似た意味を持つ「敬愛」(読み方:けいあい)と「尊敬」(読み方:そんけい)と「敬意」(読み方:けいい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「敬愛」と「尊敬」と「敬意」という言葉は、尊び敬うことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
敬愛と尊敬と敬意の違い
敬愛と尊敬と敬意の意味の違い
敬愛と尊敬と敬意の違いを分かりやすく言うと、敬愛は親しみを持つことも表現する時に使い、尊敬は対象の価値を高いものとすることのみを表現する時に使い、敬意は尊敬する気持ちを表現する時に使うという違いです。
敬愛と尊敬と敬意の使い方の違い
敬愛という言葉は、「敬愛の意を込めて手紙を書く」「上司は敬愛されるような人だ」などの使い方で、尊敬し親しみの気持ちを持つことを意味します。
尊敬という言葉は、「恩師に尊敬の念を抱く」「いつまでもあなたの成績は尊敬する」などの使い方で、相手の価値を認めて大切にし、敬うことを意味します。尊敬を動詞の形にすることも出来れば、前者のように「尊敬の念」のような形にすることもできます。
敬意という言葉は、「敬意を持って相手に接する」「感謝と敬意を表する」などの使い方で、尊敬の気持ちを意味します。敬意という言葉だけで動詞を作ることはできないため、「持つ」「表す」のような他の動詞を伴います。
敬愛と尊敬と敬意の使い分け方
敬愛という言葉は相手を尊敬するだけでなく、相手に対して親しみを持つことも意味します。そのため、より距離感が近い順に並べると、敬愛>尊敬となります。
一方、敬意という言葉は敬愛や尊敬と違って動詞の形を取ることができず、「敬意を払う」のように他の動詞と共に使います。この場合、尊敬することを意味しますが、尊敬の気持ちを相手に態度などで示すという意味が付属します。
この意味の違いや使い方の違いが、敬愛、尊敬、敬意の明確な違いです。
敬愛の意味
敬愛とは
敬愛とは、尊敬し親しみの心を持つことを意味しています。
「敬愛追慕の情」の意味
敬愛を使った言葉として「敬愛追慕の情」があります。死者に対する名誉毀損が行われた際遺族に対しての名誉毀損が成立し、「故人に対する敬愛追慕の情」を侵害したとして不法行為になると定められていますが、亡くなった人を大切に思う感情を指します。
表現方法は「敬愛される」「敬愛の意を込めて」「敬愛の念」
敬愛を使った表現として、「敬愛される」「敬愛の意を込めて」「敬愛の念」「敬愛なる」「敬愛してやまない」などがあります。「敬愛なる」は、後ろに名詞を伴うことで呼びかけのように、手紙の冒頭などで稀に使われます。
敬愛の使い方
敬愛を使った分かりやすい例としては、「息子が将来誰からも敬愛される人になることを願うばかりだ」「敬愛の意を込めて上司のことを先生と呼んでいる」「いつも一緒にいるせいか旦那に対して敬愛の念が薄れてしまった」などがあります。
敬愛の対義語
敬愛の対義語・反対語としては、相手を軽んじ見下すことを意味する「侮辱」、見下しさげすむことを意味する「侮蔑」があります。
敬愛の類語
敬愛の類語・類義語としては、愛して懐かしみ慕うことを意味する「愛慕」、尊び信頼することを意味する「尊信」、聖人や偉人の徳を仰ぎ尊ぶことを意味する「讃仰」、崇高なものや偉大な人をおそれ敬うことを意味する「畏敬」などがあります。
尊敬の意味
尊敬とは
尊敬とは、対象の価値を認めて大切にすることを意味しています。
「尊敬語」の意味
尊敬を使った言葉として「尊敬語」があります。これは、動作をする人を高める気持ちを表す敬語表現です。敬語表現には他にも自分がへりくだる時に使う謙譲語と、聞き手に対して丁寧に述べる丁寧語があります。
表現方法は「尊敬する」「尊敬に値する」「尊敬の念を抱く」
