似た意味を持つ「懐疑的」(読み方:かいぎてき)と「批判的」(読み方:ひはんてき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「懐疑的」と「批判的」という言葉は、どちらも「同調しないさま」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
懐疑的と批判的の違い
懐疑的と批判的の意味の違い
懐疑的と批判的の違いを分かりやすく言うと、懐疑的とは同調せずに疑うさまを表し、批判的とは同調せずに分析するさまを表すという違いです。
懐疑的と批判的の使い方の違い
一つ目の懐疑的を使った分かりやすい例としては、「政策の経済効果について懐疑的な意見が多いようだ」「懐疑的な人は臆病で慎重な傾向があります」「停戦交渉の進展を人々は懐疑的に思う」などがあります。
二つ目の批判的を使った分かりやすい例としては、「批判的思考はなぜ必要なのでしょうか」「彼氏を批判的な目で見るようになった」「批判的読解力を育成する」「批判的な視点をもって物事を検討する」などがあります。
懐疑的と批判的の使い分け方
懐疑的と批判的という言葉は、物事や意見などに対して、安易に賛成せずに同調しないさまを表します。二つの言葉は、どちらも否定的なニュアンスを伴いますが、意味や使い方には違いがあります。
懐疑的とは、ある物事に対して疑うさまを意味します。「本当だろうか」「どうしてだろう」と疑問を持つ傾向を表し、上記の例文にある「懐疑的な意見」とは、ある事柄が偽りや見せかけではないかと疑うような意見のことです。
批判的とは、物事の良し悪しを判定するさまや、欠点や誤りを見つけて分析するさまを意味します。「批判的読解力」とは、文書や書物に書かれていることを、鵜呑みにせず客観的に吟味し、判断しながら読むことです。
懐疑的と批判的の英語表記の違い
懐疑的を英語にすると「unbelieving」「skeptical」「wary」となり、例えば上記の「懐疑的な意見」を英語にすると「skeptic opinion」となります。
一方、批判的を英語にすると「critical」「judgmental」となり、例えば上記の「批判的思考」を英語にすると「critical thinking」となります。
懐疑的の意味
懐疑的とは
懐疑的とは、ある事柄に対して疑う傾向にあるさま、疑いをもって物事に接する傾きのあるさまを意味しています。
表現方法は「懐疑的に思う」「懐疑的になる」「懐疑的な見方」
「懐疑的に思う」「懐疑的になる」「懐疑的な見方」などが、懐疑的を使った一般的な言い回しです。
懐疑的の使い方
懐疑的を使った分かりやすい例としては、「懐疑的な人は常に物事を疑っています」「彼女の懐疑的な性格からすると信じてくれないだろう」「ロバート・ボイルは懐疑的化学者を出版しました」などがあります。
その他にも、「私は幼児への英語教育に懐疑的でした」「詐欺にあってから何事にも懐疑的に思うようになった」「防衛本能から懐疑的になることがあります」「占いに懐疑的な人は男性に多い」などがあります。
懐疑的という言葉の「懐疑」とは、疑いを抱くことや怪しむことであり、物事の価値や自他の見解などについて疑いを持つことを表します。そのような性質を表す「的」と結び付き、懐疑的とは、ある事柄や概念について疑問を持っている様子を意味する言葉です。
「懐疑的な人」の意味
上記の例文にある「懐疑的な人」とは、常に物事を疑っている人を意味します。疑う気持ちが強く、簡単に他人を信用しなかったり、物事を素直に受け入れられないような状態にある人のことです。「疑り深い人」とも言います。
懐疑的の対義語
懐疑的の対義語・反対語としては、愛情や衝動などによって理性的な判断ができないさまを意味する「盲目的」、見当をつけないでやみくもに事をすることを意味する「盲滅法」、むやみやたらに信じることを意味する「妄信」、実際よりも高くみて信頼しすぎることを意味する「過信」などがあります。
懐疑的の類語
懐疑的の類語・類義語としては、疑う気持ちが強いことや簡単に信用しないことを意味する「疑り深い」、危険や災害に備えて用心することを意味する「警戒」、よく注意して十分に心をくばっていることや警戒心が強いことを意味する「用心深い」などがあります。
批判的の意味
批判的とは
批判的とは、批判する態度や立場をとるさま、否定的に批評するさまを意味しています。
表現方法は「批判的な意見」「批判的な目で見る」「批判的に考察する」
「批判的な意見」「批判的な目で見る」「批判的に考察する」などが、批判的を使った一般的な言い回しです。
批判的の使い方
批判的を使った分かりやすい例としては、「父は私のお金の使い方に批判的だ」「息子は批判的な態度をとる年頃です」「文部科学省は批判的思考を育成しようとしている」「社会問題への批判的精神を持つ」などがあります。
その他にも、「ビジネスで役立つ批判的思考力を養う」「早期の英語教育に批判的な人もいます」「哲学者ロイ・バスカーは批判的実在論を唱えました」「文献を批判的に読むようにしています」などがあります。
批判的という言葉の「批判」とは、物事の是非や善悪などを判定すること、人の言動などの誤りを指摘し正すべきであると論じることです。批判的とは、間違いや欠点を見つけ、それらを注意深くとらえる傾向にあることを意味する言葉です。
「批判的思考」の意味
批判的を用いた日本語には「批判的思考」があります。批判的思考とは、「クリティカル・シンキング」とも言い、ある物事の問題をあらゆる面から分析して、最適解に導こうとする思考方法です。絶対的な正解がないビジネスにおいて、この批判的思考を持つことは重要だとされています。
批判的の対義語
批判的の対義語・反対語としては、そのとおりであると同意するさまや積極的に認めるさまを意味する「肯定的」、相手の立場を尊重しその人の益になるように考えるさまを意味する「好意的」、褒めたたえることを意味する「称賛」などがあります。
批判的の類語
批判的の類語・類義語としては、否定する内容をもつさまを意味する「否定的」、物事の是非や善悪などを指摘して自分の評価を述べることを意味する「批評」、人の欠点や過失などを取り上げて責めることを意味する「非難」、罪や責任を問いただし非難することを意味する「糾弾」などがあります。
懐疑的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある物事や概念について、疑問を持っているように見受けられることを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「懐疑的に思う」とは、本当かどうか怪しむことや、不審に思うことを意味します。例文4の「懐疑的」と「猜疑的」の違いは、懐疑的は単純に疑う気持ちを表しますが、猜疑的は他人の言動を疑ったり妬んだりするネガティブな気持ちを表す点にあります。
批判的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある人や物事に対して、すぐ同調や受容をせずに批判しようとするさまを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「批判的思考力」とは、物事の問題をあらゆる面から特定し分析することによって、最も適した答えを合理的に導き出す能力のことです。問題解決能力や情報リテラシーなどと共に、次代を担う人材が身に付けるべき「21世紀型スキル」の一つとされています。
懐疑的と批判的という言葉は、どちらも「同調しないさま」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、疑っている様子を表現したい時は「懐疑的」を、物事の価値や是非を判定しようとする様子を表現したい時は「批判的」を使うようにしましょう。