【達者】と【達人】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「達者」(読み方:たっしゃ)と「達人」(読み方:たつじん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「達者」と「達人」という言葉は、どちらも学問や技芸などを極めている人を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




達者と達人の違い

達者と達人の意味の違い

達者と達人の違いを分かりやすく言うと、達者とは熟達している様子以外にも使われ、達人とは熟達している様子のみを表すという違いです。

達者と達人の使い方の違い

一つ目の達者を使った分かりやすい例としては、「スペイン語を達者に話す」「達者に暮らしている」「その方面にかけては達者な男」などがあります。

二つ目の達人を使った分かりやすい例としては、「計算の達人はそろばんなしに珠算を行う」「まるで家電の達人だ」「美の達人に秘訣を伝授してもらう」などがあります。

達者と達人という言葉は、どちらも物事に慣れている様子を表す時に使われますが、さらに達者には、からだが丈夫で健康な様子、うまく立ち回って抜け目ない様子を表す意味もあります。これが達者と達人の明確な違いです。

達者と達人の英語表記の違い

達者を英語にすると「healthy」「skilled」「good」となり、例えば上記の「スペイン語を達者に話す」を英語にすると「speak good Spanish」となります。

一方、達人を英語にすると「expert」「master」となり、例えば上記の「計算の達人」を英語にすると「a calculation expert」となります。

達者の意味

達者とは

達者とは、物事に慣れていて巧みな様子、健康な様子、自分の利益に関する機会は逃さない様子を意味しています。

表現方法は「お達者で」「達者な人」「達者でな」

「お達者で」「達者な人」「達者でな」などが、達者を使った一般的な表現方法です。

達者の使い方

達者を使った分かりやすい例としては、「達者な筆づかいは大人顔負けである」「お互い達者でいよう」「まだ達者なうちに世界一周したい」「口達者な彼は世渡りが上手い」などがあります。

達者の由来

本来達者とは仏教用語で、学ぶべきことを学び終わり、真理に到達した者を表す言葉です。ここから、真理に到達して心も身体も健康な者を表すようになり、現代で使われる健康である様子を意味するようなりました。

達者という言葉は地名にも使われており、新潟県佐渡市の達者は、森鴎外の『山椒大夫』が原作となった民話『安寿と厨子王』ゆかりの地であり、母親と厨子王がお互い達者で再会できたことから名付けられました。

また青森県南部町は住民が達者であり、訪れた人たちも達者になれるような地域づくりを目指す取り組みの一環として、その町をベースとして仮想的に設けたバーチャル・ビレッジに「達者村」と名付けています。

「貧乏は達者のもと」の意味

達者を使ったことわざとして「貧乏は達者のもと」という言葉があります。貧乏な人は、体を動かして一生懸命働くため丈夫で健康だという意味です。

達者の類語

達者の類語・類義語としては、経験がある様子を意味する「老巧」(読み方:ろうこう)、申し分ない体調であることを意味する「壮健」、複数の才能を授けられることを意味する「敏腕」、知識や技能を持っている様子を意味する「腕利き」などがあります。

「達者」の「者」の字を使った別の言葉としては、親戚を意味する「縁者」(読み方:えんじゃ)、行く人や過ぎ去ったことを意味する「往者」(読み方:おうしゃ)などがあります。

また、「田舎者」(読み方:いなかもの)は単に田舎育ちの人を指すだけでなく、不作法な人を指したり、自らへりくだる際にも使います。ここからわかるように、「者」という漢字は卑下や軽視の意味を持ちます。

達人の意味

達人とは

達人とは、深く物事の道理に通じた人を意味しています。

達人の使い方

達人を使った分かりやすい例としては、「最優秀賞を受賞した書の達人に弟子入りする」「一時間で十品作り上げる料理の達人」「昔の話とはいえコマの達人の腕は衰えていなかった」「各界の達人の意見を聞いて一冊の本を作り上げる」などがあります。

