似た意味を持つ「仮説」(読み方:かせつ)と「仮定」(読み方:かてい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「仮説」と「仮定」という言葉は、どちらも「仮に定めたこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
仮説と仮定の違い
仮説と仮定の違いを分かりやすく言うと、仮説とは現象を説明するために仮に定めた説、仮定とは話を進める上で仮に定めることという違いです。
一つ目の仮説を使った分かりやすい例としては、「メリットから逆算して仮説を立てる」「仮説検定の例題を解いてみましょう」「仮説思考ゼロの上司とは反りが合わない」「仮説上の惑星をイラストにする」などがあります。
二つ目の仮定を使った分かりやすい例としては、「あなたの仮定には無理があるように感じます」「仮定の話にはお答えできません」「英語の仮定法現在について教えてください」「仮定の上に立って話を進めます」などがあります。
仮説と仮定という言葉は、どちらも特定の事柄について仮の前提を立てることを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
仮説とは、ある事象や事柄について合理的な説明をつけるために立てられた仮の説明を意味します。「仮説思考」は、経験や知識を元に仮説を立ててから、その仮説を元に検証を行う思考方法であり、ビジネスにおいて必須の能力と言われています。
仮定とは、ある議論を進めるために、一時的に仮に立てる条件や前提を意味します。仮定はあくまでも話を進めるために設定するものであり、証明や検証は必要ではありません。数学や論理学などの場でも用いられています。
つまり、仮説とは事象や事柄を説明するために仮に定めた説であり、仮定とは話を進めるために仮に立てる条件や前提を意味します。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
仮説を英語にすると「hypothesis」「postulate」「tentative theory」となり、例えば上記の「仮説を立てる」を英語にすると「set up a hypothesis」となります。
一方、仮定を英語にすると「assumption」「postulate」となり、例えば上記の「あなたの仮定」を英語にすると「your hypothesis」となります。
仮説の意味
仮説とは、ある現象を合理的に説明するため、仮に立てる説を意味しています。
仮説を使った分かりやすい例としては、「高い精度の仮説を一つ立てる」「できるだけ早く仮説検証すべきです」「仮説に基づいて実施する営業手法があります」「仮説提案営業を進めている企業が増えています」などがあります。
その他にも、「仮説思考力を高めることのメリットは何ですか」「高校数学の仮説検定の考え方に慣れる」「仮説検定の手順をわかりやすく解説します」「リスニング力を高めれば英語力が伸びるという仮説を立てる」などがあります。
仮説の「仮」は訓読みで「かり」と読み、本物ではない一時的な見せかけを表し、「説」は訓読みで「とく」と読み、説き明かす内容を表します。仮説とは、事象や法則について説明するために仮に設定された説であり、実験や観察などによる検証を通じて、事実と合致すれば定説となるものです。
仮説を用いた日本語には「仮説検定」があります。仮説検定とは、統計学で、母集団から抽出した標本が、母集団全体を説明する統計的仮説を支持するかを判定することを意味します。単に「検定」あるいは「統計的仮説検定」とも言います。
仮説の対義語・反対語としては、一般に認められ確定的であるとされている説を意味する「定説」などがあります。
仮説の類語・類義語としては、何の根拠もない説を意味する「空説」、ある事実をもとにして未知の事柄をおしはかり論じることを意味する「推論」、物事の成り行きや結果について前もって見当をつけることを意味する「予想」などがあります。
仮定の意味
仮定とは、未定のこと、不確かなことを仮にこうと定めること、また、仮に定めた事柄を意味しています。
その他にも、「論理学などで、ある命題を導き出す推論の出発点におかれる前提条件、仮設」の意味も持っています。
「頭の中で様々な条件や状況を仮定する」「仮定法過去と仮定法過去完了の違いが分かりません」などの文中で使われている仮定は、「未定のこと、不確かなことを仮にこうと定めること」の意味で使われています。
一方、「命題の仮定と結論を区別しよう」「推論の前提とは異なる論理式を便宜的に真と仮定する」などの文中で使われている仮定は、「論理学などで、ある命題を導き出す推論の出発点におかれる前提条件」の意味で使われています。
仮定の読み方は「かてい」です。同じ読み方をする熟語に「過程」や「家庭」などがありますが、意味が異なるため書き間違いに注意しましょう。
仮定とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要があります。仮定の「仮」は本式ではない一時的な間に合わせ、「定」は形や内容などが決まっていて変わらないことを表す漢字です。
仮定を用いた日本語には「仮定法」があります。仮定法とは、英文法における動詞の法の一つです。ある事柄を述べるのに事実としてではなく、想像・仮定・願望など話し手の心の中で考えられたこととして述べる法を意味します。
仮定を用いた日本語には「不当仮定虚偽」があります。不当仮定虚偽とは、論理学で、自明の真理であるはずの公理が、実際には自明ではないのに、不当に仮定されたまま論証が進められることから起こる虚偽を意味します。
仮定の対義語・反対語としては、はっきりと定まることを意味する「確定」などがあります。
仮定の類語・類義語としては、ある条件や状況を仮に設定することを意味する「想定」、ある物事や条件をつくり定めることを意味する「設定」、実際にはない事物を仮にあるものとして考えてみることを意味する「仮想」などがあります。
仮説の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある事柄を理由づけるための仮の見解を表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「臨界期仮説」とは、言語を習得する能力は幼児期から思春期頃までにしか存在せず、それ以降の言語習得は困難を極めるという仮説のことです。
仮定の例文
この言葉がよく使われる場面としては、仮に定めること、未定のこと、ある命題を導き出す推論の出発点におかれる前提条件を表現したい時などが挙げられます。
例文4にある仮定法とは、英文法における動詞の法の一つです。ある事柄を述べるのに事実としてではなく、想像・仮定・願望など話し手の心の中で考えられたこととして述べる法を意味します。
仮説と仮定という言葉は、どちらも「仮に定めること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、ある事柄を説明するために仮に定めた説を表現したい時は「仮説」を、話を進める上で仮に定めることを表現したい時は「仮定」を使うようにしましょう。