同じ「ひげ」という読み方、似た意味を持つ「髯」と「髭」と「鬚」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どれを使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「髯」と「髭」と「鬚」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
髯と髭と鬚の違い
髯と髭と鬚の部位の違い
髯と髭と鬚の違いを分かりやすく言うと、「髯」は頬の部分に生えるひげのことを指し、「髭」は口の上の部分に生えるひげのことを指し、「鬚」はアゴの部分に生えるひげのことを指しているという違いです。
髯と髭と鬚の英語表記の違い
「ひげ」というのは、様々な箇所に生えるものです。日本でも海外でも、どの場所に生えるものかで名称が違っています。
例えば、英語では日本の「髯」にあたる頬のひげは「Sideburn」(読み方:サイドバーン)と呼ばれ、「髭」にあたる口の上のひげは「Mustache」(読み方:ムスタッシュ)、「鬚」にあたるアゴのひげは「Beard」(読み方:ビアード)と呼ばれます。
日本におけるひげの歴史
日本では、中世から江戸時代あたりまでは、男性、主に武士についてはひげを生やすことが当然とされていて、ひげのない人は情けない人であるとされていました。豊臣秀吉などは、自身のひげが薄いことを気にして、付けひげをしていたと言われています。
ここで言うところのひげというのは、「髭」の文字で表現されるもので、つまり口の部分のひげであると言えます。
また、昔は女性については眉を全て剃り、自分で書く習慣があったため、顔に毛を蓄える「ひげ」というのは男性の象徴であり、そこには眉毛も含まれていたと言われています。
しかし、江戸幕府が安定してくると、戦国武士の力が弱まってきます。男らしいとされていたひげは、風紀を乱すものであるとして、禁止されるようになりました。武士はひげを剃る事によって、反逆心がないことを示したとされています。
その後は、西洋の文化が日本に入ってきて、西洋人のマネをする形で、再びひげが流行しはじめます。男性にとっての「ひげ」というのは、顔のどの部分に生やすにしても、流行に左右されるものであるという歴史があります。
髯と髭と鬚の使い分け方
「髯」「髭」「鬚」すべての漢字で使用されている「髟」というのは、「ひょう部」と呼ばれる漢字の部首で、毛を表現する漢字に多く使われるものです。どの部分に生える毛なのかによって、「髟」という部首にどんな形の字形を付け加えるかが決まります。
「ひげ」という言葉には、上記のように様々な書き方がありますが、全ての漢字が「髟」という部首から成り立っています。あとはどこの毛なのかによって、漢字を使い分けるようにしましょう。
髯の意味
髯とは
髯とは、頬の部分に生えるひげのことを意味しています。英語では「Sideburn」(読み方:サイドバーン)と呼ばれていて、これは人名から取った名称です。この「髯」という字は、常用漢字外の表記でもあります。
髯という漢字の語源
髯というのは、毛を意味する部首である「髟」という字に、しなやかという意味を持つ「冉」を合わせたものです。
この「髯」と呼ばれる部分については、もみあげ部分との境目が難しいものでもあります。美容業界では、この「髯」と「もみあげ」の線引きについて、頬骨の上の部分から耳に繋がる線を引き、それよりも下は「髯」、上は「もみあげ」としています。
髯は常用外漢字なので公用文で使えない
上記でも示した通り、「髯」という字は常用漢字外の表現です。公的な書類などに記載する際には「髯」ではなく「ひげ」とひらがなで書くようにしましょう。
髭の意味
髭とは
髭とは、口と鼻の間にある隙間に生えるひげのことを意味しています。英語では「Mustache」(読み方:ムスタッシュ)と呼ばれていて、これは英語で口を意味する「Mouth」が変形したものです。
この「髭」という字は、常用漢字外の表記でもあります。
