似た意味を持つ「大御所」(読み方:おおごしょ)と「重鎮」(読み方:じゅうちん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「大御所」と「重鎮」という言葉は、どちらも「ある分野で大きな勢力を持っている人」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
大御所と重鎮の違い
大御所と重鎮の意味の違い
大御所と重鎮の違いを分かりやすく言うと、重鎮よりも大御所の方が、大物で影響力を持っていることを表すという違いです。
大御所と重鎮の使い方の違い
一つ目の大御所を使った分かりやすい例としては、「アパレル業界の大御所に取材を申し込む」「不祥事による大御所芸人の番組終了が相次いでいる」「家康は江戸を秀忠に譲り、大御所政治を執り行った」などがあります。
二つ目の重鎮を使った分かりやすい例としては、「企業の重鎮にスピーチしていだだく」「歌舞伎界の重鎮として活躍する」「江戸幕府の重鎮として手腕をふるう」「重鎮政治家による女性蔑視発言が問題になっている」などがあります。
大御所と重鎮の使い分け方
大御所と重鎮という言葉は、ある特定の分野や業界において大きな影響力を持っている人を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
大御所とは、引退しても陰で強い影響力を持っている人や、ある分野における権威者として大きな勢力をもつ人を意味します。現在では、ベテランの大物芸能人や大物政治家に対して使われることが多い言葉です。
重鎮とは、ある方面で重要な地位や力を有する人、組織や集団の中で中心となってその団体を動かしてゆく人を意味します。基本的に、ある分野や業界において、大きな功績を残したり、評判が高い人物を指します。
二つの言葉の違いは、大物である度合いにあります。大御所は重鎮よりも、大物で影響力を持っていることを表します。大御所と重鎮を比べると、大御所の方が格上であると言えるでしょう。
大御所と重鎮の英語表記の違い
大御所を英語にすると「colossal figure」「master」「mogul」となり、例えば上記の「アパレル業界の大御所」を英語にすると「apparel mogul」となります。
一方、重鎮を英語にすると「authority」「grand person」「heavyweight」となり、例えば上記の「企業の重鎮」を英語にすると「a corporate heavyweight」となります。
大御所の意味
大御所とは
大御所とは、すでに引退して表面に出ないが、その世界で大きな勢力をもっている人、その道の大家として大きな勢力をもつ人を意味しています。
その他にも、「将軍の隠居所、隠居した将軍の尊称」の意味も持っています。
大御所の読み方
大御所の読み方は「おおごしょ」です。誤って「だいごしょ」「おおみどころ」などと読まないようにしましょう。
大御所の使い方
「大御所芸能人と言えば誰を思い浮かべますか」「大御所女優たちの美しさの秘訣が知りたい」「大御所声優さんのサインをいただきました」などの文中で使われている大御所は、「その世界で大きな勢力をもっている人」の意味で使われています。
一方、「家康は駿府に隠居し大御所と呼ばれた」「大御所時代に江戸文化が確立しました」「家斉は大御所となっても権力を握り続けた」などの文中で使われている大御所は「将軍の隠居所、隠居した将軍」の意味で使われています。
大御所の語源
大御所とは、その昔「おおみもと」と読み、 天皇のおいでになるところを意味し、天皇や皇族など高貴な人の住居を指しました。その後、鎌倉幕府には隠退した前将軍を大御所と呼ぶ慣例が生まれ、江戸時代には、徳川家康や家斉は隠退して大御所と言われるようになりました。
現在では、大御所という言葉は、隠退しても勢力を持っている人、その道の大家として大きな勢力を持っている人の意味で用いられています。特に、大物芸能人や多大な影響力を持つ政治家を指す言葉です。
「大御所政治」の意味
大御所を用いた日本語には「大御所政治」があります。大御所政治とは、前将軍が隠退後も在職中と同様の実権をもち,政治を執り続けることです。一般に大御所政治と言えば、江戸時代の初代将軍徳川家康と11代将軍家斉の大御所政治を指します。
大御所の対義語
大御所の対義語・反対語としては、技術や技芸の未熟な者をあざけっていう語を意味する「ぺいぺい」などがあります。
大御所の類語
大御所の類語・類義語としては、その方面で大きな影響力をもっている人物を意味する「大物」、ある社会や分野で一番すぐれていると認められた人を意味する「第一人者」、芸術の分野で際立ってすぐれた人を意味する「巨匠」、将軍の後嗣の住居を意味する「小御所」などがあります。
重鎮の意味
重鎮とは
重鎮とは、ある社会や分野で重きをなす人物を意味しています。
重鎮の読み方
重鎮の読み方は「じゅうちん」です。誤って「じゅうてん」「ちょうちん」などと読まないようにしましょう。
重鎮の使い方
重鎮を使った分かりやすい例としては、「政界の重鎮に失礼がないよう配慮する」「重鎮の意思に反することはできません」「先生は英語教育界の重鎮でした」「会議室に国家の重鎮達が集まっている」などがあります。
その他にも、「自民党の重鎮が安保政策について語った」「重鎮とは褒め言葉なのだろうか」「元祖大食いタレントが重鎮感を漂わせてる」「M1グランプリではお笑い界の重鎮的な芸人が審査員となる」などがあります。
重鎮の「重」は目方が重いことや、大切であることを表します。「鎮」は訓読みで「しずめる」と読み、おもしや押さえとなるものを表す漢字です。重鎮とは、おもしの意味から、重要な押さえとなる有力者や、その方面での重きをなす中心的な人物を意味する言葉です。
重鎮という言葉は、主にビジネスシーンで使われ、組織において中心となってその団体を動かしてゆく人を表します。単なるベテランではなく、地位や実力などを兼ね備え、重きをなしている中心人物のことです。
「重鎮豆腐」「重鎮率」は誤り
重鎮の誤った使い方には「重鎮豆腐」「重鎮率」があります。正しくは、パックに隙間なく詰められたタイプの豆腐を意味する「充填豆腐」(読み方:じゅうてんとうふ)と、単位格子の体積に含まれる原子の体積の割合を意味する「充填率」(読み方:じゅうてんりつ)です。
重鎮の対義語
重鎮の対義語・反対語としては、身分や地位が低い人を意味する「下っ端」(読み方:したっぱ)などがあります。
重鎮の類語
重鎮の類語・類義語としては、ある分野において優れたものとして信頼されている人を意味する「権威者」、組織や団体の中心にいて指導的な役割を果たす人を意味する「首脳」、団体や組織の中で中心となる人を意味する「幹部」、要職にある人を意味する「要人」などがあります。
大御所の例文
この言葉がよく使われる場面としては、 政界から隠退しても影で強い勢力を持っている人、その道の大家として大きな勢力を持っている人、将軍の父の居所またその敬称などが挙げられます。
例文1から例文3の大御所は、その道の大家として大きな勢力を持っている人の意味で用いられています。例文4や例文5の大御所は、将軍の父の居所や、将軍の父の敬称の意味で用いられています。
重鎮の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある社会で重きをなす人物を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように重鎮の慣用的な言い回しには、「○○界の重鎮」「○○界における重鎮」などがあります。
大御所と重鎮という言葉は、どちらも「ある分野で大きな勢力を持っている人」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、より大きな勢力や影響力を持っている人を表現したい時は「大御所」を使うようにしましょう。