似た意味を持つ「範疇」(読み方:はんちゅう)と「範囲」(読み方:はんい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「範疇」と「範囲」という言葉は、どちらも特定の領域を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
範疇と範囲の違い
範疇と範囲の意味の違い
範疇と範囲の違いを分かりやすく言うと、範疇とは同じ性質の領域を意味し、範囲とは性質にこだわらない特定の領域を意味するという違いです。
範疇と範囲の使い方の違い
一つ目の範疇を使った分かりやすい例としては、「死後の世界は観念的な範疇である」「理解の範疇を超える」「常識の範疇から外れている」「自分の想像の範疇にない発想だ」「これは契約の範疇外ではないか」などがあります。
二つ目の範囲を使った分かりやすい例としては、「大学生になり活動範囲が広がった」「テスト範囲が公表された」「明日は広い範囲で大雨の恐れがある」「範囲を指定してスクリーンショットを撮る」などがあります。
範疇と範囲という言葉は、どちらも特定の領域を意味する、日常生活やビジネスシーンで馴染みのある言葉です。似た表現をする言葉ですが、意味や使い方は異なるので注意が必要です。範疇は同じ性質の領域を意味し、範囲は性質にこだわらない特定の領域を意味します。
「範」の意味
二つの言葉に共通する「範」という漢字は、区切られた枠を表します。「疇」は分類やたぐいを表し、範疇は同じような性質のものが含まれる枠を意味します。「囲」はまわりを表し、範囲はある一定の限られた広がりや枠を意味します。つまり、範疇は範囲に含まれ、同質のものが含まれる範囲なのです。
範疇と範囲の英語表記の違い
範疇を英語にすると「category」「class」「family」となり、例えば上記の「観念的な範疇」を英語にすると「notional category」となります。一方、範囲を英語にすると「area」「scope」「range」となり、例えば上記の「活動範囲」を英語にすると「activity scope」となります。
範疇の意味
範疇とは
範疇とは、同じような性質のものが含まれる範囲を意味しています。
表現方法は「範疇に入る」「範疇を超える」「範疇に収まる」
「範疇に入る」「範疇を超える」「範疇に収まる」「仕事の範疇」「責任の範疇」「理解の範疇」などが、範疇を使った一般的な表現方法です。
範疇の使い方
範疇を使った分かりやすい例としては、「理解できる範疇にない事件だった」「その事象は科学の範疇ではない」「その業務は私の仕事の範疇外だ」「彼女のパン作りは趣味の範疇を超えている」などがあります。
その他にも、「ナレーションの範疇の一つに朗読がある」「新生児が示す音韻の範疇的知覚」「範疇的態度の障害による健忘失語の症状」「アリストテレスは範疇的普遍を唱えた」「彼のDIYは趣味の範疇に収まらない」などがあります。
範疇の由来
範疇という言葉の由来は、中国古代の書物に記されてる「洪範九疇」です。これは政治道徳の九原則を表し、そのなかの「範」と「疇」が組み合わされて「範疇」という言葉ができました。政治道徳という性質の枠からできた言葉ですが、転じて、同質のものが含まれる範囲を意味する言葉になりました。
範疇は、哲学用語の一つになっています。あらゆる事象をそれ以上に分類できないところで包括する一般的な基本概念として、範疇という言葉が使われています。アリストテレスの「範疇論」では、様々な概念や言葉の分類について述べられています。
範疇の類語
範疇の類語・類義語としては、事物を種類や性質などに従って分けることを意味する「分類」、種類や種目によって区別することを意味する「種別」、 種類によって分けたグループを意味する「種目」などがあります。
範疇の疇の字を使った別の言葉としては、田畑や耕作地または田畑のあぜを意味する「田疇」(読み方:でんちゅう)、昔または昨日を意味する「疇昔」(読み方:ちゅうせき)などがあります。
範囲の意味
範囲とは
範囲とは、ある一定の限られた広がり、ある区域を意味しています。
表現方法は「範囲に収まる」「範囲が広がる」「範囲にとどまる」
「範囲に収まる」「範囲が広がる」「範囲にとどまる」などが、範囲を使った一般的な言い回しです。
範囲の使い方
範囲を使った分かりやすい例としては、「配達エリアの範囲が広がった」「人それぞれ結婚相手との年齢差の許容範囲は違う」「それぐらいは誤差の範囲だろう」「予算の範囲に収まるようにしてください」などがあります。
その他にも、「ツイートの公開範囲を限定する」「外出自粛要請の対象範囲が変わる」「範囲の経済性を事業展開のヒントにする」「エクセルで範囲指定して印刷する」「複数の範囲に関数をコピーする」などがあります。
許容範囲の意味
範囲という言葉は、ある一定の限られた広がりを意味し、目に見える区切りや区域から、目に見えない概念の特定の領域まで表すことができる言葉です。上記の例の「配達エリアの範囲」とは配達エリアの限られた区域を意味し、「許容範囲」とは許すことのできる程度や水準を意味します。
守備範囲の意味
範囲を用いた日本語には「守備範囲」があり、スポーツにおいて守ることができる範囲や、仕事において自分ができることの範囲を意味します。また、趣味や嗜好において、好みとする対象の広さを表すこともあり、「彼女は、男の好みの守備範囲が広い」のように使うこともできます。
範囲の類語
範囲の類語・類義語としては、ある力や作用などが及ぶ範囲を意味する「領域」、そこまでと限られている程度を意味する「限度」、これより外には出られないというぎりぎりの範囲を意味する「限界」などがあります。
範囲の囲の字を使った別の言葉としては、周りを取り囲むことを意味する「包囲」、もののまわりや周辺を意味する「周囲」、まわりを取り囲むことを意味する「囲繞」(読み方:いじょう)などがあります。
範疇の例文
この言葉がよく使われる場面としては、同じような性質のものが含まれる範囲を表現したい時などが挙げられます。
例文2と例文3にある「範疇外」とは、要素や概念の枠組みから抜け出ているさまを表します。例文4の「誤差の範疇内」は誤りです。正しくは「誤差の範囲内」であり、真の値と測定値の差の範囲を意味しますが、通常「この程度の違いは許されるべきだ」という意味で使われています。
例文5の「範疇を越える」は誤り、正しくは「範疇を超える」です。基準や限度を上回ることを表す時には「超える」を使います。
範囲の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある一定の限られた広がりやある区域を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「範囲の経済」とは、複数の製品やサービスを別の企業が生産よりも、同一の企業がまとめて生産した方が費用(コスト)を節減できることを意味します。例文2の「扶養範囲」とは、扶養する配偶者がいることによる税制優遇の枠を意味します。配偶者の収入によって判断されます。
範疇と範囲という言葉は、どちらも特定の領域を表しますが、意味や使い方には違いがあります。どちらの言葉を使うか迷った場合は、同じ性質の領域を表現したい時は「範疇」を、性質に関係がなく特定の領域を表現したい時は「範囲」を使うようにしましょう。