似た意味を持つ「緩慢」(読み方:かんまん)と「散漫」(読み方:さんまん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「緩慢」と「散漫」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
緩慢と散漫の違い
緩慢と散漫の意味の違い
緩慢と散漫の違いを分かりやすく言うと、緩慢とはゆっくりであるさま、散漫とは散らばっているさまという違いです。
緩慢と散漫の使い方の違い
一つ目の緩慢を使った分かりやすい例としては、「動作が緩慢である」「緩慢冷凍ではなく急速冷凍してください」「この病気の主な症状は運動緩慢です」「リスク管理について緩慢な対応を取る」などがあります。
二つ目の散漫を使った分かりやすい例としては、「注意散漫になり集中が途切れる」「頭がボーッとして注意力が散漫になる」「話が散漫になり言いたいことが伝わらない」「金属などの散漫散乱を研究する」などがあります。
緩慢と散漫の使い分け方
緩慢と散漫という言葉は、音の響きや字面がよく似ていますが、意味や使い方には大きな違いがあります。
緩慢とは、「動作緩慢」「運動緩慢」のような使い方で、動きがゆっくりである様子を意味します。また、「緩慢な対応」「緩慢な措置」のような使い方で、 物事の処理の仕方が手ぬるいことや厳しくないことを意味する言葉です。
散漫とは、散らばり広がることを意味し、「散漫散乱」とは無秩序に散乱がおきる現象のことです。また、「注意力散漫」「注意散漫」のような使い方で、あれこれと気が散って集中力を欠いているさまの意味で使用されることが多い言葉です。
つまり、緩慢とは動きがゆっくりであることや、対応などが手ぬるいことを表し、散漫とは散らばり広がっていることや、まとまりがないさまを意味します。二つの言葉は似ていますが、意味は異なりますので区別して使うようにしましょう。
緩慢と散漫の英語表記の違い
緩慢を英語にすると「slowness」「slackness」「dullness」となり、例えば上記の「動作が緩慢である」を英語にすると「be slow‐moving」となります。
一方、散漫を英語にすると「distraction」「loose」「discursive」となり、例えば上記の「注意散漫」を英語にすると「distraction of attention」となります。
緩慢の意味
緩慢とは
緩慢とは、動きがゆったりしてのろいことを意味しています。
その他にも、「物事の処理のしかたが手ぬるいこと」の意味も持っています。
緩慢の読み方
緩慢の読み方は「かんまん」です。誤って「だんまん」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「緩慢な動き」「緩慢な人」「緩慢な態度」
「緩慢な動き」「緩慢な人」「緩慢な態度」などが、緩慢を使った一般的な言い回しです。
緩慢の使い方
「疲れ果てて緩慢な動きになってしまう」「回復テンポは緩慢になっている」「緩慢凍結のデメリットはなんですか」「冷蔵庫に入れて緩慢解凍させる」「緩慢な経済成長が続いている」などの文中で使われている緩慢は、「動きがゆったりしていること」の意味で使われています。
一方、「緩慢な措置では事態は変わらないだろう」「そんな緩慢な方法では相手がつけあがるだろう」「警察の対応が緩慢であるとの批判が相次ぐ」などの文中で使われている緩慢は、「物事の処理が手ぬるいこと」の意味で使われています。
緩慢の「緩」は訓読みで「ゆるい」と読み、ゆったりとしている様子を表し、「慢」は訓読みで「おこたる」と読み、進行がだらだらと遅いことや締まりがないことを表します。緩慢とは、動作がゆっくりしていること、対処や措置が手ぬるいさまを意味する言葉です。
「緩慢凍結」の意味
緩慢を用いた日本語には「緩慢凍結」があります。緩慢凍結とは、食品をゆっくり凍結させることを意味し、マイナス5からマイナス1℃の温度帯を30分以上かけて通過する方法のことです。反対に、時間をかけてゆっくり解凍させることを「緩慢解凍」と言います。
緩慢の対義語
緩慢の対義語・反対語としては、物事の変化や動きなどが急で激しいさまを意味する「急激」、時に応じてすばやく判断し行動することを意味する「機敏」などがあります。
緩慢の類語
緩慢の類語・類義語としては、ゆるむことやたるむことを意味する「弛緩」、締まりのないことやだらしがないことを意味する「底抜け」、手ぬるいことや厳しさがないことを意味する「生ぬるい」などがあります。
散漫の意味
散漫とは
散漫とは、散らばり広がることを意味しています。
「まとまりのないさま、集中力に欠けるさま」の意味も持っています。
表現方法は「気持ちが散漫になる」「注意散漫」「集中力散漫」
「気持ちが散漫になる」「注意散漫」「集中力散漫」「意識が散漫になる」などが、散漫を使った一般的な言い回しです。
散漫の使い方
「水素ガスが空気中に散漫する」「X線散漫散乱で結晶の構造を解析する」「散漫散乱の強度を分析する」「宇宙に散漫する星雲を観察する」などの文中で使われている散漫は、「散らばり広がること」の意味で使われています。
一方、「注意力が散漫になる原因は何ですか」「注意力が散漫することでミスが増える」「苦手な英語の授業は興味散漫してしまう」「散漫な状況を整理しよう」「とても散漫な文章で読みづらい」などの文中で使われている散漫は、「まとまりのないさま」の意味で使われています。
散漫の「散」は訓読みで「ちる」「ちらかす」と読み、四方にばらばらになることや、とりとめがないことを表します。むやみに広がって締まりがないことを表す「漫」と組み合わさり、散漫とは、散らばって広がることや、考えや気持ちが集中せず、とりとめのないさまを意味する言葉です。
「散漫散乱」の意味
散漫を用いた日本語には「散漫散乱」があります。「散漫散乱」とは、物質の構造のゆらぎによる電子線やX線あるいは中性子線のぼやけた散乱や回折のことです。
散漫の対義語
散漫の対義語・反対語としては、一か所に集めることを意味する「集中」、細かいところまで注意が行き届いていて手落ちのないことを意味する「緻密」などがあります。
散漫の類語
散漫の類語・類義語としては、やりっ放しでいい加減なことを意味する「放漫」、動作が機敏でないことを意味する「鈍い」、注意が行き届かないための手落ちを意味する「手抜かり」、だらしのないさまや締まりのないさまを意味する「ルーズ」などがあります。
緩慢の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ゆっくりしていること、手ぬるいこと、厳しくないことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある緩慢は、ゆっくりしていることの意味で用いられています。例文4や例文5の緩慢は、手ぬるいことや厳しくないことを意味します。
散漫の例文
この言葉がよく使われる場面としては、散らばりひろがること、事をやるのに気が散って締まりのないさま、とりとめのないさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある散漫は、散らばりひろがることの意味で用いられています。例文2から例文5の散漫は、とりとめのない様子や締まりのないさまを意味します。
緩慢と散漫という言葉は、似ていますが意味は大きく異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合、動きがゆっくりであることを表現したい時は「緩慢」を、気が散ったりしてしまりのないさまを表現したい時は「散漫」を使うようにしましょう。