達者のようにいくつか意味があるわけではなく、名詞以外の使い方はしません。

達人を使ったことわざとして「達人は大観す」(読み方:たつじんはたいかんす)、「達人は達人を知る」などがあります。

「達人は大観す」の意味

前者の「達人は大観す」とは、達人は物事の一部ではなく全体を見極めるため、判断を誤らないという意味を持ちます。

「達人は達人を知る」の意味

一方後者の「達人は達人を知る」とは、優れた能力を持つ人の行動を理解し、その真価を認めることができるのは、同じくらい優れた才能を持つ人間のみだという意味を持ちます。「名将は名将を知る」や「名人は名人を知る」も同じ意味です。

達人の類語

達人の類語・類義語としては、競争相手を負かすことのできる戦闘者を意味する「覇者」(読み方:はしゃ)、他人の仕事を指図する人を意味する「師匠」などがあります。

「達人」の「人」の字を使った別の言葉としては、成人した女性、一人前の女性を意味する「婦人」、世の中の人を意味する「世人」(読み方:せじん)、性格や言行が普通とは異なっている人を意味する「奇人」などがあります。

「人」という漢字は、指示語や様子を説明する言葉がつくことで、他の一般の人から区別された人間を表します。

達者の例文

1.このオーケストラには、腕達者と評価されるメンバーが何人かいる。
2.山登りが趣味である祖父は足腰が達者であり、今でも毎週末は体を動かしている。
3.実家の犬は、様々なパフォーマンスをこなすほど芸達者である。
4.部下は口ばかりが達者だと思っていたが、仕事はきちんとこなしているようだった。
5.彼は普段どこか抜けているのに、金銭の話となると達者である。
6.祖父は晩年病気から寝たきりのような生活になったが、口だけは達者なままだった。
7.家出同然に故郷を離れ一度も帰らない私に、母はそれでも毎年「達者で暮らしなさいよ」と手紙を送ってくれる。
8.友人は子供の頃にマドリードに住んでいたことがあるので、今でもスペイン語を達者に話します。
9.同僚は口は達者でも、仕事がまったくできないので、周りからも呆れられています。
10.良くも悪くも口が達者なおかげで生きていけているが、口は災いの元というので、そこだけは気をつけたいと思っている。

この言葉がよく使われる場面としては、巧みであるさま、丈夫であるさま、抜け目のないしたたかなさまを表現したい時などが挙げられます。

例文1の「腕達者」とは、腕力が優れているだけではなく技能が優れている場合にも使われます。

ただし、例文4や例文5のようにややマイナスイメージを表現する場合に使用することもあるため、間違いではないですが、会話の中で相手を称賛する場合に「達者」という言葉を使う際には気を付けましょう。

達人の例文

1.洗濯の達人にかかれば、しょうゆ、油、どんなシミでも落としてしまうだろう。
2.株の達人は、モニターを二台、三台用意して、いつでも対応できるようにしている。
3.達人と呼ばれる人を目の当たりにして、自分もその能力を磨き上げていきたいを感じた。
4.素材を余すことなく使用し、無駄のない生活をしている節約達人の特番がやっている。
5.ただ綺麗に見せるだけでなく、芸能人に似せるためのメイク方法はもはや達人芸である。
6.ハンバーグに口うるさい主人の為に試行錯誤しはや30年。私の作るハンバーグはもう達人の域だ。
7.私の実力は素人に毛が生えた程度のもので、まだまだ達人の域には達していませんよ。
8.男は剣術の達人で、周りからも一目置かれていたので、用心棒として雇われていた。
9.彼は今でこそ書道の達人と言われているが、毎日練習を続けてきた努力の人でもある。
10.どんな扱いにくいものでも、達人の手に掛かれば、暴れ馬も名馬に変わるというものだよ。

この言葉がよく使われる場面としては、芸や学問を極めた人を表現したい時などが挙げられます。

達人とつく商品や団体名は多く存在しているため、日常生活でも目にする機会はあると思います。

達者と達人どちらを使うか迷った場合は、熟達している様子だけでなく、健康な様子や抜け目ない様子を表す時に「達者」を、技芸に優れていたりその分野で評判が高い人を表す時に「達人」を使うと覚えておけば間違いありません。

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