【正当防衛】と【緊急避難】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「正当防衛」(読み方:せいとうぼうえい)と「緊急避難」(読み方:きんきゅうひなん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「正当防衛」と「緊急避難」という言葉は、どちらも「自分を守るための行為」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




正当防衛と緊急避難の違い

正当防衛と緊急避難の違いを分かりやすく言うと、正当防衛とは不正な侵害に対し反撃して自分を守ること、緊急避難とは緊急の危難に対し第三者を犠牲にして自分を守ることという違いです。

一つ目の正当防衛を使った分かりやすい例としては、「正当防衛の成立を認められ無罪となりました」「正当防衛には4つの要件があります」「正当防衛を主張した男に懲役18年が科せられた」などがあります。

二つ目の緊急避難を使った分かりやすい例としては、「緊急避難として隣家の垣根を壊した」「緊急避難に関する法律を調べています」「この辺りの緊急避難場所はどこですか」「民法上の緊急避難が成立した」などがあります。

正当防衛と緊急避難という言葉は、どちらも自分を守るための行為を表す法律用語ですが、意味や使い方には違いがあります。

正当防衛とは、急に迫ってきた暴力などの不正の侵害に対して、自己または他人の利益を守るためにやむを得ずにする加害行為を意味します。例えば、急にナイフで襲われて即座に相手の急所を蹴るなど、「不正」に対する「正」の行為です。

緊急避難とは、緊急の危険状態を避けるためにやむを得ず行う行為を意味し、刑法と民法にそれぞれ規定があります。例えば、クマに襲われそうになり他人の家の窓ガラスを壊して中に入ったなど、「正」と「正」の関係と言えます。

つまり、正当防衛とは不正な侵害に対して反撃をすることであり、緊急避難とは緊急の危難を避けるために第三者の権利を犠牲にして自己の利益を守ることをです。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。

正当防衛を英語にすると「self‐defense」「legitimate self-defence」となり、例えば上記の「正当防衛だと認められる」を英語にすると「recognize as legitimate defense」となります。

一方、緊急避難を英語にすると「emergency evacuation」「avoidance of clear and present danger」となり、例えば上記の「緊急避難として」を英語にすると「for emergency evacuation」となります。

正当防衛の意味

正当防衛とは、急迫不正の侵害に対し、自己または他人の権利を防衛するためにやむをえずなされる加害行為を意味しています。

正当防衛を使った分かりやすい例としては、「正当防衛であれば殺人罪に問われません」「他人を守るための暴力は正当防衛になりますか」「正当防衛か過剰防衛かの判断基準をネットで調べています」などがあります。

その他にも、「正当防衛について書かれた条文を読む」「正当防衛に当たるかどうかを判断する」「正当防衛に対する緊急避難だと認められた」「どこまでが正当防衛で、どこからが過剰防衛ですか」などがあります。

正当防衛とは、自己または他人に加えられる急迫した不正の侵害に対し、これを防ぐためやむをえず行なう加害行為を意味します。刑法上は違法性がないものとみなされて罰せられず、民法上も損害賠償責任を負いません。

正当防衛が成立する要件は、刑法第36条に基づいて4つの要件があります。「急迫不正の侵害」「防衛の意思」「防衛の必要性」「防衛行為の相当性」であり、これらを満たせば刑罰を受けることはありません。

正当防衛の対義語・反対語としては、正当防衛としてなされる行為が防衛の程度を越えていると判断されるものを意味する「過剰防衛」などがあります。

正当防衛の類語・類義語としては、自分の力で守りふせぐことを意味する「自衛」、敵の攻撃に対して防御にとどまらずに攻めかえすことを意味する「反撃」、権利者が公権力の力を借りずに自らの実力で権利を実現することを意味する「自力救済」などがあります。

緊急避難の意味

緊急避難とは、大急ぎで避難することを意味しています。

その他にも、「刑法上、急迫した危難を避けるため、やむをえず他人の法益をおかす行為」「民法上、他人の物から生じた急迫の危難を避けるために、その物に加える損壊行為」の意味も持っています。

「刑法第37条は緊急避難を規定しています」「ラジオから緊急避難速報が流れる」「自治体のホームページで指定緊急避難場所を確認する」などの文中で使われている緊急避難は「大急ぎで避難すること」の意味で、使われています。

一方、「刑事裁判で緊急避難が認められた」の文中で使われている緊急避難は「急迫した危難を避けるため他人の法益をおかす行為」の意味で、「緊急避難は損害賠償を負わない」の文中で使われている緊急避難は「急迫の危難を避けるために加える損壊行為」の意味で使われています。

緊急避難とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。緊急避難の「緊急」とは、事が重大で急ぐ必要のあるさま、「避難」は災害を避けて安全な場所へ立ちのくことを表します。

緊急避難を用いた日本語には「指定緊急避難場所」があります。指定緊急避難場所とは、災害の危険から命を守るために緊急的に避難する場所を意味します。洪水や地震など災害種別ごとに、立地や構造などの基準を満たす場所を市町村長が指定します。

緊急避難の類語・類義語としては、急場の間に合わせるためにとりあえず施す処置や手当てを意味する「応急処置」、一国が急迫した危険のある場合に他国の権利を侵害してもさしつかえないという国際法上の権利を意味する「緊急権利」などがあります。

正当防衛の例文

1.正当防衛で相手を殺してしまった事例は、過去にいくつか存在します。
2.暴漢に襲われてとっさに目潰しをしたことは、正当防衛になりますよね。
3.正当防衛はどこまで認められるのか、その成立する要件を確認してみよう。
4.先に暴行を受けて相手をボコボコにした場合、必ずしも正当防衛になるとは言えません。
5.やられる前に殴った行為が正当防衛ではないなんて、おかしいと思いませんか。

この言葉がよく使われる場面としては、急迫した不正の侵害を防ぐためやむをえず行なう加害行為を表現したい時などが挙げられます。

上記の例文にあるように、正当防衛という言葉は、刑事事件や民事事件で使用されることがほとんどです。

緊急避難の例文

1.津波の到達が予想される場合は、指定緊急避難場所に向かってください。
2.刑法における緊急非難は、緊急行為の一つとして犯罪不成立となります。
3.カルネアデスの板は、緊急避難の例として引用される有名な寓話です。
4.実際に緊急避難が成立して罪に問われなかった判例を集めています。
5.民法上の緊急避難が成立する要件として、何が挙げられるかご存知でしょうか。

この言葉がよく使われる場面としては、自然災害などで急いで避難すること、生命や財産などに対する現在の危難を避けるためやむを得ずに行った加害行為、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためにその物を損壊することを表現したい時などが挙げられます。

例文3にある「カルネアデスの板」とは、古代ギリシャの哲学者カルネアデスが提起した問題であり、緊急避難の考え方を説明する際に用いられる寓話です。船が難破し海に投げ出された船員が、他者から板を奪って溺死させる行為は、正当といえるかどうかを問いました。

正当防衛と緊急避難という言葉は、どちらも「自分を守る行為」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、不正な侵害に対して反撃をすることを表現したい時は「正当防衛」を、正当な第三者の権利を犠牲にして自己の利益を守ることを表現したい時は「緊急避難」を使うようにしましょう。

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