似た意味を持つ「あまつさえ」と「その上」(読み方:そのうえ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「あまつさえ」と「その上」という言葉は、どちらもある物事に他の物事が付け加わることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「あまつさえ」と「その上」の違い
「あまつさえ」と「その上」の意味の違い
「あまつさえ」と「その上」の違いを分かりやすく言うと、「あまつさえ」は悪いことが加わる場合に使う、「その上」は良いことと悪いことどちらが加わる場合にも使えるという違いです。
「あまつさえ」と「その上」の使い方の違い
一つ目の「あまつさえ」を使った分かりやすい例としては、「彼は反省の色なくあまつさえ薄笑いまで浮かべている」「風が強くなりあまつさえ雨も降ってきました」「彼女の話は退屈であまつさえ少々長すぎる」などがあります。
二つ目の「その上」を使った分かりやすい例としては、「やることはきちんとやってその上で自分のやりたいことをやるべきだろう」「今日は部屋の掃除をしてその上洗濯もしなければならない」「今日は外で遊ぶのには寒すぎるしその上雨まで降ってきました」などがあります。
「あまつさえ」と「その上」の使い分け方
「あまつさえ」と「その上」はどちらも物事に他の物事が付け加わることを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「あまつさえ」は上記の「彼は反省の色なくあまつさえ薄笑いまで浮かべている」「彼女の話は退屈であまつさえ少々長すぎる」などように、悪いことをが加わるというマイナスなイメージでしか使うことはできません。
例えば、「大学にも合格したしあまつさえ彼女もできました」「社長から仕事のことで褒められあまつさえ昇進しました」などのように、プラスのイメージで使うのは間違った使い方になります。
一方、「その上」は良いことと悪いことどちらでも加わる場合に使えるので、プラスとマイナスどちらのイメージでも問題ないと覚えておきましょう。
「あまつさえ」と「その上」の英語表記の違い
「あまつさえ」を英語にすると「besides」「moreover」「in addition」となり、例えば上記の「彼女の話は退屈であまつさえ少々長すぎる」を英語にすると「Her speech was boring, besides being a little too long」となります。
一方、「その上」を英語にすると「moreover」「in the bargain」「What’s more」「besides」となり、例えば上記の「今日は外で遊ぶのには寒すぎるしその上雨まで降ってきました」を英語にすると「It is way too cold for playing outside today, besides, it starts rains as well」となります。
「あまつさえ」の意味
「あまつさえ」とは
「あまつさえ」とは、別の物事や状況がさらに加わることを意味しています。
「あまつさえ」の漢字表記
「あまつさえ」を漢字にすると、「剰え」と表記することができますが、あまり一般的ではありません。余程の理由がない限り、ひらがなの「あまつさえ」を使うようにしましょう。
「あまつさえ」の使い方
「あまつさえ」を使った分かりやすい例としては、「雪山で遭難しあまつさえ天候も悪くなってきました」「校長の話はつまらなくあまつさえ少し長いです」「自転車が故障してあまつさえ雨も降ってきました」などがあります。
「あまつさえ」は別の物事や状況がさらに加わることを意味する副詞です。副詞とは品詞の一つであり、他の言葉を修飾して説明を加えるという役割を担っています。
「あまつさえ」は悪いことが重なったり、事態が悪化する場合にのみ使えるというのが特徴です。そのため、良いことが重なる場合や、事態が好転する場合には使用することはできないと覚えておきましょう。
「あまつさえ」の誤用例
誤用の例を挙げると、「企業から内定をもらいあまつさえ彼氏もできました」「彼は守備も上手いしあまつさえバッティングも素晴らしい」「冬の寒さも収まりあまつさえ過ごしやすい季節になりました」などがあり、適切な使い方ではありません。
「あまつさえ」の由来
「あまつさえ」の由来は古語の「あまりさえ」です。「あまりさえ」は「あまつさえ」と同じ意味を持っており、「あまりさえ」を読みやすく促音化したのが「あまっさへ」になります。この「あまっさへ」がさらに変化したのが、現代で使われている「あまつさえ」です。
「あまつさえ」の類語
「あまつさえ」の類語・類義語としては、その上さらにのことを意味する「併せて」、それに加えてのことを意味する「おまけに」、その上またのことを意味する「尚且つ」などがあります。
「その上」の意味
「その上」とは
「その上」とは、前の事柄を受けてそれにさらにある事が付け加わることを意味しています。
「その上」の漢字表記
「その上」を漢字にすると、「其の上」と表記することができますが、あまり一般的ではありません。余程の理由がない限り、「その上」の方を使うようにしましょう。
「その上」の使い方
「その上」を使った分かりやすい例としては、「彼はホームランを打つしその上守備も良い素晴らしい選手です」「昨日はごちそうになりその上お土産まで貰いました」「急に気温が下がりその上雨までも降ってきました」などがあります。
「その上」は前の事柄を受けてそれにさらにある事が付け加わることを意味する接続詞です。接続詞とは前の文と後ろの文を繋ぐ言葉で、「しかし」「だから」「したがって」などがあります。
「その上」は良いことと悪いことどちらを加える場合でも使えるというのが特徴です。そのため、プラスのイメージとマイナスのイメージの両方で使うことができます。
例えば、「彼はパスが上手いだけではなく、その上守備もできる選手です」とするとプラスのイメージになりますし、「咳が出るようになっただけではなく、その上熱も出てきた」とすると悪いことが加わったのでマイナスのイメージになっています。
「その上」の類語
「その上」の類語・類義語としては、それに加えてのことを意味する「それに」、ある事柄に他の事柄が加わることを意味する「且つ」、前述の事柄を受けてさらに別の事柄を加えることを意味する「しかも」などがあります。
「あまつさえ」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、別の物事や状況がさらに加わることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「あまつさえ」はマイナスのイメージで使う言葉です。
「その上」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、前の事柄を受けてそれにさらにある事が付け加わることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「その上」はプラスとマイナスどちらのイメージでも使える言葉です。
「あまつさえ」と「その上」はどちらもある物事に他の物事が付け加わるを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、悪いことが加わる場合に使うのが「あまつさえ」、良いことと悪いことどちらが加わる場合にも使えるのが「その上」と覚えておきましょう。