似た意味を持つ「枕詞」(読み方:まくらことば)と「序詞」(読み方:じょことば)と「掛詞」(読み方:かけことば)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「枕詞」と「序詞」と「掛詞」という言葉は、和歌の修辞法という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
枕詞と序詞と掛詞の違い
枕詞と序詞と掛詞の意味の違い
枕詞と序詞と掛詞の違いを分かりやすく言うと、枕詞は五音一語の前置きされる言葉を表現する時に使い、序詞は二句以上の前置きされる言葉を表現する時に使い、掛詞は一語に二つの意味を持たせる技法を表現する時に使うという違いです。
枕詞と序詞と掛詞の使い方の違い
枕詞という言葉は、「ビジネス上では枕詞は必要不可欠だ」「枕詞一つあるだけで、この後どういう話をされるのか予想がつく」などの使い方で、決められた言葉の前に置いて修飾したり語調を整える言葉を意味します。
序詞という言葉は、「序詞には作者の好みが大きく反映される気がする」「演劇においては序詞があるだけでも世界観を少し知ることができる」などの使い方で、ある語句を導くための前置きする言葉を意味します。
掛詞という言葉は、「日常的に掛詞を生み出せるわけではなく、気が付いたら口にしている」「掛詞のような言葉遊びができるほど語彙が豊富なわけではない」などの使い方で、一つの言葉に二つの意味を同時に持たせる技法を意味します。
枕詞と序詞と掛詞の使い分け方
枕詞と序詞は、どちらも特定の語句を導き出すために前置きとして使われる言葉を指しますが、前者は導かれる単語に対応する五音の単語を指すのに対して、後者は音の数に決まりはなく、単語一語ではなく二句以上のものを指します。
そのため、序詞は作者の創意工夫が見られるようになっており、枕詞よりも判別が難しいとされています。
一方の掛詞は、同じ読み方をする言葉を同時に表現する技法で、今日でいうダジャレのような言葉遊びを指します。万葉集以外には、掛詞を使った序詞が多く存在しています。
これが、枕詞、序詞、掛詞の明確な違いです。
枕詞の意味
枕詞とは
枕詞とは、決められた言葉の前に置いて修飾したり語調を整える言葉を指しています。
枕詞は『万葉集』の頃から現代におけるまで長く使われています。また、序詞と同じようなものと考えられており、短縮されたものが枕詞であるとも言われています。
「あしひきの」は山や峰を、「ひさかたの」は光や空などを、「たらちねの」は母や親、「しろたへの」は衣や袖、雪や波を導くなど、多くの枕詞が存在しますが、その多くは語調を整えるために使われるため枕詞事態は訳されないこともあります。
「ビジネス枕詞」の意味
枕詞を使った言葉として、「ビジネス枕詞」があります。これは、ビジネスシーンにおいて本題を話し始める前に口調などを柔らかくするための言葉を指す言葉です。今後も相手と良好な関係を築いていくために使われるため、「クッション言葉」とも呼ばれます。
例えば、相手にお願いをする際には「恐れ入りますが」や「お手数ですが」などを、相手の提案を断る際には「申し訳ございませんが」や「残念ですが」などを、相手に感謝を伝える際には「おかげさまで」を使います。
枕詞の類語
枕詞の類語・類義語としては、ある言葉と意味や内容で関連する言葉を指す「縁語」「韻文」その季節を表すと定められている言葉を意味する「季語」、特定の言葉の前に置かれ、その語を修飾する言葉を指す「冠辞」などがあります。
序詞の意味
序詞とは
序詞とは、ある語句を導くための前置きする言葉を指しています。
序詞の読み方
序詞は「じょことば」という読み方をしますが、「じょし」という読み方をすることもでき、意味は全く同じです。ただし、「じょし」という読み方には、前書きや、演劇などの前口上という意味もあります。
序詞は「有心の序」と「無心の序」の分けられる
序詞は大きく二つに分けられており、うち一つである「有心の序」(読み方:うしんのじょ)は導かれた特定の言葉と意味で繋がります。「秋づけば尾花が上に置く露の」という序詞を用いて「消ぬ」を導き、「消ぬべくも吾は思ほゆるかも」と続けています。
もう一方の「無心の序」は、導かれることになる特定の言葉とは発音で繋がります。例えば「みかの原わきて流るるいづみ川」という序詞を用いて、すぐ後ろに「いつみ」を導いて「いつみきとてか恋しかるらむ」と続けています。
前者は「のように」と比喩表現のように訳されることがほとんどですが、後者は音の関連しかないため比喩表現としては上手く訳すことができないことがあります。
序詞の類語
序詞の類語・類義語としては、前の方に書いた文章を意味する「前文」、文章の初めの書き出しの部分を意味する「頭書」、主題に入る前のはじまりの部分を意味する「導入」、本論への導入部分として最初に述べられる部分を指す「序論」などがあります。
掛詞の意味
掛詞とは
掛詞とは、一つの言葉に二つの意味を同時に持たせる技法を指しています。
掛詞は今日でいうダジャレやダブルミーニングを意味するため、和歌の日本語訳はどちらの意味も訳にほとんど使われていますが、無理に入れることができなければ訳に含まれないこともあるようです。
掛詞の実例
例えば、「逢坂」と「逢う」、「明石」と「明かし」、「松帆」と「待つ」などのように地名と別の意味を表したり、「長雨」と「眺め」、「夜」と「寄る」などのように物と別の意味を表します。
基本的に、実際に和歌の中で掛詞が使われる際には「まつ」や「よる」のようにひらがなで表記されることがほとんどです。
掛詞の類語
掛詞の類語・類義語としては、同音や似た音の言葉に掛けて言う気の利いた文句を意味する「洒落」、言葉のあやを意味する「詞藻」(読み方:しそう)、口調や音声を似せて意味の異なる滑稽な句を作る言葉遊びを指す「語呂合わせ」などがあります。
枕詞の例文
この言葉がよく使われる場面としては、決められた言葉の前に置いて修飾したり語調を整える言葉を意味する時などが挙げられます。
例文1のように和歌などの用語ではなく、例文2や例文3のように日常会話においても多く使われています。
序詞の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある語句を導くための前置きする言葉を意味する時などが挙げられます。
例文2の序詞は「じょことば」ではなく「じょし」という読み方をすることがほとんどで、演劇などにおいて観客に内容を暗示したり、幕前の経過を報告する前口上を意味します。
掛詞の例文
この言葉がよく使われる場面としては、一つの言葉に二つの意味を同時に持たせる技法を意味する時などが挙げられます。
例文2の掛詞という言葉は、短歌に限った話で使われているわけではないため、洒落やダブルミーニングなどの言葉に置き換えて使うことができます。
枕詞と序詞と掛詞どれを使うか迷った場合は、五音一語の前置きされる言葉を表す場合は「枕詞」を、二句以上の前置きされる言葉を表す場合は「序詞」を、一語に二つの意味を持たせる技法を表す場合は「掛詞」を使うと覚えておけば間違いありません。