似た意味を持つ「当初」(読み方:とうしょ)と「当時」(読み方:とうじ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「当初」と「当時」という言葉は、どちらも過去を指す言葉という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
当初と当時の違い
当初と当時の違いを分かりやすく言うと、当初とは物事の起点を表し、当時とは過去の時点を表すという違いです。
一つ目の当初を使った分かりやすい例としては、「結婚当初から別居状態でした」「年度当初予算はいつまでに決まりますか」「開業当初のターゲットはビジネスマンでした」「野外ライブは当初の予定通り開催します」などがあります。
二つ目の当時を使った分かりやすい例としては、「東日本大震災が起きた当時の首相は誰ですか」「当時と今では物価が全く違います」「創業当時から継ぎ足しされているスープです」「店舗は廃業した当時のまま残してあります」などがあります。
当初と当時という言葉は、どちらも今からみて過去のある時点や時期を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
当初とは、そのことのはじめを意味し、物事の起こりの最初の時点を表す言葉です。「結婚当初」とは結婚したばかりの頃であり、結婚をしてから1年目から3年目までを指します。当初という言葉は、物事の起点や出発点を表現するため、物事の終盤について使用することはできません。
当時とは、過去のある時点や過去のある時期を意味します。過去を振り返ってその時点をいう言葉であり、「1970年代当時」のように単純に過去の時点を指したり、「創業当時」「廃業当時」のように物事のある時点を指すこともあります。
つまり、当初とは物事の最初の時点を表現し、当時とは過去のある時点を意味する言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
当初を英語にすると「beginning」「initial」「starting time」となり、例えば上記の「当初から」を英語にすると「from the very beginning」となります。
一方、当時を英語にすると「then」「at that time」「in those days」となり、例えば上記の「当時の首相」を英語にすると「the then Prime Minister」となります。
当初の意味
当初とは、そのことのはじめ、最初、また、その時期を意味しています。
当初を使った分かりやすい例としては、「入学試験は当初の予定通り実施します」「当初の予定通り進めてください」「令和6年度の当初予算をチェックする」「英語を習い始めた当初は全然面白くありませんでした」などがあります。
その他にも、「結成当初は9人のメンバー構成でした」「法人税における当初申告要件を確認する」「当初の契約締結後に不更新条項の追加がある」「第二種優先株式の当初転換価額が決定しました」などがあります。
当初の読み方は「とうしょ」です。同じ読み方をする熟語に「当所」「投書」などがありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
当初の「当」は訓読みで「あたる」と読み、物事や人が直面しているさまを表します。「初」は物事のはじめ、はじめの段階や時期を表す漢字です。当初とは、はじめの時期を意味し、物事が始まった最初の時点を指す言葉です。
当初を用いた日本語には「当初予算」があります。当初予算とは、国または地方公共団体の会計年度の予算として最初に国会に提出された予算を意味します。前年の8月末に各省庁が予算を要求し、財務省の査定を経て12月下旬に閣議決定するものです。
当初の対義語・反対語としては、終わりの時期や期限の終わりを意味する「終期」などがあります。
当初の類語・類義語としては、始まって間のないころを意味する「初期」、ある時代や時期の初めのころを意味する「初頭」、物事の始まる時期を意味する「始期」、物事の始まったばかりのところを意味する「出だし」などがあります。
当時の意味
当時とは、過去のある時点、ある時期、その時、そのころを意味しています。
その他にも、「現在、いま」の意味も持っています。
「あなたは当時何歳でしたか」「20代の当時は若くお金が必要でした」「天守が当時のまま残っている城はありますか」「当時の環境がわかる化石が見つかりました」などの文中で使われている当時は、「過去のある時点、ある時期」の意味で使われています。
一方、「当時しばらくお待ちください」「当時はやりのファッションに身を包む」「当時の時刻は午後3時です」「当時のところ見通しは立っていません」などの文中で使われている当時は、「現在、いま」の意味で使われています。
当時の読み方は「とうじ」です。誤って「とうし」「あてじ」などと読まないようにしましょう。
当時とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、一般的には「過去のある時点、ある時期」の意味で用いられている言葉です。一方の「現在、いま」の意味で使われることは少なくなっています。当時の「時」はある一定のとき、そのころを表す漢字です。
当時を用いた日本語には「当時三美人」(読み方:とうじさんびじん)があります。当時三美人とは、江戸時代の浮世絵師・喜多川歌麿による美人画の作品名です。寛政5年頃に描かれた喜多川歌麿の代表作の一つであり、「寛政三美人」とも呼ばれています。
当時を用いた誤った表現には「当時二論」があります。正しくは「統治二論」であり、イギリスの名誉革命直後に出版されたジョン・ロックの主著です。
当時の対義語・反対語としては、現在のあとに来る時を意味する「未来」、これからやって来ようとしている時を意味する「将来」などがあります。
当時の類語・類義語としては、過ぎ去った日や以前を意味する「在りし日」、この年やその当時を意味する「当年」、それよりもっと昔や大昔を意味する「その昔」、過ぎ去った時を意味する「往時」などがあります。
当初の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事のはじめの時期、はじめのうちを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「年度当初」とは、ある年度の開始時点を指す表現です。年度は、会計などの便宜のために区分した1年の期間であり、組織や業種などによって異なるものです。
当時の例文
この言葉がよく使われる場面としては、過去のある時点、過去のその時、ただいま、現在を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、当時という言葉は、おもに「過去のある時点、過去のその時」の意味で用いられています。
当初と当時という言葉は、どちらも「過去の時点」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、物事の最初の時点を表現したい時は「当初」を、過去のある時点を表現したい時は「当時」を使うようにしましょう。