髭という漢字の語源
髭というのは、毛を意味する部首である「髟」という字に、「嘴」(読み方:くちばし)という漢字の右上部分にある形と同じものを合わせたものです。
この「此」という字形は口元を表すものであり、そのことから、髭は口ひげのことを指すものだとわかります。
この「髭」というのは、口の上部分のひげについてのみ表現するものです。口の下の部分に生えるひげについては、アゴひげという表現になるので、髭という字では書きません。
髭は常用外漢字なので公用文で使えない
上記でも示した通り、「髭」という字は常用漢字外の表現です。公的な書類などに記載する際には「髭」ではなく「ひげ」とひらがなで書くようにしましょう。
表現方法は「髭が濃い男」「髭が生える」「髭を薄くする」
「髭が濃い男」「髭が生える」「髭を薄くする」などが、髯を使った一般的な言い回しです。
髭の使い方
髭を使った分かりやすい例としては、「髭が濃い男がモテると聞いたが全然モテないのだが」「髭が生えるので毎朝髭を剃らないといけない」「髭を薄くするためには脱毛サロンに通うしかないようだ」などがあります。
鬚の意味
鬚とは
鬚とは、アゴの部分に生えるひげのことや、動物の口元にあるひげのことを意味しています。また、ひげ状の細いものについても鬚と表現することがあります。
鬚は、英語では「Beard」(読み方:ビアード)と呼ばれています。この「鬚」という字は、常用漢字外の表記です。
鬚の語源
鬚というのは、毛を意味する部首である「髟」という字に「須」という字を合わせたものです。この「須」という字は、それだけでも「アゴひげ」という意味を持つ漢字です。
「鬚を払う」の意味
「鬚」という字は、ことわざのようなものとしても使用される漢字です。例えば「鬚を払う」という言葉があります。これは「権力者に媚びること」を意味しているもので、人のアゴの鬚に付いている塵を払う様子を示したものです。
鬚は常用外漢字なので公用文で使えない
上記でも示した通り、「鬚」という字は常用漢字外の表現です。公的な書類などに記載する際には「鬚」ではなく「ひげ」とひらがなで書くようにしましょう。
髯の例文
この言葉がよく使われる場面としては、、顔の中で頬の部分に生えるひげについて表現したい時などが挙げられます。英語では「Sideburn」と表現されるもので、これは人名に由来しています。常用漢字外の漢字なので、公的な書類などでは使えません。
頬骨の高い位置から耳へと繋がる線を引いて、それよりも下の部分について「髯」と表現します。上の部分については「もみあげ」という表現をされ、髪の毛と同じ扱いになります。
また、顔全体にひげの多い人のことを表現する際には「髯」という字が使われる傾向にあります。
髭の例文
この言葉がよく使われる場面としては、顔の中で口と鼻の間にある隙間に生えるひげについて表現したい時などが挙げられます。英語では「Mustache」と表現されるもので、これは英語で口を表す「Mouth」が変形したものです。
「髭」という字も常用漢字外の漢字なので、公的な書類などでは使えません。この漢字は、毛を表現する「髟」という部首に、「嘴」という字を形成する「此」という字を書きます。そのことを連想すると、髭が口の上側の毛であるとわかりやすいでしょう。
口の髭というのは、口の上側であり、鼻と口の間という範囲のみを示すものです。口の下側のひげについては、アゴのひげという分類になるので注意が必要です。
鬚の例文
この言葉がよく使われる場面としては、顔の中でアゴの部分に生えるひげについて表現したい時などが挙げられます。常用漢字外の漢字なので、公的な書類などでは使えません。また、動物のひげについても「鬚」という字で表現されることが多いものです。
例えば、猫の鬚や、クジラなどの大型の哺乳類の鬚などもこの字で表現されることが多くあります。クジラの鬚については「鯨鬚」(げいしゅ)という単語で示されることもあります。
人間の口ひげ、動物のひげだけでなく、ひげ状の細長いものについても「鬚」という字が使われることがあります。