似た意味を持つ「古典」(読み方:こてん)と「古文」(読み方:こぶん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「古典」と「古文」という言葉は、どちらも「古い時代の書物」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
古典と古文の違い
古典と古文の違いを分かりやすく言うと、古典とは古文と漢文を合わせた概念、古文とは江戸時代の前に書かれた日本語の文章という違いです。
一つ目の古典を使った分かりやすい例としては、「古典文学史をおさらいしましょう」「古典の勉強法を教えてください」「能楽は日本の古典芸能の一つです」「あの人は古典的な考え方をする」「新古典主義は秩序を重視します」などがあります。
二つ目の古文を使った分かりやすい例としては、「心を落ち着かせて古文を読む」「古文の授業がつまらないので眠くなる」「明日は古文のテストがあります」「古文単語の覚え方のコツを教えてもらいました」などがあります。
古典と古文という言葉は、どちらも古い時代に書かれた書物を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
古典とは、古い典籍を意味し、古くから伝わり現在でも文学的価値のある作品全般を指す言葉です。古典は、日本の古い時代の文章である古文だけでなく中国から伝わった古代中国の文章である漢文も含み、より広い範囲の概念を表します。
古文とは、江戸時代よりも前に書かれた日本語の文章を意味し、具体的には平安時代や鎌倉時代に書かれた物語や和歌などを指します。古文は、国語の授業で扱う古い日本文学の文章のことであり、中国の文章である漢文は含まれません。
つまり、古典とは古文と漢文を合わせた広い概念であり、古文とは古典の一つで江戸時代前の日本語の文章です。二つの言葉を比べると、古文より古典の方が広い意味を持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
古典を英語にすると「classic」「classical」となり、例えば上記の「古典文学」を英語にすると「classical literature」となります。一方、古文を英語にすると「ancient writing」「archaic writings」となり、例えば上記の「古文を読む」を英語にすると「read ancient writing」となります。
古典の意味
古典とは、古い時代に書かれた書物、現代からみて古い時代に属する書物を意味しています。
その他にも、「学問や芸術のある分野において、歴史的価値をもつとともに後世の人の教養に資すると考えられるもの」「芸能の世界で、近代に興った流派に対し、古い伝統に根ざしたもの」「古くからの定め、古代の儀式や法式」の意味も持っています。
「古典文法を全く理解していません」の文中で使われている古典は「古い時代に書かれた書物」の意味で、「ソクラテスの目的論は哲学の古典になっている」の文中で使われている古典は「学問や芸術のある分野において後世の人の教養に資するもの」の意味で使われています。
一方、「古典芸能への造詣が深い」の文中で使われている古典は「芸能の世界で、古い伝統に根ざしたもの」の意味で、「古典的条件づけの仕組みを解明する」の文中で使われている古典は「古くからの定め」の意味で使われています。
古典とは、上記例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。古典の「古」は過ぎ去った古い時代や過ぎ去った月日を表し、「典」は基本となる書物を表す漢字です。
古典を用いた日本語には「古典芸能」があります。古典芸能とは、日本で近世以前に創始され、現在も伝承されている芸能のことです。雅楽・能・狂言・歌舞伎・文楽・日本舞踊・邦楽・落語などを指します。鑑賞を目的としたものを言い、民俗芸能などは含みません。
古典の対義語・反対語としては、今の世や当世を意味する「現代」、発展の段階や進歩の程度が他より進んでいることを意味する「先進」などがあります。
古典の類語・類義語としては、書物や書籍を意味する「典籍」、書物と書籍の総称を意味する「図書」、印刷または手書きされた紙葉を順序よく綴じ表紙でくるんだものを意味する「書籍」、昔の制度や文物を知るよりどころとなる記録を意味する「文献」などがあります。
古文の意味
古文とは、江戸時代以前の文、また、高等学校国語科の古典教材中、江戸時代までの国文の称を意味しています。
その他にも、「唐以後、四六駢儷体(べんれいたい)に対して、秦漢以前の経史子家の用いたような散文の文体」、「中国、先秦時代に使われていた文字の書体で、大篆(だいてん)以外のもの」「古文真宝の略称」の意味も持っています。
「レベル別におすすめの古文の参考書を紹介します」の文中で使われている古文は「江戸時代以前の文、江戸時代までの国文の称」の意味で、「韓愈と柳宗元が古文運動を主導した」の文中で使われている古文は「秦漢以前の経史子家の用いたような散文の文体」の意味で使われています。
一方、「古文を書き写してもらいました」の文中で使われている古文は「中国、先秦時代に使われていた文字の書体」の意味で、「今日の宿題は古文の書き下し文です」の文中で使われている古文は「古文真宝の略称」の意味で使われています。
古文の読み方は「こぶん」です。誤って「こもん」「ふるぶん」などと読まないようにしましょう。
古文とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ちますが、一般的には「江戸時代以前の文、また、高等学校国語科の古典教材中、江戸時代までの国文の称」の意味で用いられています。古文の「文」は言葉を写す記号や文字で書き記したものを表す漢字です。
上記例文にある「古文運動」とは、9世紀初め、中国の唐代に韓愈や柳宗元がおこした散文改革運動です。漢代以前の飾り気がなく自然な文章を理想とし、当時流行していた華美な「駢儷文」に代わる新しい散文を作り出すことを目指しました。
古文の対義語・反対語としては、現代語で書かれた文章を意味する「現代文」などがあります。
古文の類語・類義語としては、中国古来の文語体の文章を日本でいう称を意味する「漢文」、中国で漢代に使われていた書体を意味する「今文」、古代に用いられ現代は用いられない文字体系を意味する「古代文字」などがあります。
古典の例文
この言葉がよく使われる場面としては、古い典籍や昔の経典、すぐれた著述や作品で長い年月にわたって多くの人々の模範となるもの、いにしえの典礼や古くからの法式を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「古典バレエ」とは、モダンバレエなどに対するヨーロッパの伝統的バレエを意味します。「クラシックバレエ」とも言います。
古文の例文
この言葉がよく使われる場面としては、古い時代の文章、高等学校国語科の古典教材において江戸時代以前の詩文の称、古い書籍、古典散文の文体、秦代に創始された篆書(てんしょ)以前の文字を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、古文という言葉は、「高等学校国語科の古典教材において江戸時代以前の詩文の称」の意味で用いられることがほとんどです。
古典と古文という言葉は、どちらも「古い時代の書物」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、古文と漢文を合わせた広い概念を表現したい時は「古典」を、古典の一つで江戸時代の前に書かれた日本語の文章を表現したい時は「古文」を使うようにしましょう。