似た意味を持つ「懸案」(読み方:けんあん)と「懸念」(読み方:けねん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「懸案」と「懸念」という言葉は、どちらも気がかりな事柄を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
懸案と懸念の違い
懸案と懸念の意味の違い
懸案と懸念の違いを分かりやすく言うと、懸案とは過去から続く不安を表し、懸念とは未来に続く不安を表すという違いです。
懸案と懸念の使い方の違い
一つ目の懸案を使った分かりやすい例としては、「長い間の懸案事項がやっと解決した」「感染症拡大で修学旅行の実施が懸案となる」「外交官同士が両国関係の懸案を議論した」「懸案解決に向けて協力することで合意した」などがあります。
二つ目の懸念を使った分かりやすい例としては、「この契約で懸念されることを洗い出そう」「食の安全に懸念を抱く」「自然災害の増加を懸念する人が増えている」「貿易摩擦による景気下押しを懸念する」などがあります。
懸案と懸念の使い分け方
懸案と懸念という言葉は、どちらも日常生活よりもビジネスシーンにおいて使われ、気がかりなことや心配事を表しますが、厳密な意味は異なります。懸案とは以前から問題とされながら結論が出ていない案件を意味し、懸念とは気にかかって不安に思うことを意味します。
「懸案事項」と「懸念事項」の違い
上記の例文にある「懸案事項」とは、以前から問題になっている未解決の事柄を意味し、過去から続く不安の意味合いを持ちます。これが「懸念事項」となると、不安に思う事柄や気がかりな事柄を意味し、これから先に起こるかもしれない未来の不安の意味合いを持ちます。
懸案と懸念の英語表記の違い
懸案を英語にすると「pending issue」「unresolved problem」となり、例えば上記の「長い間の懸案」を英語にすると「the long‐pending issue」となります。
一方、懸念を英語にすると「anxiety」「apprehension」「concern」となり、例えば上記の「懸念されること」を英語にすると「a matter of concern」となります。
懸案の意味
懸案とは
懸案とは、前から問題になっていながら、まだ解決されていない事柄を意味しています。
懸案の読み方
懸案は「けんあん」と読みます。懸は音読みで「けん」であり、慣用読みで「け」とも読みますが、懸案を「けあん」と読むのは間違いになりますので、注意して下さい。
表現方法は「懸案となっている」「懸案事項一覧」「長年の懸案」
「懸案となっている」「懸案事項一覧」「長年の懸案」などが、懸案を使った一般的な言い回しです。
懸案の使い方
懸案を使った分かりやすい例としては、「10年来の懸案事項である倉庫の片付けをしました」「計画を進めるなかで懸案が生じる」「諸懸案を包括的に解決する」「産業の懸案課題を洗い出す」などがあります。
その他にも、「年来の懸案事項がようやく解消されました」「物件の懸案点について整理する」「長年の懸案であった移住を決行した」「懸案を抱えながら関係改善を目指す」「懸案を管理するツールを導入する」などがあります。
懸案という言葉の「懸」とは、決着していないという意があり、懸案とは、以前から問題とされながら結論が出ていない案件を意味します。また、予定されていながら、いまだに解決や実現されていない事柄も表します。
懸案の対義語
懸案の対義語・反対語としては、物事がはっきりと決まることを意味する「決定」、はっきりと定まることを意味する「確定」、すでに決まっていることを意味する「既定」などがあります。
懸案の類語
懸案の類語・類義語としては、そのまま保ちとどめておくことを意味する「保留」、問題を一時的に未処理や未解決のままにしておくことを意味する「棚上げ」、まだ決定しないことを意味する「未決」などがあります。
懸念の意味
懸念とは
懸念とは、気にかかって不安に思うことを意味しています。
その他にも、「執着すること」、仏教用語で「一つのことに心を集中させること」の意味も持っています。
懸念の読み方
懸念は「けねん」と読みます。「けんにょ」や「けんね」という読み方もありますが、この場合は気がかりや心配を意味し、執着することや心を集中させることの意味はありません。
表現方法は「懸念される」「懸念が残る」「懸念が高まる」
「懸念される」「懸念が残る」「懸念が高まる」「懸念が大きい」「懸念がある」などが、懸念を使った一般的な言い回しです。
懸念の使い方
「経済の先行きを懸念する」「品質低下の懸念を抱く」「システム導入後に予想される懸念点は何か」「感染症拡大の懸念が払拭されない」などの文中で使われている懸念は、「気にかかって不安に思うこと」の意味で使われています。
一方、「懸念により大事なことが疎かになる」「故郷への強い懸念がある」などの文中で使われている懸念は「執着すること」の意味で、「ひたすらに懸念する」「懸念して経を唱える」などの文中で使われている懸念は、「一つのことに心を集中させること」の意味で使われています。
懸念という言葉は、上記の例文のように複数の意味がありますが、一般的に気がかりに思うことや、心配することの意味で使われています。
懸念の由来
懸念は仏教用語が由来であり、集中する心や、執着することを意味しましたが、そのような気持ちの度が過ぎて、不安に思うことの意味で使われるようになりました。
「貸倒懸念債権」の意味
懸念という言葉を用いた日本語には「貸倒懸念債権」があります。経営破綻の状態ではないが、債務の弁済に重大な問題が生じている、または生じる可能性の高い債務者に対する債権を意味します。
懸念の対義語
懸念の対義語・反対語としては、気がかりなことが除かれ安心することを意味する「安堵」、気にかけないことや心配しないことを意味する「放念」などがあります。
懸念の類語
懸念の類語・類義語としては、良くないことが起こるかもしれないという心配を意味する「恐れ」、ある一つのことを深く思いつめる心を意味する「執念」、心配することや思いわずらうことを意味する「杞憂」、あやぶみ恐れることを意味する「危惧」などがあります。
懸案の例文
この言葉がよく使われる場面としては、前から問題になっていながら解決されていない事柄を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にあるように、懸念という言葉は「長年の」「永年の」「年来の」のような過去から継続している意味を持つ言葉を伴うことが多くあります。例文5にある「懸案事項一覧」とは、懸案事項を管理するために一覧にまとめたものです。
懸念の例文
この言葉がよく使われる場面としては、気がかりに思うこと、心配することを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「懸念が残る」とは、問題とされていたことが一応は片付いたが、未だに不安や不満が解消しきれない場合に使われる表現です。例文5にある「懸念材料」とは、安心できない原因となる物事を意味します。
懸案と懸念という言葉は、どちらも気がかりな事柄や心配事を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、前から問題になっていながら解決されていない事柄を表現したい時は「懸案」を、気にかかって不安に思うことを表現したい時は「懸念」を使うようにしましょう。