似た意味を持つ「大衆」(読み方:たいしゅう)と「公衆」(読み方:こうしゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「大衆」と「公衆」という言葉は、多くの人々の集まりという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
大衆と公衆の違い
大衆と公衆の意味の違い
大衆と公衆の違いを分かりやすく言うと、大衆は受動的な人々の集まりを表現する時に使い、公衆は能動的な人々の集まりを表現する時に使うという違いです。
大衆と公衆の使い方の違い
一つ目の大衆を使った分かりやすい例としては、「大衆社会が成立したことによって政治的無関心が大きな問題の一つとなった」「通信環境の大衆化によって遠方の人とすぐに連絡を取ることができる」などがあります。
二つ目の公衆を使った分かりやすい例としては、「携帯電話を忘れたため公衆電話から掛けるしか手段がなかった」「公衆の前では恥をかきたくないと誰もが思うだろう」「公衆に向けた演説を眺めている」などがあります。
大衆と公衆の使い分け方
大衆と公衆のどちらの言葉も、多くの人々の集合体を指す言葉ですが、内包される意味が若干異なります。
大衆は、社会学においては無関心や匿名性などを特徴として持つ集合的な存在と考えられています。有権者である大衆というプラスイメージだけでなく、同調性が高いゆえにメディアに扇動される無責任な集団というマイナスイメージを持つこともあります。
一方の公衆は、同じ一つの物事に関心を持つ不特定多数の人たちを指します。そのため、自身の利益に関する意見を出して社会的に解決できるようにする人々と社会学的に考えられています。
つまり、大衆は情報や商品を与えられる受動的な集合的存在を指しますが、公衆は社会を動かす歯車として能動的に振る舞う集合的存在を指すという違いがあります。
大衆と公衆の英語表記の違い
大衆を英語にすると「mass」となり、例えば上記の「大衆社会」を英語にすると「mass society」となります。一方、公衆を英語にすると「public」となり、例えば上記の「公衆電話」を英語にすると「a public telephone」となります。
大衆の意味
大衆とは
大衆とは、不特定多数の人々で構成された集合体を意味しています。
表現方法は「大衆受け」「大衆居酒屋」「一般大衆」
「大衆受け」「大衆居酒屋」「一般大衆」などが、大衆を使った一般的な言い回しです。
大衆の使い方
大衆を使った分かりやすい例としては、「ライトノベルは大衆文学とも純文学とも捉えられる作品もある」「大衆受けを狙う作品と媚びを売るような作品は大きく異なる」「交通手段の大衆化が急速に進んだことで私たちの生活が豊かになる」
その他にも、「各国の大衆的な料理を教わったため家で作ってみたいと感じた」「大衆紙に話題の俳優に関する記事が載っていた」「大衆酒場であろうと友人と酒を飲む時間は好きだ」「大衆向けの音楽は老若男女問わず親しまれている」などがあります。
大衆の由来
大衆は「たいしゅう」という読み方をしますが、仏教用語の「だいしゅ」が由来となった言葉です。仏教用語として使われる場合には、多くの仏僧の集まりを指します。
「大衆文学」の意味
上記例文の「大衆文学」とは、芸術ではなく娯楽性を重視した小説の総称で、純文学と対になる作品とも言われているジャンルです。大衆小説とも呼ばれ、いわゆる娯楽小説などと同じ意味で使われています。
「大衆紙」の意味
また、上記例文の「大衆紙」とは、社会で起きた事件やゴシップ記事、芸能やスポーツなどの娯楽的な話題を中心に構成されている、一般庶民を読者と想定した新聞で、「タブロイド」「タブロイド紙」とも呼ばれています。
大衆の対義語
大衆の対義語・反対語としては、社会や集団を構成する個々の人を意味する「個人」、社会や集団において指導的な役割を受け持つ層を意味する「エリート」、高い知識や教養を持つ人を意味する「知識人」があります。
大衆の類語
大衆の類語・類義語としては、群がり集まった人々を意味する「群衆」、世間一般の人々を意味する「庶民」、日常の暮らしを送っている一般の人々を意味する「世俗」、人が集まり日常生活を送っている社会を意味する「世間」などがあります。
公衆の意味
公衆とは
公衆とは、社会一般の人々を意味しています。
表現方法は「公衆の場」「公衆の面前」「公衆電話」
「公衆の場」「公衆の面前」「公衆電話」などが、公衆を使った一般的な言い回しです。
公衆の使い方
公衆を使った分かりやすい例としては、「公衆の面前で親に叱られたのは恥ずかしかった」「SNSなどを通じて広く公衆の関心を集めることができた」「公衆の間で評判となっている芸人をテレビを見ないせいで知らなかった」などがあります。
一方、「公衆食堂の歴史を知らなかった」「公衆に対して具体的な説明をしないと批判されるだろう」「公衆浴場でなら足を伸ばして入浴することができる」などの文中で使われている公衆は、「共通の物事に関心を持つ不特定多数の集団」の意味で使われています。
公衆は、メディアの発達によってつながりを持つ人々が該当しますが、近い距離で存在することを絶対としていないことが特徴です。そのため、冷静な判断をした上での行動ができ、理性的とされています。
また、法律でも公衆という言葉が使われていますが、特許法では不特定多数の人々を指し、著作権法では特定の人々を指しているなど、使われる場所によって意味合いが異なります。
「公衆食堂」の意味
上記例文の「公衆食堂」とは、特に生活に困っている庶民の食生活のために開設された公益の食堂で、大正時代に設置された東京市営の食堂に対してこの言葉が使われていました。後に、民間の食堂が増加したことによって「大衆食堂」の文化へと変化していきます。
公衆の類語
公衆の類語・類義語としては、広く全体に共通して認められて当たり前のことを意味する「一般」、国家や社会を構成している多くの人々を意味する「民衆」、多くの人を意味する「万人」、近代社会を構成する個人を意味する「市民」などがあります。
大衆の例文
この言葉がよく使われる場面としては、不特定多数の人々で構成された集合体などが挙げられます。
例文2の「一般大衆」とは、特別な地位や権力などを持たない一般の人々を指す言葉です。
また、例文3の「大衆化」とは、一般大衆の間で広く知られ親しまれるようなものになることを意味する言葉です。
公衆の例文
この言葉がよく使われる場面としては、社会一般の人々などが挙げられます。
例文1の「公衆浴場」はいわゆる銭湯のことで、公共浴場とも呼ばれています。
また、例文2の「公衆衛生」とは、集団の健康を害する問題を解決するために行われる衛生活動を指す言葉です。
大衆と公衆は、どちらも「多くの人々の集まり」を表します。どちらを使うか迷った場合は、受動的な人々の集まりを表す場合は「大衆」を、能動的な人々の集まりを表す場合は「公衆」を使うと覚えておけば間違いありません。