似た意味を持つ「先天性」(読み方:せんてんせい)と「後天性」(読み方:こうてんせい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「先天性」と「後天性」という言葉は、どちらも「事物に備わっている性質」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
先天性と後天性の違い
先天性と後天性の意味の違い
先天性と後天性の違いを分かりやすく言うと、先天性とは生まれつき備わっている性質、後天性とは生まれた後に生じる性質という違いです。
先天性と後天性の使い方の違い
一つ目の先天性を使った分かりやすい例としては、「娘は先天性の病気があり運動ができません」「先天性心疾患の診療ガイドラインが改訂されました」「先天性の障害がある娘の成長をYouTubeで配信しています」などがあります。
二つ目の後天性を使った分かりやすい例としては、「後天性脳症の症状について調べています」「後天性表皮水疱症のメカニズムを理解する」「後天性免疫不全症候群の原因と治療方法をネットで調べています」などがあります。
先天性と後天性の使い分け方
先天性と後天性という言葉は、どちらも物事に備わった性質を表し、病気の原因を説明する際に使用されますが、意味や使い方には違いがあります。
先天性とは、生まれつきにそうであることを意味し、生まれつき体や臓器に異常がある場合に使用されることが多い言葉です。たとえば、ある種の病原体に対して生体が生まれながらにもっている抵抗性のことを「先天性免疫」と言います。
後天性とは、生まれた後に、環境や事故などによって生じる性質を意味し、生後の何かしらの原因により異常が生じる場合に用いられることが多くあります。「後天性免疫」とは、感染症やワクチン接種などにより、生後に免疫状態を得たものです。
つまり、先天性とは生まれつき備わっている性質であり、後天性とは生後に備わった性質を指します。二つの言葉は、生まれ持ったものか後から身についたものかの点で、相反する意味を持つ言葉だと言えるでしょう。
先天性と後天性の英語表記の違い
先天性を英語にすると「congenital」「inborn」「hereditary」となり、例えば上記の「先天性の病気」を英語にすると「a congenital disease」となります。
一方、後天性を英語にすると「acquired」「posteriori」となり、例えば上記の「後天性脳症」を英語にすると「acquired encephalopathy」となります。
先天性の意味
先天性とは
先天性とは、生まれつき備わっていること、また、その性質を意味しています。
先天性の使い方
先天性を使った分かりやすい例としては、「私は先天性盲ろう者として生まれました」「先天性股関節脱臼は指定難病ではありません」「先天性疾患は遺伝によるものですか」「先天性心疾患には幾つかの種類があります」などがあります。
その他にも、「今日は先天性代謝異常検査を受ける日です」「先天性耳瘻孔の手術を考えています」「先天性風疹症候群はエコーで分かるものですか」「先天性ミオパチーは全身に筋力低下が生じる病気です」などがあります。
先天性の読み方
先天性の読み方は「せんてんせい」です。誤って「せんてんしょう」などと読まないようにしましょう。
先天性の「先天」は生まれつき備わっていること、本来身に備わっていることを表します。物事に備わった性質を表す「性」と結び付き、先天性とは、この世に生まれる前から備わっている性質や遺伝によって備わっている性質を意味します。
表現方法は「先天性疾患」
先天性を用いた日本語には「先天性疾患」があります。先天性疾患とは、出生時から存在する形態的、機能的、精神的異常を示す疾患の総称です。「先天性異常」「先天異常」とも呼ばれ、形態の異常、機能の異常、代謝の異常などをそれぞれ主とする疾患が多種多様に存在しています。
先天性の対義語
先天性の対義語・反対語としては、後から身につく性質や状態を意味する「後天性」などがあります。
先天性の類語
先天性の類語・類義語としては、天から授かった性質を意味する「天性」、生まれたときからの性質や能力を意味する「生来」、生まれながらにして備わっている能力や容姿などを意味する「生まれつき」などがあります。
後天性の意味
後天性とは
後天性とは、生まれたあとで身についたものであること、また、そのような性質や傾向を意味しています。
後天性の使い方
後天性を使った分かりやすい例としては、「後天性赤芽球癆について説明してもらう」「数日前から後天性免疫不全症候群の症状がみられる」「後天性真皮メラノサイトーシスは保険適用で治療が受けられます」などがあります。
その他にも、「交通事故を引き金に後天性サヴァン症候群が発症しました」「後天性血友病Aは国の難病に指定されています」「後天性の大動脈弁狭窄症について正しいのはどれか答えなさい」などがあります。
後天性の読み方
後天性の読み方は「こうてんせい」です。誤って「ごてんせい」「こうてんしょう」などと読まないようにしましょう。
後天性の「後天」は、人が生後に、社会の環境や経験あるいは学習などによって身につけてゆくものを表します。物事の性質や傾向を表す「性」と組み合わさり、後天性とは、生まれてから後に経験や知識などによって身につけた性質や性格などを意味します。
表現方法は「後天性免疫不全症候群」
後天性を用いた日本語には「後天性免疫不全症候群」があります。後天性免疫不全症候群とは、「エイズ (AIDS) 」とも言い、エイズウイルス(HIV)が感染して起こる疾患です。免疫力が著しく低下し、感染症やがんにかかりやすくなります。
後天性の対義語
後天性の対義語・反対語としては、生まれつき備わっている性質や状態を意味する「先天性」などがあります。
後天性の類語
後天性の類語・類義語としては、生まれてからのちに身にそなわるさまを意味する「後天的」、何度も繰り返して起こったり行ったりする傾向を意味する「習慣性」、カントの認識論で経験から得られたものを意味する「アポステリオリ」などがあります。
先天性の例文
この言葉がよく使われる場面としては、生まれつきであるさまを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある先天性と遺伝性の違いは、先天性は生まれつきであることを意味する言葉であり、遺伝性は生まれつきの状態の原因が遺伝子にあることにフォーカスした言葉である点です。
後天性の例文
この言葉がよく使われる場面としては、後天的な性質や傾向、生まれてから後に経験や知識などによって身につけた性格を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、後天性という言葉は、病気に関して使用されることがほとんどです。
先天性と後天性という言葉は、どちらも「事物に備わっている性質」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、生まれつき備わっている性質を表現したい時は「先天性」を、生まれた後に生じる性質を表現したい時は「後天性」を使うようにしましょう。