似た意味を持つ「他意」(読み方:たい)と「悪意」(読み方:あくい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「他意」と「悪意」という言葉は、どちらも「心の中や考え」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
他意と悪意の違い
他意と悪意の意味の違い
他意と悪意の違いを分かりやすく言うと、他意とは心の中に隠している考え、悪意とは人を傷つけようとする悪い考えという違いです。
他意と悪意の使い方の違い
一つ目の他意を使った分かりやすい例としては、「私の発言に他意はありません」「何気なく口にしただけで他意はない」「こちらに他意はないのに深読みされてしまう」「誕生日プレゼントをくれただけで他意はないだろう」などがあります。
二つ目の悪意を使った分かりやすい例としては、「悪意をもって接してくる人を見極める」「悪意に満ちた目でにらまれる」「悪意の受益者は利益をすべて返還しなければならない」「悪意の遺棄による慰謝料の相場を教えてください」などがあります。
他意と悪意の使い分け方
他意と悪意という言葉は、どちらも「他意はない」「悪意はない」と表現し、人が心の中に抱いている考えを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
他意とは、心の中に隠している別の考えを意味します。「他意はない」とは、自分の言動にそれ以上の意味はなく、そのまま受け取って欲しいという意味合いのフレーズです。他意には悪意が含まれることが多くありますが、恋愛感情を指すこともあります。
悪意とは、他人に害を加えようとする気持ちや悪い考えを意味します。「悪意はない」とは、自分の言動に相手を傷つけようとする意図はないことを表すフレーズです。また、悪意は法律用語として使用され、道徳的な善悪とは関係なく事情を知っていることも意味します。
つまり、他意とは心の中に隠している考えを表し、悪意とは人を傷つけようとする悪い考えを意味します。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
他意と悪意の英語表記の違い
他意を英語にすると「other intention」「hidden purpose」「ulterior motive」となり、例えば上記の「他意はありません」を英語にすると「have no other intention」となります。
一方、悪意を英語にすると「ill will」「malice」「bad faith」となり、例えば上記の「悪意をもって」を英語にすると「with malice」となります。
他意の意味
他意とは
他意とは、心の中に隠している別の考え、特に相手に対する悪意を意味しています。
他意の使い方
他意を使った分かりやすい例としては、「手紙の内容に他意はありません」「素直に言っただけで他意はないです」「それ以外の他意はございません」「彼に英語を教えてもらっただけで他意はありません」などがあります。
その他にも、「他意はないのに勘ぐらないでよ」「励ましの言葉に他意なし」「決して他意はございません」「彼の話に他意があるとは思えません」「単に親切にしただけで他意があるわけではない」などがあります。
他意の「他」は訓読みで「ほか」と読み、当面のもの以外の事柄、ある特定の事物と別であることを表します。心の中の思いや考えを表す「意」と組み合わさり、他意とは、他の考えや隠している考えを意味します。特に、相手に対する悪意を指すことが多い言葉です。
「他意はない」の意味
上記例文にある「他意はない」とは、他に深い意味や裏の意味などがないこと意味する言い回しです。自分の言動に悪意や別の意味はないので、そのとおりに受け取って欲しいというニュアンスで使われています。
他意の対義語
他意の対義語・反対語としては、本当の考えを意味する「本意」、本当の意味や本当の気持ちを意味する「真意」などがあります。
他意の類語
他意の類語・類義語としては、そむく心や裏切りの心を意味する「ふたごころ」、ほかの考えやほかの意味を意味する「別意」、ほかの事を思うことや別の考えを意味する「異心」、余計な考えや他念を意味する「余念」などがあります。
悪意の意味
悪意とは
悪意とは、他人を憎み、害を加えようとする気持ちを意味しています。
その他にも、「よくない意味」「法律上の効力に影響を及ぼす事情を知っていること」の意味も持っています。
悪意の使い方
「悪意のあるファイルが検出されました」「悪意のあるソフトウェアの削除ツールを探しています」「クラスメイトが悪意をもって私の英語のノートを汚した」などの文中で使われている悪意は、「害を加えようとする気持ち」の意味で使われています。
一方、「私のつぶやきが悪意に取られてしまった」の文中で使われている悪意は「よくない意味」の意味で、「悪意の遺棄とは夫婦間の義務を履行しないことです」の文中で使われている悪意は「効力に影響を及ぼす事情を知っていること」の意味で使われています。
悪意とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。悪意の「悪」は正しくないことや不当であること、「意」は心に思うことや気持ちを表す漢字です。
「悪意の遺棄」の意味
悪意を用いた日本語には「悪意の遺棄」があります。悪意の遺棄とは、正当な理由がなく夫婦間の義務に不当に反することを意味する法律用語です。具体的には、生活費を渡さない、行く当てのない配偶者を追い出す、理由のない別居といった行為を指します。
悪意の対義語
悪意の対義語・反対語としては、他人のためを思う親切心や好意を意味する「善意」などがあります。
悪意の類語
悪意の類語・類義語としては、相手に害を与えようとする気持ちを意味する「悪気」、恨みを含むことや人を恨む気持ちを意味する「意趣」、忘れがたい深いうらみを意味する「遺恨」、人に対して抱く不愉快な感情を意味する「悪感情」などがあります。
他意の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他人には知らせないで隠している考えを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、他意の慣用的な言い回しには「他意はない」「他意はありません」「他意を含む」「他意はございません」などがあります。
悪意の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他人を嫌がらせ害を与えようとする気持ち、悪い意味、法律上の効力に影響を及ぼすある事実を知っていることを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「悪意の遺棄」は法律用語であり、民法第770条で規定されています。この意味での「悪意」は、道徳的な意味での善悪とは異なるものです。
他意と悪意という言葉は、どちらも「心の中や考え」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、心の中に隠している考えを表現したい時は「他意」を、人を傷つけようとする悪い考えを表現したい時は「悪意」を使うようにしましょう。