似た意味を持つ「処世術」(読み方:しょせいじゅつ)と「渡世術」(読み方:とせいじゅつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「処世術」と「渡世術」という言葉は、どちらも生きていく手段を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
処世術と渡世術の違い
処世術と渡世術の意味の違い
処世術と渡世術の違いを分かりやすく言うと、処世術とは巧みな世渡りの方法を意味し、渡世術とは生活するための方法を意味するという違いです。
処世術と渡世術の使い方の違い
一つ目の処世術を使った分かりやすい例としては、「彼は処世術に長けており出世が早かった」「妹は処世術に長けている」「働く女子には社内処世術が必要だ」「上司の器用な処世術に呆れる」などがあります。
二つ目の渡世術を使った分かりやすい例としては、「渡世術としてYouTuberを選んだ」「堅実な渡世術を身に付けたい」「砂漠での渡世術に興味がある」「エンタメ業界は渡世術に苦心惨憺している」などがあります。
処世術と渡世術の使い分け方
処世術と渡世術という言葉は、どちらもこの世で生きていく手段を意味する言葉です。似た表現をする言葉ですが、意味や使い方には違いがあるので注意が必要です。処世術は、社会生活をしてゆく上での巧みな世渡りの方法を意味します。一方の渡世術は、この世で生活していく方法を意味します。
処世術と渡世術を比べると、生活のための手段や方法を表す渡世術のほうが、現実的で具体的なニュアンスがあります。また、処世術という言葉は、使い方によっては「ごまをする」「ずる賢い」というマイナスイメージにもなる言葉ですが、渡世術はマイナスイメージになる言葉ではありません。
処世術と渡世術の英語表記の違い
処世術を英語にすると「worldly wisdom」「secret of success in life」となり、例えば上記の「処世術に長けている」を英語にすると「have worldly wisdom」となります。
一方、渡世術を英語にすると「a way of living」「a means of livelihood」となり、例えば上記の「渡世術として」を英語にすると「as a way of living」となります。
処世術の意味
処世術とは
処世術とは、巧みな世渡りの方法を意味しています。
表現方法は「処世術に長けた」「処世術に長けている」「処世術を身につける」
「処世術に長けた」「処世術に長けている」「処世術を身につける」などが、処世術を使った一般的な言い回しです。
処世術の使い方
処世術を使った分かりやすい例としては、「処世術に長ける人を見習いたい」「処世術を身に付ける方法が知りたい」「これぞ女性の処世術だろう」「処世術で不快なマウンティングをかわす」「処世術として嘘もアリだ」などがあります。
その他にも、「ショーペンハウアーの処世術箴言に感銘を受けた」「処世術を説いた本ばかり読んでいる」「秀吉は処世術に優れた戦国武将の一人だ」「職場の処世術にビジネスマナーは基本です」などがあります。
処世術の読み方
処世術は「しょせいじゅつ」と読みます。 「しょせじゅつ」「しょよじゅつ」ではありません。
処世術の語源
処世術という言葉の「処世」とは世間と交わってうまく生活していくことを意味し、「術」は目的を遂げるための手段や方法を意味します。したがって、処世術とは世間でうまく生活する方法や、巧みな世渡りの方法を意味する言葉です。
処世術を用いた名言に「至上の処世術は、妥協することなく適応することである」があります。これはドイツの哲学者ジンメルの言葉であり、社会や環境に対して譲歩することなく欲求をある程度満たしながら、自分の行動や思考を変えていくことがこの上もない世渡りの方法だと主張しています。
処世術の類語
処世術の類語・類義語としては、自分が有利になるような行動を意味する「立ち回り」、上手に世間を渡ることを意味する「遊泳術」、世の中の事情に通じたくみに世渡りのできる才能を意味する「世才」などがあります。
処世術の処の字を使った別の言葉としては、物事の出てきたところを意味する「出処」、きっぱりと決定し処理することを意味する「処断」、適切に処置することを意味する「善処」などがあります。
渡世術の意味
渡世術とは
渡世術とは、この世で生活していく方法を意味しています。
表現方法は「渡世術を身に付ける」「渡世術を考える」「渡世術が磨かれた」
「渡世術を身に付ける」「渡世術を考える」「渡世術が磨かれた」などが、渡世術を使った一般的な言い回しです。
渡世術の使い方
渡世術を使った分かりやすい例としては、「先が読めない時代の渡世術を身に付けたい」「下積み時代に渡世術が磨かれた」「ITを使った渡世術は無限にある」「海外生活3年目にして渡世術を身に付けた」などがあります。
その他にも、「インターネットを使った渡世術を考える」「スマホ1つでできる渡世術はないものか」「離婚後の渡世術が思いつかない」「渡世術としての懸賞生活だ」「好きなことを渡世術にできたらいいのに」などがあります。
渡世術の語源
渡世術の「渡世」とは、生活すること、生活していくための職業を意味します。渡世術という言葉は辞書に載っていない言葉ですが、一般に、生活していくための方法、どのように生計を立てるのかの意味で使われています。
渡世術の類語
渡世術の類語・類義語としては、生活していくことを意味する「世渡り」、世の中で生活していくことを意味する「世過ぎ」、暮らしを立てていくことを意味する「身過ぎ」などがあります。
渡世術の渡の字を使った別の言葉としては、遠く外国から渡ってくることを意味する「渡来」、天皇などがおでましになることなど意味する「渡御」、古いものから新しいものへ移り変わる途中を意味する「過渡」があります。
処世術の例文
この言葉がよく使われる場面としては、社会生活をしてゆく上で巧みな世渡りの方法を表現したい時などが挙げられます。
例文1にあるように、処世術が上手であること、処世術を巧みに使える人のことを「処世術に長けている」と表現します。使い方によっては、誰かに気に入られようとしてへつらうようなマイナスイメージもあります。
渡世術の例文
この言葉がよく使われる場面としては、この世で生活していく方法を表現したい時などが挙げられます。
例文5での渡世術は生活スタイルの意味で使われています。ミニマリストとは、不要な持ち物を極力減らして、自分に必要な最小限のものだけで暮らす人のことを指します。
処世術と渡世術という言葉は、どちらも生きていく手段を表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、巧みな世渡りの方法を表現したい時は「処世術」を、生活していく方法を表現したい時は「渡世術」を使うようにしましょう。