似た意味を持つ「信じる」(読み方:しんじる)と「信ずる」(読み方:しんずる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「信じる」と「信ずる」という言葉は、どちらも思い込み疑わないことを意味するという共通点があり、使う場面は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
信じると信ずるの違い
信じると信ずるの意味の違い
信じると信ずるの違いを分かりやすく言うと、辞書に載っている現代風の読み方か、古い読み方かの違いです。「信じる」と「信ずる」は、どちらも同じ意味を持つ言葉で、現代では「信じる」の方を一般的な読み方として使用しています。
信じると信ずるの使い方の違い
一つ目の信じるを使った分かりやすい例としては、「信じるか信じないかはあなた次第」「人を信じることと期待することは違う」「宗教を信じるも信じないも自由」「私は他人を信じる事が出来ない」「信じるに値しない」「信じる人は救われる」などがあります。
二つ目の信ずるを使った分かりやすい例としては、「信ずるが故に神あり」「仏の智慧と慈悲を信ずる」「功少なくして弊多きことを信ずる」などがあります。
信じると信ずるの2つが存在する理由
なぜ、信「じる」と信「ずる」という二種類の語尾が存在するのか。これは、日本語の口語文法と文語文法の決まりによる違いがあるからです。口語文法とは、しゃべり言葉のことで、文語文法とは、文章で書く際の言葉という意味です。
これらの日本語文法には「活用法」という考え方があります。活用法とは、文章の流れによって単語の語尾を違和感のないように変えることを意味します。
まさしく「信じる」「信ずる」のように、最初の言葉は同じであっても語尾が違う言葉が存在するのは、活用法によって文脈に合うかたちで語尾が変えられているからです。
信じる、信ずるという言葉は「サ行変格活用」という活用法によって、語尾を変えています。サ行変格活用では、文章の流れによって語尾をサ行の言葉である「さしすせそ」を元にして変えていきます。
「信じる」「信ずる」という言葉の場合、「信」という先頭の言葉はそのままに、語尾を「未然形:じ」「連用形:じ」「終止形:じる・ずる」「連体形:じる・ずる」「仮定形:じれ・ずれ」「命令形:じろ・じよ・ぜよ」という風に変化させます。
語尾の変化の形である未然形や連用形などの名称は、その言葉がどのような文脈で使われているかの形のことを指しています。例えば「未然形」というのは「まだそうなってはいない」という意味を持ち、否定形と一緒に使われます。
つまり、信じるの未然形の表現は「信じない」となります。変化しない先頭の「信」に未然形の「じ」をつけて、最後に否定形の「ない」を付けた形です。
このように、日本語には、様々な文法上の決まりがあります。「信じる」「信ずる」というのは、両方ともこの文法で言うところの「終止形」です。
終止形というのは、言い切りの形という意味があります。文章ではなく、ひとつの単語として使う際には終止形を使います。
信じると信ずるの使い分け方
「信」の終止形には「じる」と「ずる」の二種類があります。これが「信じる」と「信ずる」の違いです。二種類の語尾がある場合、どちらを使っても間違いではありませんが、どちらか一方が、一般的に使われているものであることがほとんどです。
「信」の場合、辞書に記載されているのは「信じる」という言葉です。こちらが、現代では一般的に使用されている言葉であり、「信ずる」というのは古い言い方になります。
しかし、意味に違いはありませんし、どちらも文法的には使えるものですので、個々人の好みや文章の前後の文脈などを考えて、自由に使い分けが出来るものであると言えます。
信じるの意味
信じるとは
信じるとは、思い込み疑わないことを意味しています。
表現方法は「自分を信じる」「本心から信じる」「信じるな」
「自分を信じる」「本心から信じる」「信じるな」などが、信じるを使った一般的な言い回しです。
信じるの使い方
信じるを使った分かりやすい例としては、「必ずできると信じている」「自分を信じることが大切」「真実と信じる相当の理由がある」「自分の目で見たものは信じる」「本心から信じるということができない」「この商品が売れると信じている」などがあります。
その他にも、「自分が信じる道を行く」「信じるも八卦疑うも八卦」「信じる要素しかない」「信じるな疑うな確かめろ」「信じる奴がジャスティス」などがあります。
信じるの対義語
信じるの対義語・反対語としては、信じないことを意味する「疑う」があります。
信じるの類語
信じるの類語・類義語としては、信じ頼りにすることを意味する「信頼する」などがあります。
信じるの信の字を使った別の言葉としては、約束を守ることを意味する「信義」、神などを信じる行いを意味する「信仰」、信じ守っている考え方を意味する「信条」、自分が信じている考え方を意味する「信念」、信じ受け入れることを意味する「信用」などがあります。
信ずるの意味
信ずるとは
信ずるとは、信じるという言葉の少し古い言い方を意味しています。信ずるというのは「信ず」という言葉のサ行変格活用の終止形です。
表現方法は「自分を信ずる」「信ずるに値する」「信ずる者は救われる」
「自分を信ずる」「信ずるに値する」「信ずる者は救われる」などが、信ずるを使った一般的な言い回しです。
信ずるの使い方
信ずるを使った分かりやすい例としては、「多くの選択肢があるが最終的に信ずる者は救われる」「真心は信ずるに足る」「信ずる意志が必要である」「本願を信ずる」「弥陀の願力を信ずる」などがあります。
信ずるは辞書に載っていない
意味としては、信じると全く同じものであり、文章の前後の文脈などによって使い分けることが出来るものです。辞書には「信じる」は載っていても、「信ずる」という言葉は載っていないことが多く、信ずるは現代語よりも少し古い表現です。
しかし、意味は同じであるので、「信じる」「信ずる」のどちらを使っても間違いではありません。古風な雰囲気を出したい時などには、あえて「信ずる」という言葉を使うのも良いでしょう。
他にも、例えば「信ず」という言葉の命令形を考えてみると、現代風の言い方であれば「信じろ」となりますが、古風な言い回しになると「信じよ」または「信ぜよ」となります。
この「信じよ」「信ぜよ」と同じ雰囲気を持つのが「信ずる」であると考えると、わかりやすいでしょう。
信じるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、思い込み疑わないことを表現で表したい時などが挙げられます。
基本的に「信じる」という言葉は、このように人や教えに対しての自分のアクションとして使われることが多いです。
信ずるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、信じるという言葉を少し古風な表現で表したい時などが挙げられます。
上記の例文を見れば分かる通り、「信ずる」を「信じる」に置き換えても全く文章としての問題はありません。
「信ずる」を使う場合は「信じる」と「信ずる」の意味を知っている人からすると、古風な人間だなと思われることでしょう。