」(読み方:うじょう)です。
四字熟語「有情非情」の意味
非情を使った言葉として、「有情非情」(読み方:うじょうひじょう)があります。人間や動物、植物に加えて命を持たない石などを含めた世界に存在するすべてのもののことを意味する四字熟語ですが、この言葉は仏教用語としての「非情」となります。
非常の意味を含む言葉
非情の意味を含んだ言葉として「人面獣心」「切った張った」があります。
一つ目の「人面獣心」とは、顔は人間であるが心は獣に等しいという意味が転じて、恩義を知らない人や非情な人という意味となった四字熟語です。「人面」はじんめんともにんめんとも読むことができます。
二つ目の「切った張った」とは、切りつけたり張り飛ばしたりという意味が転じて、非情な殺伐としたといった意味を持つようになった言葉です。
非情の対義語
非情の対義語・反対語としては、あたたかみのある優しい心や思いやりのある寛大な心を意味する「温情」があります。
非情の類語
非情の類語・類義語としては、あわれみの心や思いやりの心がないことを意味する「無慈悲」、相手の気持ちを汲み取ろうとせずに意地悪くむごい扱いをすることを意味する「邪険」、心のひねくれた人や道理に背く考えを意味する「外道」などがあります。
非情の非の字を使った別の言葉としては、平凡でないことを意味する「非凡」、礼儀にそむくことを意味する「非礼」、常識のないことを意味する「非常識」、運がないことを意味する「非運」、正しいことと正しくないことを意味する「是非」などがあります。
薄情の意味
薄情とは
薄情とは、人情に薄いことや思いやりの気持ちがないことを意味しています。
薄情の読み方
薄情は「はくじょう」という読み方をし、「うすじょう」などの読み方はありません。
表現方法は「薄情な人」「薄情なやつ」「薄情な女性」
「薄情な人」「薄情なやつ」「薄情な女性」などが、薄情を使った一般的な言い回しがあり、ポジティブではなくネガティブな表現方法になります。
薄情の使い方
薄情を使った分かりやすい例としては、「薄情な人の末路は友達がいなくなることである」「あんな薄情なやつと一緒に仕事をしたくない」「薄情な女性だけど良いところもあるから見捨てられない」などがあります。
薄情を使った言葉として「薄情者」「薄情け」があります。
「薄情者」の意味
一つ目の「薄情者」は、他人が困っていても手をかさないなど、思いやりや人情味味に欠けた人を表す言葉です。
「薄情け」の意味
二つ目の「薄情け」(読み方:うすなさけ)とは、心のこもっていない見せかけの愛情を意味する言葉です。薄情に送り仮名「け」を付けることで、「情」という漢字をじょうではなく、なさけと使うことができます。
薄情の対義語
薄情の対義語・反対語としては、心からの深い思いやりの気持ちを意味する「厚情」、思いやりをもって人のためにつくすことを意味する「親切」があります。
薄情の類語
薄情の類語・類義語としては、思いやりがないこと、同情や親切心を示さないことを意味する「冷淡」、人間らしい温情に欠けていることを意味する「冷血」道徳が衰えて人情が極めて薄いことを意味する「澆薄」(読み方:ぎょうはく)があります。
薄情の薄の字を使った別の言葉としては、言葉や態度が軽々しくて思慮の深さや誠実さが感じられないことを意味する「軽薄」、残酷で薄情なことを意味する「酷薄」、浅はかで軽々しいことを意味する「浮薄」などがあります。
無情の例文
この言葉がよく使われる場面としては、いくつしむ心がないことを意味する時などが挙げられます。
例文1の「無情にも」という表現は、物事が悪い方向に進む様子を表すために使われる言葉で、「無慈悲にも」「残念ながら」「悲しいかな」などの表現に置き換えることができます。
非情の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人間らしい感情を持たないことを意味する時などが挙げられます。
例文3の「非情さ」は形容動詞として使われる「非情な」を変化させ、程度や性質を表した言葉です。
薄情の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人情に薄いことを意味する時などが挙げられます。
例文2の「薄情だな」という使い方は、相手に冷たい奴だなと冗談めいた言い方をするときに使われる表現です。無情や非情と違って、薄情はこのように軽い言い方にも使うことができます。
無情と非情と薄情どれを使うか迷った場合は、思いやりがないことを表す場合には「無情」を、思いやりだけではなく感情そのものがないことを表す場合は「非情」を、思いやりが欠けていることを表す場合は「薄情」を使うと覚えておけば間違いありません。