似た意味を持つ「感動」(読み方:かんどう)と「感銘」(読み方:かんめい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分けを参考にしてみてください。
「感動」と「感銘」という言葉は、どちらも物事のすばらしさに心動かされることを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
感動と感銘の違い
感動と感銘の意味の違い
感動と感銘の違いを分かりやすく言うと、感動というのは、心が激しく動かされることを意味していて、感銘というのは、感動が記憶に残っている状態や、ある物事が深く心に刻まれることを意味するという違いです。
感動と感銘の使い分け方
感動というのは、感情が動くということで、心が激しく動かされることを意味しています。ふつう、何かある物事が優れていたり、立派だったりすることによって心を動かされることです。
感情というのは常に変化しますから、感動は一定の時間が経つと落ち着きます。また、例えば感動した映画でも何度も見ると慣れてしまうように、以前抱いたのと同じ感動をもう一度味わうことは、なかなかに難しいことです。感動は瞬間的、一回的なものです。
次に感銘というのは、感動が記憶に残っている状態や、ある物事が深く心に刻まれることを意味しています。
感銘の銘というのは、例えば刀に刀鍛冶の名前を刻んだりするように、物品に彫り込まれた文字を意味します。銘というのはただの文字ではなく、功績をたたえる意図がある場合が多いです。
さらに、「銘を打つ」という言葉からイメージできるように、銘は外側から打ち付けられます。そして文字はふつう劣化しやすい紙に書かれますが、銘は刀剣や石碑、器物など経年劣化に強いものに打たれる文字です。
銘という字の持つこうした意味と特徴から、感銘というのは、物事の素晴らしさに心を揺さぶられ、深く心に刻むという意味であることが分かります。そして、そうして刻まれたものは長く心に残ります。感銘は感動と違って、持続的なものです。
このように、感動というのは、ある物事に瞬間的に心を揺さぶられることで、感銘というのは、過去に感動したものが自分の心の中に残っていることと考えると、感動と感銘の違いが分かりやすくなります。
感動の意味
感動とは
感動とは、ある物事に心を強く動かされることを意味しています。映画を見たり、本を読んだりして感動する経験をした人は多いと思いますが、こうした経験から分かるように、感動は当の体験と同時に生じる、それを素晴らしいと感じる感情です。
感動の使い方
何かを見た時に襲われる感情には、不快感や痛快感、愉快感などもありますが、それらはふつう感動とは違います。しみじみした感じや、雷に打たれたような感じのことを感動と考えると分かりやすいです。
感動は感情の動きです。感情は常に変化するので、記憶に残ることはありますが、感動そのものが生じているのは、僅かな間だけです。また、映画を見返したり、本を読み返したりしても、新たな感動はあるかもしれませんが、以前と同じ感動はふつう起こりません。
感動というのは、瞬間的、一回的なものだということを覚えておきましょう。
表現方法は「感動する」「感動させる」「感動した」
「感動する」「感動させる」「感動した」などが、感動を使った一般的な言い回しです。
感動の類語
感動の類語・類義語としては、感動して気持ちが高ぶることを意味する「感激」、感動してしみじみとした気分になることを意味する「感慨」、立派な行いに対して心を動かされることを意味する「感心」「感服」などがあります。
感動の感の字を使った別の言葉としては、外界の刺激を感じる働き、それが引き起こす意識を意味する「感覚」、ありがたいと思う気持ち、またそれを表すことを意味する「感謝」、感心して声に出してほめることを意味する「感嘆」などがあります。
感動の動の字を使った言葉としては、強く心動かされること、また何かを行おうとする欲求を意味する「衝動」、気持ちや物事が震え動くことを意味する「鼓動」、驚き平静を失うことを意味する「動転」などがあります。
感銘の意味
感銘とは
感銘とは、過去の感動が記憶に残っていること、感動した物事を心に刻み付けていること、多くの場合、賞賛や尊敬の念を伴って記憶していることを意味しています。
感銘の銘という字は、刻まれた文字や文章という意味です。ただし、単なる文字や文章ではありません。例えば、ある場所に石碑があるとします。石碑に記された、過去にその地で何があったかを伝える文字や文章のことを、銘といいます。
このように、銘というのは、主に功績をたたえるために、経年劣化に強い石や鉄製品などに打ち込まれる文字のことです。
また、人生の指針とする言葉を「座右の銘」と言うように、時と場所に左右されない格言のような言葉を意味することもあります。この場合に見られるように、銘という言葉には、それを尊重する自分が影響を受けるという意味合いもあります。
銘という言葉の特徴は、こうした賞賛の念と持続性です。このことから、感銘とは、ある物事に継続的に抱き続ける賞賛の感情であることが分かります。尊重が高じて、その後の人生に影響したという意味合いを込めて使われる場合もあります。
感動の体験を心に留め、それが感銘に徐々に移行する場合も多いですが、その後の人生に影響を与えるという点を考えると、「情景に感銘を受ける」というのは、詩人や画家などの例外を除くと、考え難いものです。
表現方法は「感銘を覚える」「感銘を受ける」「感銘を受けたこと」
「感銘を覚える」「感銘を受ける」「感銘を受けたこと」などが、感銘を使った一般的な言い回しです。
感銘の使い方
感銘を使った分かりやすい例としては、「息子の昆虫に対する情熱に感銘を覚えた」「好きな人の言葉であればどんな言葉でも感銘を受ける」「最近感銘を受けたことを聞かせてください」などがあります。
感銘の類語
感銘の類語・類義語としては、物事が心に与える感じのことを意味する「印象」、ある物事が別の物事に何らかの作用を及ぼすこと、またその結果を意味する「影響」、影響を受けて行動や思考が変わることを意味する「感化」などがあります。
感銘の銘の字を使った言葉としては、強く心に刻んで忘れないことを意味する「銘肝」、石碑や金物などに刻まれた文字や文章を意味する「銘文」、商品名や商標、有価証券などの取引の対象となるものを意味する「銘柄」などがあります。
感動の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある物事に際して、それに心を動かされることを表現したい時などが挙げられます。感動は感情の一種です。ある物事を体験することと同時に起こるある種の感情のことが感情です。感情には、リアルタイム性があります。
体験と同時に起こる激しい感情である反面、感動は瞬間的であるが故に持続しません。感動という言葉をそうした特徴を踏まえて使えるようになると、表現の奥行が広がります。また例文2や5の「感動しない」とは何なのかを考えてみるのもいいでしょう。
感銘の例文
この言葉がよく使われる場面としては、その後の自分の行動や考え方に影響を与えた過去の感動や、ある物事に対して受けた尊敬の念を表現したい時などが挙げられます。
感銘には感動が伴うことが多いですが、感動だけでは感銘になりません。感動の体験を見つめ返し、感動を受けた物事を自分から捉え返すという、ある種の冷静な態度が、感銘にはあります。感銘と感動は意識の状態でも違いがあることを覚えておくようにしましょう。
また、社交辞令的ですが、例文5のような表現も覚えておくと、いざという時に役立ちます。