似た意味を持つ「俄然」(読み方:がぜん)と「断然」(読み方:だんぜん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「俄然」と「断然」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
俄然と断然の違い
俄然と断然の意味の違い
俄然と断然の違いを分かりやすく言うと、俄然とは突然なさまを表し、断然とは強調するさまを表すという違いです。
俄然と断然の使い方の違い
一つ目の俄然を使った分かりやすい例としては、「賞金が出ると聞いて、俄然やる気がでた」「俄然混沌としてきた首位争いに注目する」「彼女が来ると聞いて俄然楽しみになってきた」などがあります。
二つ目の断然を使った分かりやすい例としては、「あの安物に比べたら、断然こちらが上質だろう」「お肉は断然お得なジャンボパックを買う」「マスクの日は断然強めのアイメイクだ」などがあります。
俄然と断然という言葉は混同して使われる傾向がありますが、意味は異なるので注意が必要です。
どちらも様子や状態を表す「然」という漢字があり、似たような表現をする言葉なのですが、俄然は突然ある状態が生じるさまを意味し、断然とは意思や態度を明らかにし強調するさまを意味します。
「俄然やる気がでる」と「断然やる気がでる」の違い
上記の例の「俄然やる気がでる」とは、急にやる気がでることを意味しています。これが「断然やる気がでる」となると、やる気がでることを強調する表現となり、とてもやる気がでるという意味になります。
「断然強めのアイメイクだ」と「俄然強めのアイメイクだ」の違い
また、上記の「断然強めのアイメイクだ」とは、強めのアイメイクを強調する表現であり、絶対強めのアイメイクが良いことを意味しています。これが「俄然強めのアイメイクだ」となると、急に強めのアイメイクになったことを意味します。
俄然は強調表現ではない
俄然は、断然と同じ強調表現のように使われることがありますが、誤った使い方になります。俄然は急に状況が変わるさまを意味する言葉であり、強調表現ではないことを覚えておきましょう。
俄然と断然の英語表記の違い
俄然を英語にすると「suddenly」「all of a sudden」となり、例えば上記の「俄然やる気がでる」を英語にすると「suddenly feel motivated」となります。
一方、断然を英語にすると「absolutely」「decidedly」「far and away」となり、例えば上記の「断然こちらが上質だろう」を英語にすると「be decidedly superior in quality」となります。
俄然の意味
俄然とは
俄然とは、突然ある状態が生じるさま、にわかにを意味しています。
俄然の使い方
俄然を使った分かりやすい例としては、「ご褒美があると俄然やる気が出るものだ」「彼が助っ人に入ってから俄然強気なプレーになった」「その知らせを聞いて、俄然として驚き醒めた」などがあります。
その他にも、「ドラマをみてラグビーに俄然興味が湧いてきた」「みんなの声援で俄然勇気がわいてきた」「連続ホームランで俄然有利な試合展開になった」「父はお祭りと聞くと俄然張り切りだす」などがあります。
俄然の語源
俄然の「俄」は訓読みで「にわか」と読み、「たちまち、急に、突然」を意味し、俄然という言葉は、急に状況が変わるさまを意味します。似た表現をする断然と混同して使われることがありますが、断然のように強く主張するような意味はありません。
俄然を用いた有名な一文に、「俄然として夢から覚むれば、すなわち遽遽然として周なり」があります。これは、「突然に夢から覚めると、たちまちに周(自分)に戻る」という意味の文で、俄然と遽遽然は、突然ある状態が生じるさまを表しています。
俄然の対義語
俄然の対義語・反対語としては、もとのままであるさまを意味する「依然」、変化に乏しく面白味のないことを意味する「平板」などがあります。
俄然の類語
俄然の類語・類義語としては、だしぬけであるさまを意味する「突然」、にわかであるさまを意味する「忽然」、突然であることを意味する「不意」などがあります。
俄然の俄の字を使った別の言葉としては、急に降りだしてすぐに止んでしまう雨をいみする「俄雨」(読み方:にわかあめ)、即興的に演じるこっけいな踊りを意味する「俄踊」(読み方:にわかおどり)などがあります。
断然の意味
断然とは
断然とは、きっぱりと心を決めるさまを意味しています。
他にも、程度が並外れているさまや、打消しの語を伴い確信をもって強く否定する気持ちの意味もあります。
断然の使い方
「白と黒なら私は断然白を選ぶ」「リモート勤務には田舎暮らしが断然オススメ」「その法案には断然反対だ」「私は断然布マスク派だ」などの文中で使われている断然は、「きっぱりと心を決めるさま」の意味で使われています。
一方、「パクチーで断然美味しくなるよ」「近頃はテイクアウトが断然多い」などの文中で使われている断然は、「程度が並外れているさま」の意味で使われています。「検査数が断然足りない」「断然あり得ない」などの文中で使われている断然は、「強く否定する気持ち」の意味で使われています。
断然の語源
断然という言葉は、上記の例のように三つの意味を持ちますが、どれも文の調子を強める強調表現となります。断然の「断」は、「思い切って、きっぱり決める」という意味があり、断然という言葉は、強い意志や態度を表します。
「断トツ」は「断然トップ」を縮めた言葉
断然という言葉をを用いた日本語には、「断トツ」があり、これは「断然トップ」を縮めた言葉です。2位以下とは大きな差をつけて首位にある状態を表します。断トツは一般的な表現ですが「断然トップ」の略であることは知られておらず、「断トツトップ」と誤った表現をされることがあります。
断然の対義語
断然の対義語・反対語としては、態度や物事がはっきりしないことを意味する「曖昧」、ぼんやりしてはっきりしないさまを意味する「漠然」などがあります。
断然の類語
断然の類語・類義語としては、態度などがきっぱりとしているさまを意味する「断固」、意志が強く物事に動じないさまを意味する「毅然」などがあります。
断然の断の字を使った別の言葉としては、反対などを押し切って強い態度で実行することを意味する「断行」、決断力のあることを意味する「果断」などがあります。
俄然の例文
この言葉がよく使われる場面としては、突然ある状態が生じるさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4のように、、俄然という言葉は、何かしらのきっかけがあって急に気持ちが変化したり、行動に変化が起こることを表します。例文5にある「俄然性」という言葉はありません。正しくは「蓋然性」(読み方:がいぜんせい)です。
断然の例文
この言葉がよく使われる場面としては、きっぱりと心を決めるさま、程度が並外れているさま、強く否定する気持ちを表現したい時などが挙げられます。
例文1の断然は、自分の意思をきっぱりと明らかにするさまを意味します。例文2から例文4で使われている断然は、程度が並外れているさまを表し、「ずばぬけて」「とても」などの言葉に置き換えられます。例文5の断然は、確信をもって強く否定する気持ちを意味します。
俄然と断然いう言葉は、同じ意味であると思われがちなのですが、それぞれの意味は異なります。俄然は突然ある状態が生じるさまを意味し、断然は意思や態度を明らかにし強調するさまを意味します。俄然は、断然のような強調表現ではないことを覚えておきましょう。