似た意味を持つ「方策」(読み方:ほうさく)と「施策」(読み方:しさく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「方策」と「施策」という言葉は、どちらも「計画を立てて行うこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
方策と施策の違い
方策と施策の違いを分かりやすく言うと、方策とは計画や方向性を表し、施策とは具体的な手段を表すという違いです。
一つ目の方策を使った分かりやすい例としては、「必要に応じて適切な方策を講じる」「まず初めに方策の立案に取り組む」「バイク事故防止の方策を講じる」「英語環境づくりの方策に工夫を凝らす」などがあります。
二つ目の施策を使った分かりやすい例としては、「戦略から具体的な施策に落とし込む」「マーケティング施策を成功させる」「稼働率を上げるための施策を打つ」「東京都は子育て支援の施策が充実している」などがあります。
方策と施策という言葉は、どちらも事を行うために計画を立てて実施することを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
方策とは、はかりごとや手段を意味し、目的を達成するための計画や方向性を指すことが多い言葉です。例えば「働き方改革の方策」とは、長時間労働を是正すべきであるとか、柔軟な働き方を推進すべきであるとかの方針を長期的な視点で定めることです。
施策とは、ある目的を達成するために実施される具体的な手段を意味し、政治家や行政機関などが実際に行う策を表すことが多い言葉です。例えば「働き方改革の施策」とは、残業時間の上限を規制したり、勤務間インターバル制度の導入を促進したり、具体的で即効性のある手立てのことです。
つまり、方策とは事を行う際の計画や方向性を表現し、施策とは事を行う際の具体的な手段を意味します。二つの言葉を比べると、施策よりも方策の方が広義の概念であり、大きな枠組みを示す言葉だと言えるでしょう。
方策も施策も英語にすると「measures」「policy」となり、例えば上記の「方策を講じる」を英語にすると「take measures」となります。
方策の意味
方策とは、はかりごとや計略、また、手段や方法を意味しています。
その他にも、「文書、記録」の意味も持っています。
「計画的に方策を立てて実行する」「手始めに方策を立案します」「災害に対する科学的方策を立てるべきだ」「方策勾配法の最大の利点は何ですか」などの文中で使われている方策は、「はかりごと、方法」の意味で使われています。
一方、「ロシア革命運動に関する方策を読む」「半世紀前の古い方策が見つかった」「口頭ではなく方策で回答をください」「証拠として当時の方策を提出しました」などの文中で使われている方策は、「文書、記録」の意味で使われています。
方策の読み方は「ほうさく」です。同じ読み方をする熟語に「豊作」や「封冊」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
方策とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、一般的には「はかりごとや計略、また、手段や方法」の意味で用いられています。「文書、記録」の意味で使われることは、現代においてほとんどありません。
方策という言葉の語源は、古代中国の記録方法に由来します。方策の「方」は木の板、「策」は文字を記すのに用いた細長い竹の札を指し、これらが記録に使用されたことから、「方策」という言葉が生まれました。
方策を用いた日本語には「方策勾配法」があります。方策勾配法とは、AIの学習アルゴリズムの一つであり、強化学習において特定の状況下で取るべき最良の行動、つまり最適な方策を直接学習する手法を意味します。
方策の類語・類義語としては、もくろみや計画を立てることを意味する「企て」(読み方:くわだて)、ある目的を達成するために考え出された一つの策略を意味する「一計」、政府や政党などの施政上の方針や方策を意味する「政策」などがあります。
施策の意味
施策とは、政策・対策を立てて実地に行うこと、政治などを行うに際して実地にとる策を意味しています。
施策を使った分かりやすい例としては、「主なスタートアップ支援施策を紹介します」「AIを用いてビジネス施策を最適化する」「今後の状況に応じ必要な施策を講じる」「英語力を向上させるための施策を検討しています」などがあります。
その他にも、「中小企業支援施策について概要をまとめる」「エンゲージメント向上の施策を打つ」「施策が上手くいかなかった時の対策を考える」「施策実行型のQCストーリーにはメリットだけでなくデメリットもあります」などがあります。
施策の正しい読み方は「しさく」ですが、慣用読みとして「せさく」と読まれることもあります。「せさく」という慣用読みは、同音異義語の「思索」「試作」と区別するため使われています。
施策の「施」は訓読みで「ほどこす」と読み、実際に行うことや計画を実地に移すことを表す漢字です。はかりごとを表す「策」と組み合わさり、施策とは、ある事柄に対処するために実施される策、または、政治などを行うに際して実地にとる策を意味します。
施策を用いた日本語には「施策実行型」があります。施策実行型とは、品質管理の問題解決の手法であるQCストーリーの一つです。問題の原因がわかっている場合に、対策の実行に焦点を当てたやり方を意味します。
施策の類語・類義語としては、事を行なうための方法や技術を意味する「手」、状況に対応するための方法や手段を意味する「対策」、目的を遂げるためのやり方を意味する「方法」、後始末をうまくつけるための方法を意味する「善後策」などがあります。
方策の例文
この言葉がよく使われる場面としては、計略や策略、方法や手段を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある方策と対策の違いは、方策は事前に策を講じるものであることに対し、対策は何か起こった後の策を講じることである点です。
施策の例文
この言葉がよく使われる場面としては、政治家や行政機関などが計画を実地に行なうこと、その計画を表現したい時などが挙げられます。
例文4にある施策と取り組みの違いは、施策は計画や方針を含めて実際に行うということを表し、取り組みは具体的に物事にあたることを表す点にあります。
方策と施策という言葉は、どちらも「計画を立てて行うこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、事を行う際の計画や方向性を表現したい時は「方策」を、事を行う際の具体的な手立てを表現したい時は「施策」を使うようにしましょう。