似た意味を持つ「看過」(読み方:かんか)と「黙認」(読み方:もくにん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「看過」と「黙認」という言葉は、見逃すことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
看過と黙認の違い
看過と黙認の意味の違い
看過と黙認の違いを分かりやすく言うと、看過は善し悪しの判断をせずにやり過ごすことを表現する時に使い、黙認は何も言わずに善しとすることを表現する時に使うという違いです。
看過と黙認の使い方の違い
一つ目の看過を使った分かりやすい例としては、「このまま過失を看過することはできない」「看過できない振る舞いにファンが失望した」「過去看過された問題をもう一度見直す時が来た」などがあります。
二つ目の黙認を使った分かりやすい例としては、「彼の罪を黙認した上司への信頼度も変わる」「黙認状態となっている内容を今更確認しようとは思わない」「明言はされていないものの黙認されているルールが存在する」などがあります。
看過と黙認の使い分け方
看過は、対象をじっと見つめることを意味する看という漢字と、その物事をそのままにして過ごすことを意味する過という漢字が組み合わさった言葉で、目には入れているもののそのままにしておくことを意味します。
一方の黙認は、声や言葉を発しないことを意味する黙という漢字と、許すことや問題がないこととして受け入れることを意味する認という漢字が組み合わさった言葉で、言葉にはしないものの差し支えない物事として扱われることを意味します。
悪い出来事に対して看過という言葉を使う場合は見て見ぬふりをすることを表し、黙認を使う場合は悪事だとしても悪くないこととして認められることを表すため、看過と黙認という言葉には違いがあると言えます。
看過と黙認の英語表記の違い
看過を英語にすると「overlook」となり、例えば上記の「過失を看過する」を英語にすると「overlook a fault」となります。
一方、黙認を英語にすると「connivance」となり、例えば上記の「彼の罪を黙認した」を英語にすると「connived at his guilty」となります。
看過の意味
看過とは
看過とは、その出来事を目にしてもそのまま放っておくことを意味しています。
看過の使い方
看過を使った分かりやすい例としては、「看過できないほどの損失が生まれてしまった」「従来の宗教にとって新派の登場は看過しがたいことだろう」「その問題に関して論じる際に看過すべきではない史料もいくつかある」などがあります。
その他にも、「看過されるはずのない前歴を持つ教員に批難が殺到した」「人気低迷は看過されがちで新しいコンテンツがどんどん作られていく」「今の状況は決して看過できず、今後協議を重ねる必要がある」などがあります。
看過という言葉は物事をそのままにして過ごすことを意味するため、その物事の善し悪しの判断は行なっていません。悪事に対して使う場合には、正しいことなのか悪いことなのかも考えずに見過ごしたり見なかったことにすることを表します。
表現方法は「看過できない」「看過される」「看過しがたい」
上記例文のように、看過を使って「看過できない」「看過される」「看過しがたい」「看過すべきではない」などの表現をすることができ、ビジネスシーンや公的な書面などで多く使われていますが、親しい間柄での会話で使うには少しばかり硬い表現です。
看過の類語
看過の類語・類義語としては、見ても気が付かないことを意味する「見落とし」、見て見ぬふりをすることを意味する「目こぼし」、知っていても知らないかのように振舞うことを意味する「知らん顔」などがあります。
看過の対義語
看過の対義語・反対語としては、悪事などを暴き世間に発表することを意味する「摘発」、重要なものとして扱うことを意味する「重視」、悪い点などを改めて正すことを意味する「是正」があります。
黙認の意味
黙認とは
黙認とは、何も言わずに許すことを意味しています。
表現方法は「黙認する」「黙認できない」「黙認していた」
「黙認する」「黙認できない」「黙認していた」などが、黙認を使った一般的な言い回しです。
黙認の使い方
黙認を使った分かりやすい例としては、「不正行為の黙認は誰のためにもならない」「弟の衣類を借りることは黙認されているようで今まで何度か世話になっている」「昼寝を黙認せざるを得ないほど作業効率が上がっている」などがあります。
その他にも、「子どもが嘘を吐くのを最初こそ黙認していた」「黙認は寛大さや優しさに近いが大きく異なる」「他者の作品を複製することを黙認しているわけでなく都度対応している時間がないだけだ」などがあります。
黙認は、実際に許可を出すことはしないものの差し支えない物事として許されることを意味するため、ルール違反とされる物事やそもそも決まりとして定まっていない出来事を悪くはないこととして扱う場合に使われます。
上記例文の「不正行為の黙認」のように罪に問われるような行為などに対して使われるのはもちろん、「昼寝を黙認」などのように日常生活においてや、ビジネスシーンなどにおいて使われることも多くある言葉です。
黙認の対義語
黙認の対義語・反対語としては、その物事を厄介事や面倒なものと認識することを意味する「問題視」があります。
黙認の類語
黙認の類語・類義語としては、意義を唱えることなく服従することを意味する「黙従」、黙って見ているだけで手を出さないことを意味する「座視」、知っていながら何も言わずに見過ごすことを意味する「黙過」などがあります。
看過の例文
この言葉がよく使われる場面としては、その出来事を目にしてもそのまま放っておくことを意味する時などが挙げられます。
例文1や例文3の看過という言葉は、黙認という言葉に置き換えて使うことができますが、その場合は一度善いこととして扱われていたことを示すこととなるため、ニュアンスが若干異なることに注意が必要です。
黙認の例文
この言葉がよく使われる場面としては、何も言わずに許すことを意味する時などが挙げられます。
例文1の「黙認耕作地」とは、在日米軍が取り上げたとされる軍用地を、使用していないという理由で元々の地主らに対して一時的に使用を認めている土地を指します。
看過と黙認どちらを使うか迷った場合は、善し悪しの判断をせずにやり過ごすことを表す場合には「看過」を、何も言わずに善しとすることを表す場合は「黙認」を使うと覚えておけば間違いありません。