尊敬を使った表現として、「尊敬する」「尊敬に値する」「尊敬の念を抱く」「尊敬の念に堪えません」「尊敬のまなざし」などがあります。最後の「尊敬のまなざし」は、尊敬の気持ちを持ちながら尊敬する相手を見ることを意味します。
尊敬の使い方
尊敬を使った分かりやすい例としては、「尊敬する上司がこの度退社されることとなった」「結果負けてしまったが最後まで諦めなかった姿勢は尊敬に値する」「自分の人生より子供を一番に考える父に対して尊敬の念を抱く」などがあります。
尊敬の対義語
尊敬の対義語・反対語としては、劣ったものなどとみなして馬鹿にすることを意味する「軽蔑」、期待やあこがれで空想し美化していたことが現実とは異なることを知ってがっかりすることを意味する「幻滅」があります。
尊敬の類語
尊敬の類語・類義語としては、敬い慕うことを意味する「敬慕」、素晴らしいものとして褒めたたえることを意味する「礼讃」、あがめ敬うことを意味する「崇敬」、ある人を心から尊敬し慕うことを意味する「傾倒」などがあります。
敬意の意味
敬意とは
敬意とは、尊敬する気持ちを意味しています。
「敬意逓減の法則」の意味
敬意を使った言葉として「敬意逓減の法則」があります。これは、時間の経過とともに敬意の高い言葉がだんだん度合いが薄まっていくことを言います。現在は敬語として扱われていませんが、「お前」や「貴様」がこの法則に該当します。
「お前」は「御前」と表記し、平安時代から江戸初期あたりまでは「高貴な人」の意味で、自分の身分より高い人に対して使っていましたが、徐々に人を揶揄う意味合いが加わり、次第に相手を見下した時にや目下の人に使う言葉になってしまいました。
表現方法は「敬意を抱く」「敬意を込めて」「敬意を払う」
敬意を使った表現として、「敬意を抱く」「敬意を込めて」「敬意を払う」「敬意を表する」「敬意を表す」「敬意を持つ」などがあります。「敬意を持つ」では気持ちを持つことのみを表しますが、「表する」「表す」「払う」を使うことで、態度や行動に表すことを意味します。
敬意の使い方
敬意を使った分かりやすい例としては、「私は他人に敬意を抱くという経験をしたことがない」「敬意を込めて先生と呼んでいる」「次の会食は失礼のないよう深く敬意を払う必用がある」などがあります。
敬意の対義語
敬意の対義語・反対語としては、礼儀に外れる様子を意味する「無礼」、他人に接する際礼儀に欠けることを意味する「失礼」があります。
敬意の類語
敬意の類語・類義語としては、つつしみ敬うことを意味する「恭敬」(読み方:くぎょう)、世間での評判や名声を意味する「名聞」、輝かしく誇れるような事柄を意味する「栄誉」、敬い慕うことを意味する「欽慕」などがあります。
敬愛の例文
この言葉がよく使われる場面としては、尊敬の気持ちや親しみの気持ちを抱くことを意味する時などが挙げられます。
例文2や例文3の敬愛は、尊敬という言葉に置き換えて使うことができますが、例文1は親しみを伴う感情であるため置き換えて使うことはできません。
尊敬の例文
この言葉がよく使われる場面としては、価値を認めて大切にすることや敬うことを意味する時などが挙げられます。
例文3の「尊敬の念に堪えない」とは、尊敬する気持ちを抑えるほどができないほどであることを意味する表現です。「尊敬の念を禁じ得ない」といった言い方をすることもできます。
敬意の例文
この言葉がよく使われる場面としては、尊敬する気持ちを意味する時などが挙げられます。
どの敬意も、「尊敬の念」「敬愛の情」などに置き換えることができますが、尊敬や敬愛のみをそのまま置き換えて使うことはできません。
敬愛と尊敬と敬意どれを使うか迷った場合は、敬うことと親しみを持つことを表す場合は「敬愛」を、敬うことのみを表す場合は「尊敬」を、尊敬する気持ちを表す場合は「敬意」を使うと覚えておけば間違いありません。