似た意味を持つ「自戒」(読み方:じかい)と「自重」(読み方:じちょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「自戒」と「自重」という言葉は、どちらも「発言や行動を慎むこと」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
自戒と自重の違い
自戒と自重の意味の違い
自戒と自重の違いを分かりやすく言うと、自戒とは自分に対してのみ使える表現、自重とは自分だけでなく他人に対しても使える表現という違いです。
自戒と自重の使い方の違い
一つ目の自戒を使った分かりやすい例としては、「自戒を込めて英語の重要性をお話します」「自ら顧みて自戒の反省文を記す」「私の自戒を込めて申し上げます」「私自身の自戒の念も込めて皆さんにお願いしたい」などがあります。
二つ目の自重を使った分かりやすい例としては、「アニメを観る時間を自重する」「彼女は自尊自重の気持ちが強いようだ」「お酒とタバコを自重しなさい」「ご多忙とは存じますがお体ご自重ください」などがあります。
自戒と自重の使い分け方
自戒と自重という言葉は、どちらも自分の振る舞いや態度などを慎むことを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
自戒とは、自分で自分をいましめ慎むことを意味します。自分自身をいましめ律することを言い、誰かからの指示ではなく自ら進んで戒める様子を表す言葉です。「自戒を込めて」という言い回しで、内省的に自分に言い聞かせるニュアンスで使用されることが多い言葉です。
自重とは、軽率にならないように自分の発言や行動を慎むことを意味します。「自重する」という言い回しで自分の行動に対して使用するだけでなく、「お酒を自重しなさい」など他人の行動に対しても使用できる言葉です。また、自らを重んじる「自尊」や、健康に留意する「自愛」の意味もあります。
つまり、二つの言葉の違いは、使用できる対象です。次回は自分に対してのみ使用できますが、自重は自分だけでなく他人に対しても用いることができます。また、自重という言葉は、複数の意味があり、自尊や自愛という言葉に置き換えることが可能です。
自戒と自重の英語表記の違い
自戒を英語にすると「self discipline」「caution oneself」「self-admonition」となり、例えば上記の「自戒を込めて」を英語にすると「with self-discipline」となります。
一方、自重を英語にすると「self-respect」「prudence」「taking care of oneself」となり、例えば上記の「自重する」を英語にすると「take care of oneself」となります。
自戒の意味
自戒とは
自戒とは、自分の言動を自分でいましめ慎むことを意味しています。
自戒の読み方
自戒の読み方は「じかい」です。同じ読み方をする熟語に「自壊」や「次回」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
表現方法は「自戒を込める」「自戒の念」「自戒の意」
「自戒を込める」「自戒の念」「自戒の意」などが、自戒を使った一般的な言い回しです。
自戒の使い方
自戒を使った分かりやすい例としては、「いつも自戒の念を持ち続けてください」「他人のふるまいを我が身に置き換えて自戒する」「お金の使い方に品位が滲み出ると自戒を込めて思います」などがあります。
その他にも、「自戒を込めて失敗談をお話します」「自戒の念を込めて英語のスコアを公表します」「軽率な発言に反省と自戒を求める」「自らの言動を振り返り自戒の念を抱くことがあります」などがあります。
自戒とは、文字通り、自分で自分を戒め慎むことを意味します。自分のふるまいが間違っていないか注意したり、自分の言動が出過ぎたものにならないよう慎むことを表現する言葉です。自戒の「戒」は、訓読みで「いましめる」と読み、過ちのないように注意を与えることを表します。
四字熟語「自重自戒」の意味
自戒を用いた四字熟語には「自重自戒」があります。自重自戒とは、軽はずみな行動を避けようと自分を戒めることを意味します。自重も自戒も、自分の行動や態度を慎むことを表す言葉であり、同じ意味を重ねた強調表現になっています。
自戒の対義語
自戒の対義語・反対語としては、自分の思うとおりに行動することを意味する「自由奔放」などがあります。
自戒の類語
自戒の類語・類義語としては、自分から進んで行いや態度を慎むことを意味する「自粛」、自分の感情や邪念などにうちかつことを意味する「克己」、自分の感情や欲望を抑えることを意味する「自制」、欲望を理性の力によって秩序のあるものとすることを意味する「節制」などがあります。
自重の意味
自重とは
自重とは、自らを重んじること、自分の品性を保ち卑下しないことを意味しています。
その他にも、「言動を慎んで軽はずみなことをしないこと」「自分の健康に注意し大切にすること」の意味も持っています。
自重の読み方
自重の読み方は二通りあり、「じちょう」の他に「じじゅう」とも読みます。「じじゅう」と読む場合、「自重トレーニング」のような使い方で自分の体重を意味します。読み方により意味が異なることに注意しましょう。
表現方法は「自重する」「自重します」「自重してください」
「自重する」「自重します」「自重してください」などが、自重を使った一般的な言い回しです。
自重の使い方
「自重の念が弱い人は自信がありません」「自重と傲慢は紙一重である」「私たちの学校の校訓は自尊自重です」「褒めて育てることで自重するようになるだろう」などの文中で使われている自重は、「自らを重んじること」の意味で使われています。
一方、「隠忍自重の精神で耐えるしかない」「もう何ひとつ自重しないぞ」などの文中で使われている自重は「言動を慎むこと」の意味で、「何卒ご自重ください」「健診前なので自重しています」などの文中で使われている自重は「自分の健康に注意すること」の意味で使われています。
自重とは、自分のことを重んじて自尊すること、間違いを起こさないようにすること、健康に注意することを意味する言葉です。複数の意味があるため、文脈により意味を捉える必要があります。自重の「重」は、価値のあるものとして重くみることや尊重することを表す漢字です。
四字熟語「隠忍自重」の意味
自重を用いた四字熟語には「隠忍自重」(読み方:いんにんじちょう)があります。隠忍自重とは、怒りや苦しみをじっと抑えて外に表さず、軽はずみな行動をしないことを意味します。「隠忍」は、苦しみを心中に隠して堪え忍ぶことです。
自重の対義語
自重の対義語・反対語としては、やけになって自分の身を粗末に扱うことを意味する「自暴自棄」などがあります。
自重の類語
自重の類語・類義語としては、自分を大切にし品位を傷つけないようにすることを意味する「自尊」、注意深くて軽々しく行動しないことを意味する「慎重」、自分を大切にすることや自分の言行を慎むことを意味する「自愛」などがあります。
自戒の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分で自分をいましめ慎むことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、自戒の慣用的な言い回しには「自戒を込めて」「自戒の念を込める」「自重自戒」などがあります。
自重の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分の品位を保ちむやみに卑下したりしないこと、自分の行動を慎むこと、自分の体を大切にすることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある自重は、自分の品位を保つことの意味で用いられています。例文2から例文4の自重は、自分の行動を慎むことの意味で用いられ、例文5の自重は体を大切にすることの意味で使用されています。
自戒と自重という言葉は、どちらも「発言や行動を慎むこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、自分に対してのみ使える表現は「自戒」、自分だけでなく他人にも使える表現は「自重」であることを覚えておきましょう。